ユニコーン インタビュー「50代になった今が一番楽しい」 | Numero TOKYO
Interview / Post

ユニコーン インタビュー
「50代になった今が一番楽しい」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。 vol.25はアーティスト、ユニコーンにインタビュー。

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ユニコーンが13枚目のフルアルバム『ゅ 13-14』(ゆのいちさんいちよん)をリリース。ドラマ『重版出来』(TBS系)の主題歌「エコー」を含む全14曲は、全員が作詞作曲し、ヴォーカルや担当以外の様々な楽器を演奏。それぞれのキャラクターを最大限に生かし、かつてないほど“ユニコーンらしさ”をパッケージングしたアルバムに仕上がっている。このアルバム制作の秘話や、メンバー最年少のABEDONが7月30日に誕生日を迎え、全員が50代を迎えた現在の心境を聞いた。 アルバム制作は宿題形式 ──今回、ABEDONさんが50歳を迎えられて、皆さんが揃って“半世紀少年”になった記念のアルバム『ゆ 13-14』ですが、今回のコンセプトは? 川西幸一「コンセプトはいつもないんですよ」 奥田民生「あるときはありますよ」 川西「え、どれ?」 奥田「昔ね」 川西「『服部』はそうですね。あれはタイトルから始まって『服部』っぽい曲を持ち寄ったんです」 奥田「それと『おどる亀ヤプシ』ぐらいか。基本的に統率が取れてないので、コンセプトが決まらないんですよ」 手島いさむ「レコード会社から『こんなコンセプトで』と提案してくれれば『ワシャ、こんなん嫌じゃ』とかあるかもしれないですけどね」 EBI「それじゃ結局、決まらないよ(笑)」 ABEDON「賛同できるものだったら、まんざらでもないですけど」 ──締め切りがあって、それぞれが曲を持ち寄る宿題スタイルなんですか。 奥田「毎回そうです」 川西「締め切りがなかったら、夏休み気分で曲を書きゃしませんよ。未来を想定して、日々コツコツ曲を作っているのはテッシー(手島)だけですから」 奥田「あれは、他の人に書いたものを持ってきただけでしょ」 川西「そうなの?」 ABEDON「俺もそう思ってた」 川西「臨機応変だね」

──でも“これはユニコーン用に”と持ってこられるんですよね。

手島「まあ、それなりの覚悟で曲を持ち寄るわけですから」

奥田「そうなの?」

手島「そうですよ。まず、ざっくばらんに酒を飲みながら聴きましょうという会があり、それに間に合うように各々が曲を作る。それから、レコーディングの日程が決まるんです」

──ダメ出しもあるんですか?

手島「基本的にないですね」

奥田「ダメ出しされた人が傷付くじゃないですか。そんな時は、ただ何も言わない」

一同「(笑)」

手島「ノー・コメンテーター(笑)」

奥田「何も言われなかったら、そこですでに傷付きますけど」

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遠くの夢より、手の中にあるもので何ができるのか

──50代になった感想と、これから50歳に向かう方へのアドバイスをお願いします。では、年齢順に川西さんから。

川西「50歳の頃に何を思っていたか、もう忘れました」

奥田「もう6年も経っているから」

川西「60代が見えているしね」

──では、60代に向けての意気込みは?

奥田「お、それは俺たちが参考になるね」

川西「そうですねぇ…。ライヴやレコーディングに対する意識が変わりました。僕らを見てくれている人たちがいる、ということに気がつきましたね、今頃」

奥田「遅っ!」

川西「そりゃ、もちろん分かっていましたよ。でも、その方々の人生に影響を与えている部分があると気付いたんです。昔はそれに対して“責任を取る”というより、僕らがどう生きるのかを見せようという気持ちだったんですけど」

奥田「いろんなことを考え始めたんだね」

川西「同級生と飲みに行くと、病気や健康の話題ばかりになって、僕自身も昨年、病気を経験して。これからの人生をどう生きるかと考えたときに、まず、僕らは音楽をやり続けていて、真剣に面白いことに取り組める今の大切さを…、ええと、何の話でしたっけ?」

──60代に向かっての意気込みです。

川西「ああ、そうだ」

手島「ゴールのない話やったんや…!」

川西「人生のゴールについて話しているのに、話のゴールは見えませんでした。次はテッシー」

手島「30代40代の頃に比べると、今の方が断然楽しいです。肩の力が抜けたというか、魂が抜けたというか」

川西「それじゃ抜け殻だよ!」

手島「若い頃は多くの可能性があるけれど、30歳頃までにはある程度自分のポジションを絞り込みますよね。でも音楽をやっていると、夢見がちのままでいられるところがありまして。50歳になって『俺は頑張ったけど、こんな感じなんや』と気が付いたんです。だから見果てぬ夢より、手の中にあるもので何か面白いことができるんじゃないかと。でも、まだ夢はたくさんありますよ」

──例えば?

手島「野球選手になりたいとか」

奥田「ずいぶん前に諦めた夢やないかい!」

手島「ヨットレース出場。船酔いするんですけどね、僕」

奥田「口から出まかせ!」

手島「まあ、でも今まで色んな出会いがあって、これから会う人たちもいるでしょう。この先、面白いことがありそうだという期待は大きいです」

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誕生日プレゼントにダイソンのドライヤーを

川西「次は民生さん」

奥田「体力は40代後半から落ちましたけど、精神的には何も変わりません。僕は年齢を節目に、振り返ることもしませんね」

川西「誕生日なんてどうでもいいと思ってるんでしょ」

奥田「そんなことないよ、モノをくれたりするから。でも、このメンバーは誰もくれやせんのですよ」

手島「『おめでとう』と言うとるやないかい」

EBI「まあ、でもそれはお互い様じゃない?」

川西「ライヴやレコーディングが誕生日に重なると、スタッフがお祝いしてくれることはありますけど。メンバー同士で『今度の誕生日に何かする?』と相談するなんて、考えたこともないですね」

EBI「他のバンドはやっているよ」

奥田「じゃあ、こっちもやれ」

手島「いくつになってもプレゼントは嬉しいもんです。自分は8月生まれで夏休み中だから、小学校の頃から何も貰えんのですよ」

川西「それで哀愁の歌詞を…」

ABEDON「テッシーはプレゼントすることはあるの?」

手島「…………。ほぼないですな…」

奥田「お前ってやつは! 俺はあげることが少ないから、貰うことも少ないだろうと覚悟しているからね。でも今年もらって嬉しかったのは、ダイソンのドライヤーです」

ABEDON「虫眼鏡みたいなやつ?」

奥田「筒みたいになっている」

手島「ワシは昨日ケーズデンキで試した。風量がすごいな」

EBI「音は?」

奥田「掃除機と同じ」

EBI「今、音が小さいのを探しているんだよね」

川西「『50歳』がテーマなのに、なんでこんな流れに…」

──手島さんは、ダイソンのドライヤーを買うんですか?

手島「プレゼントをお待ちしています!」

EBI「僕はルンバがいいな」

川西「あれはかわいい。でもルンバが部屋を綺麗にしてくれるというより、ルンバが動きやすいように片付ける習慣がつくんだよね」

奥田「そしたら今度の誕生日に、マキタのロボット掃除機をプレゼントするわ」

EBI「大きいね」

ABEDON「結構なサウンドを奏でるよ」

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健康は大事、無理すんな

──EBIさんは50歳についていかがですか。

EBI「僕にとって50歳は、人生を振り返る良い節目でした。それまで健康優良児だったんですが、50歳を目前に体調を崩したんです。肩も首も痛いし、目も見えにくくなるし。体が弱ると心も折れやすくなって、自分の人生、これで良かったんだろうかと」

奥田「めちゃめちゃ、へこんどるな」

EBI「天冲殺も重なってね」

──占いはお好きなんですか?

EBI「落ち込んでいるときにはね。これまでの人生を振り返って後悔ばかりだったんですが、節分の頃から運気が上昇してきて、腕も上がるようになって。今は前向きに色々と考えるようになりました。若いときは全く何も考えていなかったのでね」

──“全く”ですか?

奥田「EBIは相当なレベルでしたからね」

手島「元々おおらかというか、まあ“宇宙”なんですわ」

EBI「だからね、僕がみんなに言いたいのは『健康に気をつけろ、無理すんな』ということです」

奥田「配布されるスケジュール表も、僕らはA4なのにEBIだけB3なんです」

EBI「見えないからね」

──最後に50歳になりたてのABEDONさん。

ABEDON「若い頃に思い描いていた50歳の自分は、あくせく働かず悠々自適というイメージだったんですが、今すごく働いていますね。予定とは違うけれど、それでいいと思いますし、年上の方々からは『まだまだこれから』と言われます」

──欲しいプレゼントはありますか?

ABEDON「壁際に置いてタテに映るプロジェクター。それで優雅に時計を映したり」

川西「アーティスティックやね」

ABEDON「無駄に使うのがいいんだよ。体力は無駄に使えないのでね」

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50歳からの体力作り

──9月3日からユニコーンツアー2016『第三パラダイス』がスタートしますが、体力作りはされていますか?

川西「毎日7kmくらい走っています」

EBI「僕もウォーキングを始めました」

川西「YO-KING?」

EBI「ウォーキングですよ!」

──どのくらい歩いてるんですか?

EBI「1日2回」

T「風邪薬か!(笑)」

EBI「近所を30分から1時間くらい歩くようにしたら、すごく体調がいいんです。みんなにも歩いてもらいたいな」

奥田「さっきから、みんなに薦めとるな…」

──歩きながら音楽を聴いたりしているんですか?

EBI「聴きませんね。道端の花を眺めたり、こんな巨木があったのか!と感動したり」

手島「ピュア!」

奥田「毎日、同じところを歩いているのに…」

EBI「ルートはショートとロングで5種類あるよ」

奥田「川西君もいくつかコースはあるの?」

川西「今は3パターン。それにツアー先でも走るよ。札幌の豊平川沿いが最高だった」

EBI「いわきには山羊がいたよ」

ABEDON「次のツアー先で一緒にやったら?」

川西「歩きと走りじゃ速度が違うから。EBIが歩いているところを『おつかれー』って何度も追い抜いたりして…、って俺は惑星か!」

──奥田さんは何か運動はしていますか?

奥田「やったりやらなかったり」

川西「でもゴルフや釣りとか、趣味は多彩だよね」

──手島さんはいかがですか?

手島「ドン・キホーテで買った腹筋マシーンはありますけどね」

奥田「やってないでしょ」

手島「もう無理はできんから」

──ABEDONさんは?

ABEDON「何もしてないですね」

川西「サーフィンは?」

ABEDON「忙しくて行ってない。休みがあればね」

──皆さん食事も気をつけていますか?

川西「野菜を摂るようにしています。自炊なので自分で気をつけないと。野菜から先に食べるといいと教えてくれたのは、民生なんですよ」

EBI「今はテレビも健康情報を教えてくれますしね」

奥田「昔からそうだけどね」

川西「内容は時代によって変わるよね。この前、半身浴はダメって言ってた」

EBI「10分間、しっかり湯船に浸からないと効果がないんだよ」

手島「右半身がいいですか。左半身がいいですか」

川西「そっち?」

Photos:Kouki Hayashi
Text:Miho Matsuda
Edit:Masumi Sasaki

Profile

ユニコーン(Unicorn) ABEDON(阿部義晴/1966年生まれ)、奥田民生(1965年生まれ)、川西幸一(1959年生まれ)、EBI(堀内一史/1965年生まれ)、手島いさむ(1963年生まれ)。1986年広島にて結成し、翌年『BOOM』でデビュー。「大迷惑」(89年)「働く男」(90年)「ヒゲとボイン」(91年)「雪が降る街」(92年)「すばらしい日々」(93年)など数多くのヒットを記録するが1994年解散を発表。2009年シングル「WAO!」で再始動する。8月10日に新作『ゅ 13-14』(ゆのいちさんいちよん)をリリースしたばかり。ツアーは9月3日(土)東京・府中の森芸術劇場を皮切りに、全国19カ所29公演を予定している。

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