柄本時生インタビュー「最近、ベースを始めました」 | Numero TOKYO
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柄本時生インタビュー「最近、ベースを始めました」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。 vol.33は俳優、柄本時生にインタビュー。

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ひとクセもふたクセもある役柄をさらりと演じ、観るものに強い印象を残す俳優・柄本時生。彼が、8月13日から篠山輝信らと共にドイツで話題のロードムービー風舞台『チック』に出演、14歳の少年チック役を演じる。現在、27歳の等身大の彼を探るべく、少年時代の思い出や、演技、オフの日の過ごし方について聞いた。

「俺って何もできねえんだな」と再確認する舞台

──8月からの舞台『チック』では14歳の少年・チックを演じますが、27歳の今、少年役を演じることでどんな役作りを?

「日本人の少年役だったら違和感があるかもしれないけれど、彼はロシアからの移民でアジア系という背景なので、あまり深く考えていないんです。それは僕が実際にそういう14歳の少年を知らないから。それに昔から、役作りらしいものはしていないんです。例えば、小説を読んだときに、誰でも頭の中にセリフが流れますよね。そんな風に台本から感じたものを、稽古で演じてみて、それから演出家やスタッフの皆さんと調整していくというやり方です」

──舞台は、映画やドラマとは違いますか?

「舞台は、他人様に見られることは恐ろしいことなんだと再確認する場所です。映画の撮影でもたくさんのスタッフに見られているけれど、でも一緒に弁当を食べて喋る身内のような人たちです。舞台の本番は、お客さんが観るわけですからね。毎回、思うんですよ。舞台の上で平気な顔して演じているけど『今、こんな風に見られてんのかな』と気にしている自分が恥ずかしい。それを再認識するのが舞台です」

──舞台を体験することで、ご自身の中にどんな変化があるんでしょうか。

「調子に乗っちゃダメだな、俺って何にも知らねえんだなと思い知らされるというか。舞台でも映画でもそうですけど、現場からの帰り道に『できなかったな』と思うことが多いです」

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『スタンド・バイ・ミー』を観て井の頭線を歩いた思春期

──どんな少年時代を過ごしましたか?

「こういう舞台を思春期に観ていたら、すごく影響されていたでしょうね。僕もその頃、映画『スタンド・バイ・ミー』を観て、真夜中に井の頭線沿いを歩いたりしましたよ。学校ではいじめられっ子だったんです。クラスの誰からも話しかけられなかったんですが、運がいいのか、他のクラスに友達がいたので、僕自身がいじめられていたことに気付いてなかったという」

──14歳は俳優活動をスタートした時期ですよね。

「きっかけは、兄ちゃん(柄本佑)に来た仕事が、たまたま受けることができなかったので、僕が代わりにオーディションに行ったんです。『読むだけでいいから』と言われて、まあ迷惑をかけるのもなんだし、とりあえず読んで帰ろうと。そうしたら、監督が『何もできないのがいい』と僕を採用してくれた。そこからです」

──14歳のときに夢中になっていたことはありますか? 音楽とか?

「いや全然。CDを初めて買ったのは一昨年です」

──ちなみに何を買ったんですか?

「何だっけな。ええと…ハナレグミか、ゲスの極み乙女。か、どちらかだったような…。すいません、忘れちゃいました。そういえば、小学生の頃は野球をやってました。中学に入ってどんどん上手くなるつもりでいたんですけど、進学した学校が野球に力を入れていなかったので、フェードアウト。だから本当にぼんやりした少年でした」

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映画は前情報なしで。面白いものは面白い

──ライブやフェスなどには行きますか?

「最近、行くようになりました。人生で初めて音楽に興味が出てきたんですよ。実は、ベースを始めたんです。1、2年前から友人とバンドを組んでいて、たまに練習しています。でも本当に趣味なんで、ライブをするわけじゃなくて、仲間と集まって練習するだけなんですけどね。これまで何もしてこなかったので、ひとつ形になればいいなと。ちょっとモテたいという気持ちもあります(笑)」

──オフは何をしていますか?

「映画を観ることくらいですかね。観るタイトルを決めずに、とりあえず街に出て、ちょうど時間が合うものを観るようにしています。もちろん、好きな監督の作品を観に行くこともありますが、3、4年くらい前に、男が一人で観るのをためらうようなキラキラした映画を観たんです。それがすごく傑作で、後から調べたら、僕の好きな監督作品で脚本を書いている方が監督されてたんです」

──観る前に情報は必要ない?

「友達に『この映画がすごく面白かった』と言っても、タイトルだけ聞いて『ふーん』という反応だったんですね。でも『監督が、あの作品の脚本を書いていて』というと急に前のめりになって。それを見て、情報で判断しちゃいかんなと思いました。まっさなら気持ちで観ると、面白いものはやっぱり面白い。もちろんそうじゃないのもありますけど」

──映画好きなのは小さい頃から?

「そうですね。親父も母ちゃんも映画好きの一家だったので。小さい頃はよく家族でジャッキー・チェンの作品を観ていました」

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服は新井浩文からの貰い物。憧れは手塚とおる

──メンズブランド「フィンガリン」ではモデルをしていますが、ファッションはお好きですか?

「モデルはすごく恥ずかしいんですよ。ポージングも指示された通りにやってるだけで。僕ら役者は動く仕事なので、動きがない写真はめちゃくちゃ怖いです。ファッションには無頓着なんですが、モデルを経験することでやっと服への興味も出始めました。カッコいい服を着る勇気が出たというか。実は、僕が着ている服は全部もらいものなんです。先輩の新井浩文さんが年に1回、要らない服を後輩にくれるんです。僕らはジャンケンでそれを奪い合うという。そこでいただいたものを着ています」

──恋愛の傾向は? 積極的なタイプですか?

「ただ待つというか、自分からは全く何もしないです。ダメなパターンですよね」

──では、女性からアタックされるのは嬉しい?

「それはそうですね。来るもの拒まず!なんて言えたらカッコいいんですけど」

──お兄さんの柄本佑さんに第一子が誕生しましたが、結婚願望はありますか?

「兄ちゃんと姉ちゃん(安藤サクラ)がいるから、俺はいいかという気持ちです。兄弟は誰か先に結婚すると、他は遅くなると言いますけれど、本当にその通りで、結婚について全く考えなくなりました」

──憧れの俳優はいますか?

「ここ最近で憧れたのは、手塚とおるさん。連続ドラマで共演したんですけど、あの人スゴイんですよ。例えば、実際には現場がうまく回ってないのに、さも上手く行ってるような雰囲気になることがあるとしますね。そういうときに、手塚さんは、自分から仕掛けるんですよ。怒鳴ったり暴れたりというのではなく、静かに現場を緊張させるような行動をわざとするんです。そうすると、途端に現場の人間関係が浮き彫りになるんです。それがすごくカッコいい。実は真似したことがあるんですけど、僕には無理でした。僕も社会人の端くれなので、つい協調性を意識しちゃうんですけど、手塚さんにはそんなこと関係ない。55歳でも心にナイフを隠し持ってるような、あんな人は他にいません」

ニットTシャツ¥31,800/ハンドシェイク、ワイドパンツ¥19,400、ジャケット¥15,800/ともにカーリー(すべてザ・ウェフト 03-6450-5905)

『チック』の情報はこちらから

Photos:Yuji Nanba
Styling:Emiko Yano
Interview&Text:Miho Matsuda
Edit:Masumi Sasaki

Profile

柄本時生(TOKIO EMOTO) 1989年生まれ、東京出身。2003年映画JamFilm S『すべり台』(2005年公開)のオーディションに合格しデビュー。その後、数多くの映画やドラマなどで活躍する。近年、出演した舞台は『イニシュマン島のビリー』(演出:森新太郎)『ラブ・レターズ』(演出:青井陽治)『ゴドーを待ちながら』(演出:柄本明)『わらいのまち』(作・演出:宅間孝行)など。今年は映画『花筐』、『彼女の人生は間違いじゃない』、『増山超能力師事務所〜激情版は恋の味〜』の公開、舞台『関数ドミノ』『流山ブルーバード』の出演を控えている。

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