“書を求めよ、町へ出よう” | Numero TOKYO
Culture / Editor's Post

“書を求めよ、町へ出よう”

新しい読書体験をしました。どこがどう新しいのか、どこから説明すればいいのか迷ってしまうのですが、形状から触れてみます。まず……その本は綴じられていません。1枚1枚バラバラの状態で、ビニールに封入されています。なので「ヴァイナル(=ビニール)文學選書」というシリーズ名が付いています。サイズはA5判。

「ヴァイナル文學選書」は街をテーマにしています。第一弾は「新宿歌舞伎町篇」。著者は4名おり、4作品が同時刊行されました。それぞれが新宿歌舞伎町をテーマに短い小説を書き下ろしています。

著者は石丸元章、海猫沢めろん、漢 a.k.a. GAMI、菊地成孔。みなさん、新宿にゆかりのある方々です。漢 a.k.a. GAMI、菊地成孔、両氏においては貴重な書き下ろし小説が読めることを声を大にして言いたい。そして、写真は俳優でもある永山竜弥。

いろいろと注目すべきポイントがありすぎて多少混乱してしまうのですが、もっとも重要なことは、このシリーズを手に取るにはテーマとなっている街、今回は新宿(にある下記の取扱店)に行かなければなりません。つまり、自宅にいてポチることができません。遠方の方は、行くことのできる友人に頼む人もいるのだとか。

そうやって手に入れたその街が舞台の小説を読む、これはかなり新鮮です。まったく現実感のないストーリーでも、街を知っていることによってどこか手触りを感じるようでドキッとしてしまいます。街への愛着も湧きそうです。第二弾も予定しているとのこと、どこの街でしょうか。個人的にはここ20年で激しく変化した中目黒が読んでみたい。次も楽しみです。

「ヴァイナル文學選書」シリーズ
第一弾「新宿歌舞伎町篇」

著者/石丸元章、海猫沢めろん、漢 a.k.a.GAMI、菊地成孔
価格/各1,000円
発行/東京キララ社
URL/http://tokyokirara.com/

販売店はこちら↓(売り切れの場合もあります)

ブックユニオン新宿店〈新宿区新宿3-34-1 ジュラクツインBビル2F〉
BERG(ベルク)〈新宿区新宿3-38-1 ルミネエストB1〉
鎖カフェ〈新宿区大久保3-13-107〉
3rd ROOM〈新宿区歌舞伎町1-1-5 パレスビル4F〉
模索舎〈新宿区新宿2ー4ー9〉

Profile

伊藤さや香Sayaka Ito シニア・エディター。フランス文化への憧れがすぎて、慶應義塾大学文学部仏文学専攻を卒業。ファッション誌などのライターを経て、フランス版『Numero』の日本語訳小冊子の編集に携わる。その後『Numero TOKYO』に創刊メンバーとして参加。主に、映画、本、アートの連載&企画を担当。最近は、貴重なレトロスペクティヴ上映などを通して自分を省みがち。2児の母。

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