崎山蒼志インタビュー「今日がずっとつながっていくことへの反抗と希望」 | Numero TOKYO
Interview / Post

崎山蒼志インタビュー「今日がずっとつながっていくことへの反抗と希望」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.83は崎山蒼志にインタビュー。

Numero.jpのアートレーターmightとのコラボ連載「girl meets...」でもお馴染みのシンガーソングライター崎山蒼志。メジャーセカンドアルバム『Face To Time Case(フェイス・トゥ・タイム・ケース)』は半数近くが映画やドラマ、アニメのタイアップ曲という華やかさと、崎山らしい時空が歪むような不思議な違和感が共存する、とても自由でバリエーション豊かな作品。リスペクトする石崎ひゅーいとの初コラボ曲「告白」で、これまでになくストレートな歌と言葉を聴かせるなど進化を続ける19歳の崎山に、アルバムのこと、インスピレーションの源、影響を受けたカルチャーについて聞いた。

尊敬するアーティストやエンジニアと作り上げた新境地

──『Face To Time Case』はどんなアルバムになったと思いますか?

「既にリリースしている曲が、それぞれのタイアップ作品からインスピレーションを受けた楽曲になっていたので、統一感を持たせようというより、好きなことをやっていこうかなと最初に思いました。前のアルバムの『find fuse in youth(ファンド フューズ イン ユース)』も割と混沌とした感じだったんですけど、今回はより振り切ってやろうとは思いました。前から一緒に曲を作ってみたいと思っていた(石崎)ひゅーいさんと共作した『告白』はお互いにアイディアを出し合って作っていきました。僕は普段あまりストレートな言葉で書かないんですが、『二人で作るし、そういうことをやってみても面白いんじゃない?』っていう話が出てストレートに書いてみました。ひゅーいさんとだからこそできた曲だってすごく思います」

──特に中盤の「幽けき(かそけき)」「Pale Pink」「逆光」「水栓」の流れが振り切れていて面白かったです。

「『幽けき』からの流れはディズニーシーのタワー・オブ・テラーみたいに浮いて落ちる感じにしたかったんです。穏やかな曲も好きなんですけど、『Pale Pink』を作ったときはアンガーな音楽がすごく好きで。Death Grips(デス・グリップス)の曲とか聴いて、『なんであんなに1から10まで暗くてめっちゃ怒ってるんだろう』って不思議に思えてきて、それで逆にこっちの怒りが消えて『ありがとうございました』みたいな気持ちになったり(笑)。『Pale Pink』はIllicit Tsuboi(イリシットツボイ)さんにミックスしてもらったんですが、アーティストとしてもDJとしても好きですし、僕が好きなDos Monos(ドスモノス)さんの曲のミックスを手がけていることも多くて、エンジニアとしてもすごく好きなんです。それこそDos Monosさんのアルバム『Dos Siki 2nd Season』に参加したときのエンジニアがTsuboiさんで。自分の作品でもご一緒したいと思い、今回お声がけしました。お送りした音源には入って無い音が追加されて戻ってきて、もうリミックスなんじゃないかと思うくらい面白かったです。ひゅーいさんもそうですが、めちゃくちゃ尊敬している方々とこんなにご一緒して本当に良いのかな?って感じで制作を進めていけました」

過去・現在・未来が交錯する「タイムケース」を表現

──「通り雨、うつつのナラカ」は違和感がちりばめられたいびつなギターロックで、中盤のギターのアレンジも効いてますが、どんなイメージがあったんですか?

「発端は、ある映像作品の中の現実の地獄みたいな描写にインスピレーションを受けたことから始まって。嫌なことが連続で続いて、不甲斐なさやイライラが溜まっているときに通り雨にあって、傘を持ってなくて濡れちゃって、またイライラが増してたらすぐに晴れて、でもそれによってジリジリして気持ち悪くなって、またイライラして……。それで『この野郎!』×3みたいな気持ちになってるんだけど、でも実は晴れて光が差していて希望がある、みたいなイメージの曲ですね。1曲目の『舟を漕ぐ』もそうなんですけど、僕が打ち込みでなんとなく作ったデモを、ベーシストのマーティ・ホロベックさんとドラマーの守真人さんという、ライブでもお世話になっているおふたりに送って、バンド編成スタジオに入って作った曲です。デモに沿ってくれつつも、随所に違うアレンジも入れてくれて、それが本当に素晴らしくて、ほぼお二人にお任せでした」

──特に終盤の歌詞が、崎山さんが生きる上での根源的なことを歌っているように思えました。

「ああ、今日起きたことがずっとつながっていくっていうことに対して、良くも悪くも『そういうもんだろう』っていう気持ちがあるんです。そこへの反抗心的な気持ちで書いたというか。それは自分が音楽をやり始めたときのマインドに近いし、今もずっと続いてる。だからこの歌詞は源流に近い考え方かもしれないですね」

──ラストは弾き語りの表題曲「タイムケース」です。どんなイメージがあったんでしょう?

「僕は去年(2021年)上京してから、今まで全然関係なかった土地で暮らしてるんですけど、ラーメン屋とかに行くと、店主とお客さんのおじいちゃんおばあちゃんとかがその場所の話をずっとしてて、土地それぞれの歴史を感じるんです。歩いてても、『この場所には昔こういうことがありました』っていう表示があって、『ブラタモリ』を観てるみたいな気分になる。その土地それぞれの歴史があって、何かがなくなっても磁場としてずっと残ってる感じというか。タイムケースっていう言葉には、今までその土地に起きたことがすべてワッて浮き上がって対面するような意味合いがあって。未来も過去も現在も同時に起きているような場所のこと。その言葉がすごく気に入って、このタイトルの曲を書きました。それで、アルバムとしてパッケージする意味でも良い言葉かなと思って、アルバムタイトルにも入れたんです」

文学作品から絵本、アート、映画まで。
崎山蒼志の幅広いインスピレーション源

──では、今回のアルバムで特にインスピレーションとなったものというと?

「去年(2021年)芥川賞を受賞した『貝に続く場所にて』という小説は東日本大震災やドイツの学術都市がモチーフになってるんですけど、それこそ記憶と目の前にある“今”の区別がつかないような描き方をしてるんです。行方不明になった人が急に現れて普通に話をしたり。そういうことを土地の肖像みたいな言葉で表していて、その感覚は僕が考えたことにも似てるなと思いました。あと、俳優もやられてる舞踏家の田中泯さんが、『その場所と踊る』みたいなことをおっしゃっていたことにも影響を受けました。田中泯さんの『名付けようのない踊り』っていう映画も観たんですけど、もうすごすぎて……。本当に恐縮ながら僕もこういう音楽を作りたいなって思いました」

──そもそもご自身はどんなカルチャーから影響を受けていると思いますか?

「幼少期に母親が寝る前に絵本を読んでくれることが多くて、それが原体験になってます。1曲目の『船を漕ぐ』っていう曲は、自分の書く曲があまりしっくりきてないときに、音楽をやり始める前の原体験みたいな曲を書こうという気持ちで書いたんです。母親に読んでもらった絵本の中に『よるくま』っていう作品があって。夢と現実がわからない描写が出てくるんですけど、すごくインスピレーションを受けました。あと、内田百聞さんの小説の、夢なのか現実なのか、死んでるのか生きてるのかわからないみたいな世界観もすごく好きですね。日常とつながってる異空間の話とか。音楽だと、4歳の頃父親の車でよくかかっていたリンキン・パークや母親とテレビで観たthe GazettE(ガゼット)に衝撃を受けてギターをやり始めたんです」

──アートもお好きだそうですが、Numero.jpでのmightさんとの連載「girl meets…」で言葉を紡ぐことによって何かフィードバックはありますか?

「mightさんは同じ歳だし、絵にいろんなものが詰まってる感じがして、いつも衝撃を受けます。mightさんの絵を見たときに直感で出てきた言葉を膨らませていくんですが、だんだん音楽が浮かんでくる感じもあります。風景を見て曲が生まれることも多いんですが、そうやってアートからの影響も大きいですね。今回のアルバムのジャケットは星山耕太郎さんという画家の方に描いていだいたんですけど、ひとりの顔をいろんな絵のタッチで描いて一枚絵として仕上げる方で。お願いするときにまず個展に伺ったんですけど、生の絵の迫力に圧倒されました。おっしゃってることとか、考えていることとかもいちいちすごくて、びっくりさせられることが多かったです」

──最近オフの時間は何をすることが多いですか?

「NetflixやYouTubeを観たり、本を読むことが多いです。『ドント・ルック・アップ』がめっちゃおもしろかったです。現代社会を誇張したブラックコメディで、おもしろいと同時に歯がゆさを感じました。あと、役者の方の演技や規模感がとんでもないエンターテインメントでヤバかったです。観終わった後もいろんなことを考えました。さっきちょうど地球に小惑星が接近してるってニュースを見たんですけど、それを受けてコラ画像とかいっぱい作ってる人がいて、『ドント・ルック・アップ』すぎる!って思いました(笑)。YouTubeは、いろんな人のライブや楽器の動画、あと芸人さんの動画もよく観ます。好きな人が多すぎて、誰って挙げられないくらい。あ、でも『岡田を追え‼』ってチャンネルは大好きで欠かさず観てますね。めちゃくちゃおもしろいです(笑)」

崎山蒼志『Face To Time Case』

各種配信はこちらから(配信URL:soushi.lnk.to/nOXEcJ
通常盤(CD)¥3,330
初回生産限定盤(CD+Blu-ray) ¥6,500
2022年2月2日リリース(ソニー・ミュージックレーベルズ)

Photos:Ayako Masunaga Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Chiho Inoue, Mariko Kimbara

Profile

崎山蒼志Soushi Sakiyama シンガー・ソングライター。2002年、静岡県生まれ。2018年、高校1年生のときに配信シングル「夏至/五月雨」でインディーズデビュー。2021年1月、フルアルバム『find fuse in youth』でメジャーデビュー。現在、テレビドラマや映画主題歌、CM楽曲を手がけるほか、独自の言語表現に文芸界からも注目が集まる。Numero.jpでもアートレイターのmightとのコラボ連載『girl meets…』に参加し、新たな一面を見せてくれた。ニューアルバム『Face To Time Case』を2022年2月2日にリリース予定。sakiyamasoushi.com

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