ビーバドゥービーにインタビュー「猫を飼って、人生を捧げるくらいの愛を知った」 | Numero TOKYO
Interview / Post

ビーバドゥービーにインタビュー「猫を飼って、人生を捧げるくらいの愛を知った」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.116はビーバドゥービー(beabadoobee)にインタビュー。


90年代オルタナティブロックに等身大の不安や孤独を乗せ、Z世代を代表するアーティストとなったビーバドゥービーの3rdアルバム『This Is How Tomorrow Moves』。新たな共同プロデューサーとして迎えたのは、アデルやザ・ストロークス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ビースティ・ボーイズと共に数々の名盤を誕生させてきたリック・ルービン。珠玉のメロディが際立つ、広がりのあるサウンド・プロダクションがとても魅力的だ。自分自身を発見できたという2ndアルバム『ビートピア』から2年、さらに自分と向き合い、過去のトラウマも今抱えている人間関係の問題もすべてを経験として受け入れた境地が綴られている。来日中の彼女にプライベートのこともたっぷり聞いた。

失敗や困難を乗り越えて表現できることが増えた

──新アルバム『This Is How Tomorrow Moves』について、「このアルバムは、新しい時代、自分が今いる場所について理解する上で、他の何よりも自分を助けてくれたような気がします。それは女性になるということなんだと思う」とコメントされていますが、女性になるというのは具体的にどういうことなんでしょう?

「自分自身を理解するということの助けになった作品なんだよね。前回のアルバムから2年の間にいろいろなことがあった。別れも経験したし、また恋に落ちた。現実に直面し、成長するなかで、失敗や大変なことを受け入れるようになったの。それが女性としての成長にもつながってると思ったんだ。実際にいろいろな経験をすることで表現できることが増えて、それが曲にも反映されていると思う。特に大きかったのが、ひとり暮らしを始めて、猫を2匹飼い始めたこと。自分の子どもみたいにかわいいの。こんなことを言うとみんなにバカにされるんだけど(笑)、『こんなに自分以外の存在を人生を捧げるくらい愛おしいと思えるんだ』って思った。猫を飼ったことで自分が母親になれる自信も付いたんだ」


──今作はあなたの親友でもあるジェイコブ・バグデンとリック・ルービンとの共同プロデュースです。どんな影響がありましたか?

「まず、ジェイコブは私が何か一言言っただけでアイデアを理解してくれるほど私のことを知ってくれているので、すごくやりやすくて心地良かった。リックはこの作品を誇りに思わせてくれた。レコーディングの初日にデモを演奏しようとしたら『デモじゃなくてまずはアコギで弾いてほしい』って言ってくれて、それによって自分の曲そのものの良さに気付くことができて、すごくハッピーだったの」

──先行シングル「Take A Bite」はグランジーなギターが印象的です。このアプローチはどのように生まれていったんでしょう?

「最初はリズムも含めて全然違う曲だったの。まずジェイコブがデモを作ったんだけど、実はその最初のデモが大嫌いで(笑)、次にリックに渡してリックのLAのシャングリ・ラ・スタジオで出来上がったものが完成形。そのスタジオにはジェイソンっていうすごく才能のあるエンジニアがいて、彼と作業することであのサウンドが仕上がったんだよね」


──「Take A Bite」は「混沌の中に安らぎを見出すこと」が歌われていますが、そういった行為が必要だったのでしょうか?

「私は心が落ち着いているときとか平和なときでもカオスを求めてしまうの(笑)。カオスの中にいるのが心地よくて。それがあまりいいことじゃないことはわかってるんだけど、誘惑に負けてしまって繰り返しちゃう。『Take A Bite』はそういうことを歌ってる曲。今回のアルバムの曲には3パターンがあって、1つ目は何かを辞めて乗り越えること、2つ目はそういうことを自分がやっていることを理解すること、3つ目は受け入れること。『Take A Bite』は2つ目にあたる曲。昔は自分がやっていることに気付いてもなかったけど、今はちゃんと理解できてる。この曲を書くことでそういう自分に気付けたからセラピーみたいな曲になったと思ってる」

──生活の中で混乱したときは曲制作に向かうことが多いのでしょうか?

「そうだね。やっぱり曲を書くことが私にとっての唯一無二の解決方法なんだと思う。あと、時に必要なのは人に『それはおかしいよ』って言ってもらうこと。それによって自分のことを理解して前進できるんだよね。曲制作にストレスを感じることはあるけれど、私がこれまでに成し遂げたことを伝えてもらえると心が落ち着くし、救いになる」

愛猫のミソとキムチに夢中


──最近のオフは何をすることが多いですか?

「やっぱり音楽が好きで曲を作ることが好きなので、どうしても曲を書いちゃうんだよね。退屈するとギターを弾く。あとは、映画を観たり、猫と遊んだり、友達と出かけたりすることが多いかな」

──ミソとキムチという猫を飼ってるんですよね。

「そう! ボーイフレンドがプレゼントしてくれたミソとキムチっていう猫を飼ってるんだけど、飼う前から猫のタトゥーを入れるくらい猫が大好き。子どもの頃からキムチを食べて育ったんだけど、1匹はオレンジ色でキムチの色みたいだなって思ったからキムチにした。もう1匹は茶色でちょっと斑点が入っているのが小さいお豆腐に見えるなって思ってミソにしたの(笑)。お味噌汁も好きなんだよね」

ボーイフレンドと日本でMV撮影した『Ever Seen』

──ラジオご出演時「日本で猫カフェに行きたい」とおっしゃってましたが、行けましたか?

「今のボーイフレンドは映像監督で今回はMVを作るために一緒に来日にしているんだけど、京都で『ここから2時間くらいかかるお店にチャーシューラーメンを食べに行こう』って言われたの。私はお肉が苦手ってこともあって、『えー?』って思った。でも到着したら猫カフェで、私の誕生日のサプライズだったの! 猫をちゃんと大切に扱っている環境だなって思ったし、猫がみんな幸せそうにしていてすごく楽しかった」

──ボーイフレンドとお仕事をすることは大変なこともありませんか?

「言ってることはよくわかる(笑)。前の彼も映像監督で、その人とはあまり良い別れ方をしなかったんだけど、これまで映像監督と付き合うことが多いので、タイプなのかな。私は恋人に情熱的でドラマティックな関係を求めるところがあって、一緒にアートを作るのが好きなんだよね。今の彼は私のやりたいことをすごく理解してくれているので、一緒にクリエイションをするのがすごく楽しいし、助けられてる。将来自分の子どもに見せられるようなものを一緒に作ることができる関係が大事だなって思ってる」

2003〜04年ごろのファッションが好き!


──前回Numero.jpに出ていただいた2年前は黒を身に付けることにハマってるとおっしゃってましたが、今はどうですか?

「今でも黒は好きなんだけど、それよりもっといろいろな服を着ることを楽しんでる。2年前に黒い服を多く着ていたのは大人に見られたからだったんじゃないかな。私はヘビースモーカーなんだけど、その影響で皺が気になり始めたから、若く見られたくてファッションの好みが変わったのかも。私はまだ24歳だから、半分ジョークではあるんだけど(笑)、少し気にし始めたのかもしれない」

──挑戦してみたいファッションスタイルやアイテムはありますか?

「とてもシンプルなスタイルに興味があるかな。例えばジーンズとTシャツなんだけど、何か奥深さが感じられると素敵だと思う。あと、ブランドのアーカイブが大好き。『This Is How Tomorrow Moves』のアートワークでも2003~04年頃のステラ・マッカートニーのアーカイブを着ているんだけど、私はその時代のファッションがすごく好きなので、これからもその時代のアイテムを使って表現していきたいと思ってる」

──1カ月休みがあったら何をしたいですか?

「生まれ故郷のフィリピンに行きたい。東京にもまた来たいし、アジアに行きたいかな。あとは家でゆっくり猫と過ごしたり、友達と過ごしたり。でも結局こうやってキャンペーンをやっちゃうのかも(笑)」


Beabadoobee『This Is How Tomorrow Moves』
価格/国内盤CD ¥2,750
発売日/8月16日
配信・購入リンク/lnkfi.re/beabadoobeeJapan

 


 

Photos:Michi Nakano Interview&Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

Beabadoobee フィリピンのイロイロ市生まれ、ロンドン育ちのベアトリス・ラウスによるソロ・プロジェクト。2017年から本格的に音楽活動を開始し、デビュー・シングル「Coffee」をリリース。19年には「Loveworm」と「Space Cadet」の2枚のEPをリリースし、NMEアワードの 新人賞を受賞。 BBCが有力新人を選出する名物企画「Sound of 2020」にノミネートされた。20年にデビュー・アルバム『Fake It Flowers』を、22年には2ndアルバム『Beatopia』をリリース。同年にはサマーソニックにて初来日を果たした。累計50億回ストリーミングを記録し、850万人以上のSNSフォロワーを持ち、Z世代を中心に絶大な人気を誇っている。

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