英ロンドンで開催中! 「Gucci」の世界巡回展“Gucci Cosmos”へ | Numero TOKYO
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英ロンドンで開催中! 「Gucci」の世界巡回展“Gucci Cosmos”へ


2023年4月の上海での開催を皮切りに、世界の都市を巡回するイマーシブな世界巡回展「Gucci Cosmos(グッチ コスモス)」が10月にロンドンに上陸したと聞きつけ、早速休日に行ってきました! 会場は『マイ・フェア・レディ』のロケ地としても有名なコヴェント・ガーデン近くに位置する180 studio。注目度の高いファッションやアート、カルチャーなどのイベントを開催しているクリエイティブ・スペースで、今回で行くのは2回目です。

英国人アーティストであるエズ・デヴリンが企画とデザインを手がけ、イタリアのファッション研究家であり評論家のマリア・ ルイーザ・フリーザがキュレーションを行った複数のスペースで構成。102年にわたるグッチの歴史の中でも特にアイコニックかつ貴重なアーカイブを展示し、過去・現在・未来を巡る遊び心のあふれた旅を体験することができます。

グッチオ・グッチの故郷であり、今から102年前に彼が伝統的な職人技によるラゲージ製造のアトリエを創設した地、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・ フィオーレ大聖堂のシンボルをロンドンのストリートに再現。
グッチオ・グッチの故郷であり、今から102年前に彼が伝統的な職人技によるラゲージ製造のアトリエを創設した地、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・ フィオーレ大聖堂のシンボルをロンドンのストリートに再現。

鏡像のように配置されたドームが目印の入り口を抜けると、まるでホテルのようなロビーと最初の部屋へとつながるエレベーターが。

ホテルの1階から最上階を昇降するために かかる時間と同じ7分間の音と光の旅を体験できる
ホテルの1階から最上階を昇降するために かかる時間と同じ7分間の音と光の旅を体験できる

これはティーンエイジャーだったグッチオ・グッチが働いていたロンドンの高級ホテルのザ・サヴォイをオマージュした空間で、ホテルのシンボルでもある真っ赤なエレベーター風のスペースを通って最初の部屋へと向かいます。ちなみに現在のザ・サヴォイは改修されており、かなりモダンなデザイン。会場の180 studioから近いというのもなんだかロマンチックですよね。

そして最初の部屋を繋げる3つのドアもザ・サヴォイの有名なエントランスの回転ドア仕様。このドアとエレベーターで宿泊客のラゲージを運んだ経験から、高級ラゲージを代名詞にしたいという志しを抱いたそう。

ここで舞台オタクの小言ですが、この会場のストーリー感がとても舞台デザイナーのエズ・デヴリンっぽい! と興奮してしまいました。入り口から彼女の魔法にかけられて、グッチのひらめく瞬間を追体験できる感じが堪らなかったです…♡

さてさて話を戻しまして、ここからは没入体験を楽しめる8つのスペースの見所を紹介していきます。

「Portals」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

回転ドアと抜けると真っ白でクリーンなインスタレーションが現れます。回転するディスプレイ台には、カルチャーアイコンの姿を写し出したジオラマと、グッチを代表する名作ラゲージの数々が。1920年代後半にグッチオ・グッチが初期にデザインしたシグネチャースーツケースや、GGパターンプリントを施したキャンバスのトラベルケース、アレッサンドロ・ミケーレ期のディズニー キャラクターがプリントされたラゲージなどがメリーゴーランドのように回り、ラゲージのタイムレスな価値を感じることができます。次の展示ルームに向かう途中には、ブランドの始まりから現在のクリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノに至るまでの変遷が展示されているスペースも。

「Zoetrope」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

この部屋でフィーチャーしているのは、グッチが長年インスピレーションを得てきた乗馬の世界との関係性。疾走する馬たちのリズミカルなサウンドスケープとビートに乗せたナレーションが臨場感溢れています。アルド・グッチが1953年にローファーに取り入れたホースビットや、鞍を馬に固定するためのストラップから着想を得たウェブ ストライプ、センシュアルなデザインとしての可能性を広げたアレッサンドロ・ミケーレによるホースビットが配されたブラックレザーのコルセットまで立ち並ぶ。

「Eden」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

植物と昆虫のイメージを繊細なタッチで描かれたフローラの生命力を、まるでイマジナリーガーデンのような空間で表現。オリジナルのフローラは、1966年にグッチから依頼を受けた伊イラストレーターのヴィットリオ・アッコルネロ・デ・ テスタが、モナコのグレース大公妃のシルクカーフのために描いたもの。その後も現在に至るまで、フローラがクリエイティビティに影響を与え続けてきたことを象徴しています。

「Two」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

グッチのメンズ&ウィメンズスーツをループ映像で映し出すキャンパスは、まるで守護神かのように横たわる10メートル超えの白い巨像。これらはブランドのジェンダーフリュイドなファッションに対する先駆的な信念と、社会への意識や行動を変革する力を象徴しています。エズ・デヴリンによる自作の詩の朗読が流れる展示ルーム内には無限を暗示する空の風景が投影され、私たちの身体は多種多様かつ流動的であるというメッセージにとハッとさせられます。

「Archivio」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

保管庫を意味するこの部屋に一歩踏み入れると、バッグ好きとしては堪らない空間が広がっています。シーリングのミラーと弧を描くようなキャビネットには、「グッチ バンブー 1947」や「ジャッキー 1961」、「グッチ ホースビット 1955」などのコンテンポラリーでありながらクラシックさも兼ね備えたハンドバッグをはじめ、グッチの歴史を彩ってきた貴重なアーカイブハンドバッグがずらり。またキャビネットの引き出しには、イラストの複製画や職人のスケッチブックや過去の広告キャンペーンなどがセットされ、アーカイブの探索を心ゆくまで楽しめます。

「Cabinet of Wonders」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

暗闇にポツンと浮かび上がるのは高さ3メートルの艶やかなキューブ型の巨大キャビネット。人間の呼吸音にのって、まるで生き物のように多数の引き出しが自動的に開閉し、好奇心を刺激するグッチのコレクションが出現します。さらにトム・フォード時代のエレキギターや、ハリー・スタイルズがコーチェラ・フェスティバル 2022のステージで着用したカスタムスーツなどの貴重なピースも。

「Carousel」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

1970年代から現代までのグッチのウェアをまとった25体のマネキンが、ベルトコンベアに乗ってぐるりと回る様子はまるで舞踏会のよう。ミシンの音やアトリエの様子を思わせるサウンドが流れるなか、ランウェイルックを年代順ではなくカラーとインスピレーションで配列されています。時代をミックスすることで新たなストーリーが生まれ、グッチが自らの伝統と現代の間で常にクリエイティブな対話を続けていることが読みとれます。

「Gucci Ancora」

Courtesy of Gucci
Courtesy of Gucci

最後の展示部屋は、、グッチの新クリエイティブ・ディレクターであるサバト・デ・サルノのデビューコレクションと、そのランウェイショーからのインスピレーションを体現したインスタレーション。新たなシグネチャーカラーであるレッド一色で装飾されたこの空間は、半透明の立方体の中にセットされたスクリーンに個人的な想い出やフレーズなどの断片が映し出され、同時にエズ・ デヴリンとサバト・デ・サルノの声によるウィットに富んだビデオとサウンドが頭の中に押し寄せてきます。壁にはビジターが動かして自分だけの詩を創作することができるカードも。

時系列をミックスし、それぞれのテーマに沿ったアーカイブを展示することで過去と現在のデザインへの落とし込みの違いを感じつつも、歴史と一本筋の通ったスピリットを知れる体験型のアプローチ。グッチの持つ切り札の多さに改めて圧倒されました。

展覧会への入場は事前予約制で、180 Studiosの公式サイトよりチケット購入が可能。今年の12月31日まで開催なので、イギリスにお住まいの方や旅行のご予定のある方は是非チェックしてみてください!

「GUCCI COSMOS」

会期/2023年10月11日〜12月31日
会場/180 Studios
住所/180 Strand, Temple, London WC2R 1EA
料金/18ポンド ※事前予約・チケット購入が必要
公式サイト/www.gucci.com/uk/en_gb/st/capsule/cosmos-exhibition

グッチ クライアントサービス 
TEL/0120-99-2177
URL/www.gucci.com

Text:Shiori Kajiyama

Profile

梶山史織Shiori Kajiyamaファッション・エディター。服飾専門学校卒業後、ニューヨーク留学を経て2018年『Numero TOKYO』に参加。田中杏子に師事し、主にファッションページを担当。ダンスとミュージカル、お笑いなどのエンターテイメント全般への愛が深め。最近は高校生ぶりにKpopブームが再熱し、推しの動画を見漁るのが毎晩のルーティーン。韓国語勉強もひっそりとスタート。最年少スタッフとして、一人前のエディターを目指すべく、先輩の背中を見て日々猛進中。永遠のミューズは「オーシャンズ8」のケイト・ブランシェット。

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