北川景子インタビュー 「死ぬまで女優でありたいし、挑戦し続けたい」 | Numero TOKYO
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北川景子インタビュー 「死ぬまで女優でありたいし、挑戦し続けたい」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.43は女優、北川景子にインタビュー。

作家・東直己の推理小説『ススキノ探偵シリーズ』を大泉洋と松田龍平の共演で実写映画化した『探偵はBARにいる』。シリーズ3作目となる本作では、北川景子がミステリアスなヒロイン・岬マリを演じる。ストーリーの核となる重要な役どころを儚くも美しく、鮮烈に演じきった彼女が撮影の日々を振り返りつつ、旺盛な仕事欲を支える日々の暮らしについても語ってくれた。 感情の波、時間の経過。そのつながりを大切に ──根強い人気を誇る『探偵はBARにいる』。元々、作品のファンだったとのことですがオファーされたときの心境は? 「大好きな作品なので純粋にうれしかったです。ハードボイルドな世界観ながら、過去の作品の中でヒロインの生き様が美しく描かれているのも印象的で、撮影に入る前から安心していたように思います。ただ、すでに盤石のチームワークができている現場に入っていくことについてはさすがに緊張していました。もしアウェーに感じることがあったとしても仕方ないと覚悟をしつつ、できるだけ溶け込めるようにと撮影当初に主演の大泉洋さんにも質問したんです。『いつもどんな雰囲気なんですか?』と。大泉さんは、ぐるーっと現場を見回しながら『ま、こういう現場ですねぇ』『人それぞれです』とサラリと一言。何かアドバイスをいただけるんじゃないかと思っていたので、肩透かしというか(笑)。そのざっくばらんな人柄のおかげで、逆にリラックスすることができました」

──美しくミステリアスな存在感を放つ岬マリを演じてみていかがでしたか?

「まず、完成した作品を観て自分のシーンで泣いちゃいました。こんなことあまりないんですけどね。過去の作品よりもヒロインがフォーカスされていて、探偵とのシーンも丁寧に描かれている印象も強かったです。ストーリーが展開していくうちに、マリの過去が明らかになっていくのですが、私自身も『どうして今のマリがこうなったのか』『一体、どんな女性なんだろう』と演じていく中で彼女への理解を深めていったように思います。脚本をいただいた時点で、生き方に共通する点はほぼないんですが、でも感覚として『わかる』なと。難しい役どころではありましたがマリのことが理解できました」

──アクションを含めてシリアスなシーンの連続。今まで見たことのない北川さんがスクリーンに映し出されていました。

「一方的に殴られたり、それこそ声が枯れるまで叫ぶシーンなど初めての芝居を経験させてもらいました。叫ぶシーンはたくさんのエキストラさんと一緒の撮影で、合計で20テイクくらい撮ったんです。最後にみなさんにお礼の挨拶をして、ホテルに戻ったとたんに声が出なくなっちゃって。限界まで喉を酷使することがなかったので初体験でした。また運命に翻弄されてしまう一人の女性の数年にわたる人生を演じさせてもらったので、感情の波だったり、時間の経過だったり、常につながりを意識しながら役に取り組むことも初めてでした。時系列に沿って撮影が進むわけではないので、気持ちの持っていき方に苦労しましたね」

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──舞台は北海道・すすきの。地方ロケ中、共演者のみなさんとどう過ごされたのでしょうか?

「大泉さんオススメのお店を紹介していただいて、連日おいしいものを食べ歩いていました。塩ジンギスカンやスープカレー、海鮮丼……どれも本当においしくって。役柄的には儚いたたずまいでいなきゃいけないんですが、みるみる色ツヤがよくなってしまいました。とあるシーンのあと、大泉さんと鈴木砂羽さんと3人でお寿司もいただきました。寒さは本当に辛かったですが、北海道大好きです」

観てくれる方を常に驚かせたいから

──結婚後も仕事量をセーブすることなく、コンスタントに映画やドラマに出演し、新しい役どころに挑戦しつづける北川さん。その原動力とは?

「仕事の仕方は昔からまったく変わってなくて、オファーをいただけてスケジュールが合うならなるべく受けたいというスタンスです。結婚したから仕事を控えるっていう考えはまったくなくて、今でも3日間休みがあるのが不安だし苦痛なんです。根っからの仕事人間なんでしょうね。ただ、なるべく同じような役を続けないようにと心がけています。観てくださる人にいつも新鮮に映っていたいし、喜んでもらいたいから」

──結婚がオンの時間にもたらした変化はありますか?

「私自身はあまり変わってないつもりですが、周りの方々から『柔らかくなった』『幸せそうだね』といっていただける機会が増えました。女優の仕事っておもしろいもので、そういうイメージの役が増えることもある。それはすごくありがたいことですが、あくまで自然体でいられたらいいですね。最近になってやっと、中身と年齢のバランスがとれてきたように感じるんです。小さい頃は、冷静で子どもらしさにかけるといわれたことも多々あって。だから、今はすごく自分らしくいられるし、今がいちばんいいと思えるんです」

──ちなみに北川さんが考える自然体とは?

「30代になって、見た目も体力も20代のころのようにはいかない。でも、それに抗おうとは思っていないんです。私にとっては、年相応であることが自然体の姿。長生きもしたいし、死ぬまで女優をやっていきたいから健康でいながら年相応でありたい。女優の仕事は、その年令にしかできない役があると思うんです。17歳でデビューした当時は制服を着る役をやっていたように、今は誰かの妻だったり、ときには母だったりとそのときどきで役柄が変化します。いつかは『極道の妻たち』のような貫禄がある女性も演じてみたいなと(笑)。そのためにも日々の積み重ねが大事。27歳のときデビュー10周年を迎えたんですが、10年間続けてやっとステージがひとつ上がったように感じたんです。私にとっては続けることがいちばんの手応え。今は20年目に向かっている最中」

オフの過ごし方にも「日々の積み重ね」は反映されている

──オフはどう過ごしていますか?

「上京してひとり暮らしを初めてから、結婚して二人暮らしになってからも、“毎日掃除機をかけて、洗濯機を回す”のが大事なルーティーン。きちんとした生活を維持できていると、どんなに忙しくて余裕がなくても『まだまだ大丈夫』と安心できるし、何より気持ちがリラックスします。表に出る仕事をしている以上は体型や健康に気を使わなきゃいけないので、お料理もがんばれますし。仕事とプライベートがバランスよく循環しているのが心地いいんです」

──これからクリスマスやお正月とイベントが続きますね。

「クリスマスはわりと仕事をしていることが多いですが、誕生日やクリスマスなどのイベントは家族で楽しみたい。ステキなレストランで食事に行くのも、家で手料理でお祝いするのもそれぞれ違った喜びがあって好きです。料理は好きだけど、まだまだ勉強中。ディナーを作りながら、同時にケーキも焼けるくらい手際がよくなりたい。これもきっと積み重ねですよね」

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映画『探偵はBARにいる3』の情報はこちら

Photos:Kohey Kanno Styling:Kayo Hosomi Hair&Makeup:Rie Aoyama Interview&Text:Hazuki Nagamine Edit:Sayaka Ito

Profile

北川景子(Keiko Kitagawa)1986年8月22日生まれ、兵庫県出身。モデルとして活動後、2003年に女優デビュー。06年に『間宮兄弟』で映画初出演。その後、数多くの映画やドラマ、CMなどで活躍。主な出演作品に『ハンサム★スーツ』(08)、『パラダイスキス』(11)、『謎解きはディナーのあとで』(13)、『HERO』(15)、『君の膵臓を食べたい』(17)など。2018 年1月7日より放送のNHK大河ドラマ『西郷どん』に篤姫役で出演する。

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