UMIインタビュー「迷う自分を受け入れて、風と対話する。混乱した時代に見つけた自分の愛し方」
旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.108はUMIにインタビュー。
ソウルやR&B、ヒップホップを軸にした多彩な音楽性と、心が癒されるリリックで注目が集まるアーティストのUMI。昨年のSUMMER SONICへの出演や、『「wherever u r」(feat. V of BTS)』のリリースでも大きな話題を呼んだ彼女にインタビュー。1月にリリースしたEP『talkin to the wind』のタイトルになった風と”話す”ことや、日課にしているメディテーション、迷う自分を受け入れることなど、UMIが見つけた“生き方”について教えてもらった。
風と話をすることで思考をクリアに。迷う自分も受け止めて
──新しいEP『talking to the wind』についてお伺いします。まず、タイトルの意味は?
「私はよく屋外で風を感じながらメディテーションをするんですけど、瞑想の状態に入ったときに、風や木、自然と対話をすることがあるんです。言葉を使うんじゃなくて、風がヒューと吹いたら風が話しかけてきたなって。風と話をすると、気持ちが落ち着いて頭がクリアになるんです」
──メディテーションするのは、森のような自然の豊かな場所で?
「それもあるし、街の中でも街路樹が語りかけてくることも。ツアー中はいろんな国の風と話をします。以前、京都のお寺を訪ねたときは、周りの木がとてもおしゃべりで、うるさいくらいでした(笑)。自然はいつも人に話しかけていると思うんです。みんなの心がどれだけオープンなのかによって、声が聞こえたり聞こえなかったりするんじゃないかな。都会に住んでいると、簡単に自然とのつながりを忘れてしまいますよね。そうすると頭が混乱して悩みが増えるから、1日に1回は裸足でグラウンディングしたり、窓を開けて風と話したりしています」
──今回、それをタイトルにした理由は?
「2023年は、誰にとっても混乱した1年でした。世界のあらゆることが変わったし、価値観をシフトしなくちゃいけない場面もありました。個人的にもいろんな困難に直面した人もいただろうし、私もたくさんの変化に直面して、気持ちの整理がつかずに、風と話しをする時間が多かったんです。それで少しずつ答えが見えてきて。風がくれた“peace”をみんなにシェアしたくて、EPのタイトルにしました」
──このEPでは「“迷う”ことを受け入れる」もテーマのひとつだそうですね。
「このEPの制作を始めたとき、方向性が定まっていない状態だったんです。制作中にチームのメンバーも変わったし、どこに向かっているのか、なぜ曲を作っているのかと迷うたびに、風と話をして。そうするうちに、前が見えないことは悪いことじゃない、新しいことがやってくるんだと思えるようになったんです。ポジティブに考えたら、どんどん前に進むことができました。みんなそれぞれの人生を送っているけれど、いつも迷いながら進んでいますよね。迷っている自分を受け入れてみて、それでいいんだよと伝えたくて」
──私もよく迷いがちで、悩み始めるとネガティブなスパイラルに陥ってしまうんです。そういうときって、悩んでる自分を否定していたかも。
「風を見ていると、行き先もなく、いつもグルグルと彷徨っていますよね。だけど、風はそれでいい。風は風であるだけでハッピーな存在だから。じゃあ、私も風のように迷ったとしても、私は私であるだけでハッピーでいいのかもしれない。そう思ったら少し気持ちが楽になって。それに考えてみると、これまで悩んでいても最終的にはどうにかなったから、『UMIちゃん、今回も大丈夫だよ』と自分にいつも言い聞かせています」
──収録曲の『happy i am』のMVがとても素敵でした。パートナーのヴェロニカ(V-Ron)さんとの旅行や日常の風景でしたね。
「音楽制作のために行ったニューヨークや、近くのLAとか、いろんなところで撮った映像です。ヴェロちゃんは今回のEPのプロデューサーで、いつも一緒に音楽を作っています」
──いつも曲作りはどのように?
「『happy i am』は、UMIが家でお昼ごはんを作っていたときに、ヴェロちゃんが楽器を弾いていて。『それいいじゃん。ちょっと歌ってみよう』となって完成させた曲です。そういうことが多いかも。『SHOW ME OUT』は感謝祭でフロリダに行って、お腹いっぱいになって家に着いたときに、急に曲を作りたくなって。ヴェロちゃんと曲を作るのが大好きだし、いつでも音楽を作ることができる環境なので、とても感謝しています」
──「why dont we go」は、どんなインスピレーションから?
「思い出かな。突然、友達とロードトリップに行ったり、ヴェロちゃんと夜中に『ご飯食べに行かない?』と急に出かけたり。思いつきで行動することが好きで、みんなにもおすすめしたかったんです」
──『not necessarily』という曲は? 直訳すると、“必ずしもそうではない”という意味だけど。
「“別にいいよ”くらいのニュアンスかな。よく使うフレーズなんですよ。ヴェロちゃんと夜中の2時くらいにフリースタイルで曲を作っていて、ビートをお願いしたら、これを出してくれて。『これはどういう曲?』と聞いたら『んー、別に(not necessarily)』って。その言葉が気に入ってタイトルにしました。歌詞は『今日は何したい?/うーん別に/でも君のためならなんでもするよ』。自分が予想もしてなかったことを提案して、新しい経験の機会を与えてくれる人は、私にとって大事な人です。みんなもそういう経験はあるんだろうけど、でも特別に誰かとこういう話をすることってあまりないでしょう? だから、このユニークな気持ちを曲にしてみたかったんです。昨日も、ヴェロちゃんとカラオケに行ってすごく楽しかったから、『もうちょっと歩かない?』『別にいいよ(not necessarily)』と、焼酎を飲みに行って。『まだ帰りたくないな、ここ散歩してみようよ』『別にいいよ(not necessarily)』と“Not necessarily”がたくさん積み重なると、楽しいアドベンチャーになる。曲を作るときもそんな感じかな」
Instagramをきっかけに、BTSのVとコラボレーション
──昨年末にリリースされた『「wherever u r」(feat. V of BTS)』は、どんな経緯でコラボレーションすることに?
「10月頃に、VさんがインスタのストーリーでUMIの曲をアップしてくれたんです。それで、『シェアしてくれてありがとうございます』とお礼のメッセージを送ったんですね。その時、お母さんと一緒にハイキングをしていたんだけど、隣にいたお母さんが『せっかくだから、いつか一緒に曲をつくりましょうと言ってみたら?』って。それで、思い切ってそうメッセージを送ってみたんですね。返事は来ないだろうと思ったけれど、緊張しちゃうから夜まで携帯を見ないようにして(笑)。そしたら『いいね、作ろう』って! それでいくつか曲を送って、Vさんが気に入ってくれたこの曲を完成させました」
──Vさんは現在、兵役義務の履行中ですが、この曲はVさんの誕生日(12月30日)にリリースされました。入隊については以前から話を聞いていたんですか。
「全く知りませんでした。制作を終えて、いつかリリースできたらいいなと思っていたときに、入隊するというニュースを見て。考えてみると、この曲のテーマは入隊するVさんとファンのみなさんの心境に沿ったものかもしれない。それでVさんの誕生日にリリースすることになりました」
──Vさんのファンにとっても、大きなプレゼントだったと思います。
「頑張って作ったから、みんながそう思ってくれたらとても嬉しいです」
呼吸法とメディテーション
──ここからは、UMIさんにまつわるキーワードをいくつか伺います。まずは、話が出たメディテーションについて。興味をもったきっかけは?
「メディテーションを始めたのは、高校を卒業する直前の頃です。私は中学の頃から心配症で、すぐに緊張するし、なんでも考えすぎるタイプでした。高校を卒業するときに、こんなストレスの多い生き方は嫌だと思って、学校で聞いたメディテーションを試してみたんです。YouTubeで検索して10分くらいのメディテーションをしたら、涙が止まらなくなりました。こんなに頭の中が空っぽになったことは初めてだったし、私ももっと楽に生きていけるのかもしれないと思って。それから毎日、メディテーションをしています」
──ライブの冒頭にメディテーションを取り入れようと思ったのは?
「ショーの前は息もできないくらい緊張するから、自分のためにメディテーションを始めたんです。でも、みんなと一緒にやってみたら、みんなもリラックスしてショーに集中してくれるし、感情をダイレクトに届けてくれたりするから、これはみんなのためにもいいのかもしれないと続けています」
──4月の日本ツアーでは、日本で初めての「“A Special Meditation Experience with Umi” in KYOTO」が開催されます。京都を選んだ理由は?
「お母さんの故郷だから(笑)。というのもあるし、京都のお寺が大好きで、訪れるたびに、この“peace”な雰囲気をもっとたくさんの人に知ってほしい、ここでメディテーションしたらいいだろうなとずっと思っていたんです」
──メディテーションのセッションでは、どんなことを?
「ブレスワークです。力強く2回吸って吐くという、何百年も前から続く呼吸法があるんです。気持ちが落ち着くし、自律神経にもいいらしくて。この呼吸法にUMIの曲に合わせて、自宅でもできるようにみんなに教えたいなと思っています。言葉で説明しにくいから、ぜひ1回経験して欲しい。UMIのYouTubeにもアップしているので、気になる人はぜひ見てください。この呼吸法はアメリカでは少しずつ広まってるんだけど、みんなにシェアするのがすごく楽しみです」
──香りにもすごくこだわってるそうですね。
「香りはセルフケアにはとても大事なもの。私は世界中を旅することが多いから、時差もあるし、枕が変わっても、自宅で使っているお香を炊けば、ホテルが自分の居場所のように落ち着きます。曲を作る前にもお香を炊くから、どのスタジオでも香りがあればクリエイティビティが溢れてくるし、アメリカのライブでも日本のお香を炊いています。日本のお香は、アメリカのパワフルな香りとはまた違いますよね。繊細で優しい香りでとてもユニーク。パッケージも含めて、全体の体験を考えて作られています。東京滞在中にもお香のお店に行ったんですが、とても楽しかった!」
ルーツのひとつでもある東アジア
──UMIさんにとって日本はルーツのひとつであり、J-POPやK-POPも以前からよく聴いていたとか。UMIさんにとって東アジアとは?
「日本やアジアでUMIを認めてくれるということは、とても嬉しいことだし、私にとってとても重要なことです。小さい頃は、日本に来るたびに英語で話しかけられたし、じっと見られることもありました。私は日本人として見てもらえないんだって思っていたんですね。でも、最近はミックスの人も増えたし、日本のファンのみんなが『海を見るとUMIを思い出すよ』『UMIの歌にインスパイアされた』と言ってくれて。肌の色や国籍は関係なく、同じ人間として受け入れてくれることが嬉しい。それから、小さい頃からJ-POPやK-POPをよく聞いていて、意識はしていないけれど、UMIのメロディや歌詞にもきっと影響を受けてるだろうし、それがUMIの音楽のユニークさに繋がっているんじゃないかなと思います」
──昨年は中国のhomegrown自家种にも出演されましたね。
「ツアーで中国に行ったときに収録しました。中国でのショーは初めてだったけど、すごく面白い体験でした。ショーにきてくれた人は、みんな優しかったし、自由でクリエイティブなエネルギーを持っていて。ミート&グリートでファンのみんなとひとりずつお話したんですけど、世界のどこでもUMIのファンは同じエネルギーを持っているんだと思いました。すごく楽しかった!」
──最後は愛について。UMIさんにとって一番大事な愛は?
「順番はつけられないかな。今のパートナーへの愛、家族への愛、チームへの愛、動物への愛、全てが大切な愛です。最近、フォーカスしているのは、自分への愛かもしれません。愛の始まりは自分で、どんどん周囲に広げていくものなんですよね。誰かに愛を求めるよりも、私がみんなを愛すると自分にも愛が入ってくるんだと、最近、発見しました」
──まずは自分を愛するということなんですね。
「メディテーションで自分自身と対話するとき、たまに自分に対して意地悪な言葉を使っていることがあるんです。なんでだろうと理由を考えたら、そういう時は、自分への愛が十分じゃなかった。以前はそういう状況のとき、誰かにもっと優しくしてほしいとか、他人からの愛を求めていました。でも、自分に自信をつけてあげられるのは、自分しかいないんですよね。それを理解してからは、鏡に写した自分にできるだけ優しい言葉をかけています。それだけでも、だんだんメディテーション中に自分に語りかける言葉が変わってくる。自分への愛はとても大事。愛のスタートはそこかもしれない。みんなも自分を愛してくださいね」
UMI『talking to the wind|トーキング・トゥー・ザ・ウィンド』
価格/¥3,500
国内盤CD発売日/2024年3月20日
各種配信はこちら(https://umijp.lnk.to/whereverur)
日本単独ツアー『talking to the wind』
日程・会場/
東京・4月2日 LIQUIDROOM
大阪・4月5日 UMEDA CLUB QUATTRO
福岡・4月7日 BEAT STATION
価格/
オールスタンディング ¥7,500(税込/別途1ドリンク)※未就学児入場不可
VIP アップグレードチケット ¥10,000(税込)※VIPアップグレードチケットとライブ本公演のチケットは別料金
発売日/2月17日 10:00〜
SPECIAL EVENT 『A Special Meditation Experience with Umi in KYOTO』
日程・会場/4月4日 京都・両足院
価格/¥6,500