中川大志インタビュー「演じるのではなく、役と一心同体に。舞台だからこそ行ける境地、領域がある」 | Numero TOKYO
Interview / Post

中川大志インタビュー「演じるのではなく、役と一心同体に。舞台だからこそ行ける境地、領域がある」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.112は中川大志にインタビュー。

演劇ユニット・地球ゴージャスの結成30周年を記念し、舞台『儚き光のラプソディ』が4月28日より上演される。2018年に上演された公演Vol.15「ZEROTOPIA」以来の新作で、期待が高まる作品に俳優 中川大志が出演。一昨年、中川大志が座長を務めた『歌妖曲~中川大志之丞変化~』に感銘を受けた岸谷五朗が声をかけ、出演が決まった。物語の舞台は謎の白い部屋。「逃げたい」という強い感情が溢れそうになった瞬間、目の前に現れた扉を開くと、この部屋に辿り着いていた。集まったのは、生きていた場所、時代も様々な7人の男女。なぜこの人たちと、この部屋で、この瞬間に出会ったのか……。舞台俳優としても注目を集める中川大志に、作品への思い、多忙な日々の中で家での過ごし方やオフの楽しみ方を聞いた。

生ものである舞台は、この先もやり続けたいことのひとつ

──『儚き光のラプソディ』、稽古に入られてからの実感を教えてください。

「毎日が目まぐるしく、一日一日が濃厚です。地球ゴージャスは歌とダンス、アクションなど、いろんな要素を凝縮したエンターテイメントなので、覚えること、体に入れなければいけないことがたくさんあって、毎日があっという間に過ぎていきます。そんな日々も幸せです。また稽古場がすごく良い雰囲気でして。この時間も終わっていくんだなと、寂しさすら感じてしまう。すごく青春! 充実した毎日です」

──地球ゴージャスへの出演は念願だったそうですね。

「はい。地球ゴージャスの作品を初めて観たのは『The Love Bugs』(2016年)。僕は小学生の頃から俳優の仕事に携わってきて、映像が多かったこともあり、演劇にすごく憧れがありました。ただ10代の頃はなかなか機会がなくて。舞台を観ることも好きで、『The Love Bugs』を観てそのパワフルさに衝撃を受けました。カンパニーの結束、繋がりが感じられ、この人たちはなんて楽しそうなんだろう! 仲良さそうなんだろう! って嫉妬するくらい。その時、エンターテイメントの仕事って最高だな! と思えたんです。

一昨年には僕自身が初めての座長公演に挑みました(『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』)。役としても肉体的にも大変な作品で痺れる日々でしたが、同時に役者として生ものである舞台をこの先もやり続けたいと思えた。また舞台に立てたらいいなと思っていたところ、まさかの地球ゴージャスさんからオファーをいただきました。しかもきっかけは、岸谷(五朗)さんが『歌妖曲』を見てくださったと。人生何が起きるかわからないなと思いました」

──岸谷さんから、起用の理由を聞かれましたか?

「はい。岸谷さんとお食事に行った際、『歌妖曲』の感想をいただきました。寺脇さんとは何度かご一緒したことがありますが、岸谷さんとは今回が初めて。作品への向き合い方や役へのアプローチの仕方など、そんなところまで見てくださっているんだ!と驚きました。演出家であり俳優であるからこそのありがたいお言葉をたくさんいただいて本当に嬉しく、また身が引き締まる思いでした。

映像で演劇に関わっている先輩方とご一緒すると、皆さん、言語化できない強さをお持ちなんですが、自分が舞台を経験して、その理由が少しだけわかった気がします。映像は瞬発力が大事で、準備期間にも限界があります。その点、舞台は稽古期間を含め、2ヶ月以上作品、そして役と向き合います。だからこそ行ける境地、領域があり、役と一心同体になる。演じるという感覚とは違って、本当の意味で自由になれるような。今回もポエムとしてどう生きられるのか、楽しみです。『儚き光のラプソディ』はいつの時代にも通じる、人間の中にあるものを描いています。時代が流れて変わってきたもの、変わらないもの、変わっていかなきゃいけないもの……、そんなテーマがあるように思います」

──役づくりの際に意識していることはありますか。

「日々、自分の力不足を悔しく感じることがあり、20代になっていろいろと試行錯誤してきました。役者は自分ではない誰かを演じるけれど、でも結局自分ではない誰かにはなれないんです。自分自身が何をされたら嬉しいのか、何をされたら悲しいのか、その感情の湧き出てくる大元は僕でしかないと思うので、そこを役とどう結び付けていけるのかを考えます。例えば、その役が大好きな食べ物があるとして、だけどそれは僕が好きな食べ物とは違う。その場合、自分が大好きなものって何だろう? と考えるんです。役が悲しんでいる状況だったら、自分がこれぐらい悲しい状況って何だろう? と。基本、常に自分の中にある感情を掘り起こすようにしています。自分のことって案外自分ではわからない部分も多く、そこを監督や演出家に見つけていただけるのが面白いです。今回も自分が知らない自分が出てきたらいいなと」

──共演の風間俊介さんと鈴木福さんの印象は?

「風間さんとは初めてご一緒させていただきます。大先輩で、年輪というか、強さが感じられる上に、すごくスマートで知的、優しい方です。個人的にはもっと崩れた風間さん、隙がある風間さんを見たいなって。福くんとも共演は初めてですが、12、13年くらい前、ドラマの撮影の際に、福くんが隣のスタジオでドラマを撮っていたことがありました。その時にちらっと楽屋でお会いして。僕は中学校1年生くらい、福くんはまだ小さかった……、という話を福くんとポスター撮影の時にしました(笑)。

だいたい、かつてはどの現場でも僕が一番年下だったのですが、最近は下の世代がいる現場も増えました。今回も年下の福くんがいて嬉しいですし、楽しみでもあります。風間さんも福くんも僕も子役出身。どこか共有できるところがあるんじゃないかな」

その時々のこと、目の前のことだけに頭を使い、集中したい

──お忙しい日々ですが、帰宅したらソファに座って動かない? もしくはあれこれ動くタイプですか。

日によりますね。スイッチが入るとひたすら家事をやったりもします。掃除と片付け、洗濯とかまとめて一気に。日頃からちょこちょこ、やれる時にやろうという意識はあって、スイッチが入ったらやる、だけどスイッチが入っていない時はやらないようにしています。どうしてもやらなきゃいけないときはやるんですけど、基本的には気分が乗っている時にやった方が効率もいいし楽しくやれるので」

──家事へのこだわりはありますか。

「細かいことを言えば、あります。洗濯物、Tシャツやパーカーひとつにしても、いろんなたたみ方があるので。洗濯物をたたむ作業は結構好きです。SNSを参考にたたみ方をいろいろ変えたりもします。収納方法も自分なりのやり方がありますよ」

──オンとオフの切り替えは意識していますか。

「うーん、あまり意識していないけど、やらないと決めたことはやらないです。例えば家でゴロンと休むなら、台本は開かない。なるべくその時々のこと、目の前のことだけに頭を使いたいし集中したいと思っています。基本、仕事が終われば自然とオフになりますし、現場に行けばオンになる。時には意図的に自分を調整していくこともありますが」

──毎日のルーティーンはありますか。

「朝起きたら、まずベッドを直します。そして毎日同じものを飲むなどのルーティンが好き。安心するというか、毎日同じことをするのが染み付いています。飲むものは青汁やトマトジュースなど時期ごとに変わり、体に良さよさそうな飲み物を選んでいます。それをパッと飲んで家から出る感じです」

──ストレス発散のためにすることは?

「運動して体を動かします。体調も良くなるし、運動は自分に必要なんだって改めて思います。お酒を飲むこともストレス発散にはなりますが、ほぼ毎日飲んでいて(笑)。ストレス発散というより、本当に好きだから飲んでいる感覚かな。キックボクシングはかれこれ4年くらいやっています。ちょっと体調が悪くて調子が上がらなかったり、また気分がどんよりしている時は、体を動かすとシャキッとなります。朝、ジムに行くと1日が活発に動けたりしますしね。今は稽古でかなり体を動かしているので、ストレス発散にもなっていますね。良い汗をかいて、心地よい疲労感を感じて。本当に充実した毎日です」

衣装/ブルゾン¥64,900 シャツ¥49,500 パンツ¥47,300/UJOH(M 03-6721-0406) その他 スタイリスト私物

Daiwa House Special
地球ゴージャス三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』

作・演出/岸谷五朗
出演/中川大志 風間俊介 鈴木福 三浦涼介 佐奈宏紀 保坂知寿
原田治 小林由佳 井出恵理子 杉山真梨佳 内木克洋 高木勇次朗 水原ゆき 精進一輝 高島洋樹 輝生かなで 東川歩未 尾関晃輔 栁原華奈 伊藤彩夏 千葉悠生 権田菜々子 清水錬
岸谷五朗 寺脇康文

【東京公演】
公演日程/2024年4月28日(日)〜5月26日(日)
会場/明治座

【大阪公演】
公演日程/2024年5月31日(金)〜6月9日(日)
会場/SkyシアターMBS

公式サイト/www.chikyu-gorgeous.jp

特別協賛/大和ハウス工業株式会社
企画・製作/株式会社アミューズ

中川大志の直筆サイン入りチェキをプレゼント!

Photo: Tomohiro Takeshita Hair & Makeup:Sayaka TsuTsumi Styling:Takashi Tokunaga Interview:Maki Miura Edit:Saki Tanaka

Profile

中川大志Taishi Nakagawa 1998 年 6 月 14 日生まれ 東京都出身。2009 年に俳優デビュー。ドラマ『家政婦のミタ』(NTV・11)の演技で脚光を浴び、その後数々の作品で活躍。19 年の NHK 連続テレビ小説『なつぞら』ではヒロイン・なつの夫となる坂場一久を演じた。さらに同年、映画『坂道のアポロン』、『覚悟はいいかそこの女子。』の演技が評価され第 42 回日本アカデミー賞新人俳優賞、23 年には『鎌倉殿の 13 人』(NHK) 、『オールドルーキー』(TBS)の出演においてエランドール賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に【舞台】『歌妖曲~中川大志之丞変化~』(23)、【映画】『碁盤斬り』(24 年 5 月公開予定)、『スクロール』(23)、『ブラッ クナイトパレード』(22)、【ドラマ】『OZU~小津安二郎が描いた物語~「青春の夢いまいづこ』(WOWOW・23)、『ONEDAY~聖夜のから騒ぎ~』(CX・23)などがある。

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する