ロンドンを魅了したNODA・MAP最新作『正三角関係』の観劇レポ! オンライン配信もスタート
野田秀樹率いるNODA・MAP最新作『正三角関係』(英語タイトル『Love in Action』)が東京、北九州、大阪での上演を経て、3日間限定のロンドン公演で幕を閉じると聞き、現地にて観劇してきました。 野田氏にとってロンドンは、30代で留学していたまさに「第二のホーム」とも言える場所。さらに、大規模な新作を海外で初めて上演するという今回の試みは、30代から続けてきた海外公演のひとつの到達点とも言えるのです。
会場はロンドンのエンジェル地区にあるサドラーズ・ウェルズ劇場 (Sadler’s Wells Theatre)。コンテンポラリーダンスの劇場としても知られており、演劇にダンスを盛り込むNODA・MAPらしい会場のセレクトに観劇前から胸が高まります。劇場へと足を踏み入れるとローカルの観客からロンドン在住の日本人が入り混じり、独特な高揚感が漂っていました。
※以下、舞台内容の詳細を含むため、ご注意ください。
今回の作品のベースとなっているのは、19世紀ロシア文学を代表するドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』。その最高傑作を入口に、「日本のとある場所のとある時代の花火師の家族」、つまり「唐松族(からまつぞく)の兄弟」の新しい物語を創りあげられています。
その「唐松族の兄弟」を演じるのが、松本潤さん、長澤まさみさん、永山瑛太さんの3人。松本潤さんが長男の花火師・富太郎を、永山瑛太さんが次男の物理学者・威蕃を、長澤まさみさんが三男の聖職者・在良を、そしてこの三兄弟の父親・唐松兵頭を竹中直人さんが演じています。
舞台は父親を殺害した疑いで富太郎が裁判にかけられる法廷劇からスタート。
太平洋戦争、そして長崎への原爆投下という歴史的な背景を交えつつ、時を行き来し、さらに様々な三角関係が絡みながら物語は進んでいきます。
全編日本語での上演なので、オペラのように掲示板に英語字幕が映し出されており、現地の観客も楽しめる仕様に。NODA・MAPの特徴ともいえる軽快なダジャレや韻を踏んだ「言葉遊び」の英訳への期待を胸に掲示板へ目をやると、「軽井沢」は「リゾート」、「石川さゆり」は「アリシア・キーズ」と、英語の言い回しに少しクスッとしてしまう場面もあり、ロンドン公演ならではの醍醐味を感じました。
舞台の小道具もとてもシンプルで、主に使われたのはテープや布、ボールなど。演者たちがテープをビーっと音を立てて引きながらプロレスのリングを作りあげたり、威蕃が夢中で計算する量子の動きをアンサンブルがダンスとともにカラフルなボールで表現したりと、観る側の想像力を刺激します。特にNODA・MAPの十八番ともいえる布使いは秀逸で、布でできた列車や舞台転換の巧みさが光る演出です。
そして物語は、父親殺しを巡る裁判が進むとともに戦争も激化し、原爆投下の悲劇でフィナーレを迎えます。歴史的な悲劇をストーリーに取り入れているため、日本人であれば予想ができる展開ですが、コミカルなスタートからは想像できないずしんと重いラスト。序盤は笑いに包まれていた会場も、富太郎のモノローグでは一瞬たりとも息をつけない張り詰めた空気に包まれます。
父親殺しというサスペンス系な物語かと思いきや、劇中の印象的な言い回し「空を見上げる」をメタファーに展開していき、過去のものだけではないではない現代社会にも通じる深い社会的メッセージを投げかけています。カーテンコールでは、スタンディングオベーションが起き、キャストたちは日本風に正座でお辞儀をして物語を締めくくった。
観賞後に野田秀樹さんが散りばめたアナグラムやメタファーといった「言葉遊び」をかき集めて、ゆっくりとストーリーを咀嚼していく。そんな野田作品デビュー戦の私のレポートです。
そして、舞台はロンドン公演にて幕を閉じたのですが、東京公演収録映像の配信がスタートし来年1月14日までStreaming+、PIA LIVE STREAM、Stagecrowdで配信されます。Stagecrowdでのみ、日本だけではなく、北米、南米、ヨーロッパなどからも視聴可能で、英語と中国語の字幕に対応。
日本のみならずロンドンも沸かせた作品を、ぜひこの機会にチェックしてみてください!
NODA・MAP第27回公演『正三角関係』
配信期間/2025年1月14日(火) 23:59まで
チケット販売期間:2025年1月14日(火) 18:00まで
※PPV(ペイパービュー)形式。配信期間中、1回のチケット購入でひとり1回視聴可能。
※再生開始から4時間以内の視聴制限あり。
配信エリア/日本、北米(アメリカ・カナダ・メキシコ)、南米(ブラジル・ペルー)、ヨーロッパ(イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)、アジア(韓国・台湾・香港・マカオ・シンガポール・マレーシア・タイ)、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)
※海外からの視聴は、ソニー・ミュージックソリューションズ(Stagecrowd)限定。
収録日・場所/2024年8月3日 東京・東京芸術劇場プレイハウス
詳細は公式サイトをご確認ください。
NODA・MAP公式インスタグラム/@nodamap_official