瀬戸康史インタビュー「自分なりの表現の幅を広げていきたい」 | Numero TOKYO
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瀬戸康史インタビュー「自分なりの表現の幅を広げていきたい」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。瀬戸康史のビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2019年6月号掲載)

——人生のターニングポイントは? 「俳優になったことですね。もともと獣医を目指していたところ、親に勧められて芸能界に入ったわけですが。特に最初は明るい未来を感じたわけではなく、親の覚悟も知って頑張ろう! とこの道を選んだ。選ばないという選択肢もあったのに」 ——芸能界に入りたい子どもを親が引き止めるというのはよく聞く話ですが、反対ですね。18歳で俳優デビュー。実際に俳優という仕事を経験して、どう思いましたか。 「自分ではない何かになる面白さは感じました。憑依するというか。でも、そのことより、当時はホームシックで、寂しさ、心細さのほうが大きかったかもしれないです。福岡の田舎町出身で東京なんて来たことなかったし、周りは大人ばかり。いつ帰ろうかなぁってずっと思っていました」

——覚悟が決まったのはいつ?

「一度決めたのに、帰るって恥ずかしいじゃないですか。親や友達に愚痴ろうと思ってよく電話したけど、『全然大丈夫ばい!』って強がってしまい、本音を吐けずに一人で泣いていました。同時期に『おはスタ』でご一緒した山寺宏一さんと南海キャンディーズの山里さんが僕の面倒をすごくよく見てくれたんです。僕が出ているテレビを見たり、舞台にも来てくださったりして。山寺さんは『一緒にやっていることを誇りに思うよ』って僕のモチベーションを上げてくれました。そんな二人の言葉が支えでしたね。いつしか慣れて、俳優の仕事が楽しくなってきたのは、20歳すぎてからです」

——今はドラマ、映画、舞台と大活躍で、良い作品にも恵まれて。俳優
として深くなった実感はありますか。


「久しぶりに会った人に『成長したね』
と言われることはあるけど、自分で
はよくわからないです。10年前と比
べたら成長したと思うけど、毎年ち
ゃんと成長できているかと聞かれる
と、そうでもないかもしれない」

——現在、月9ドラマの『パーフェク
トワールド』で、ヒロイン川奈つぐみ
の高校の同級生で主人公・鮎川樹の
恋敵であるアプリ会社社長の是枝洋
貴を演じていますね。洋貴はどんな
男性ですか。


「紳士だと思います。引き際をわかっ
ているというか。わかっているけれど
も、自分の本能や好きという気持ち
に嘘をつけない部分もあり、演じて
いて実にむずがゆいです」

——つぐみに告白するのかしないの
か。見ているとじれったいです。


「洋貴はつらいと思いますよ。目の前で
樹を好きと言われて…。演じていると
彼に同情してしまいますね。撮影中も
イライラして自分で自分を癒やす(笑)」

——松坂桃李さんとは同い年で初共
演ですね。どんな方ですか。


「まだ絡むシーンはないのですが、先
日、初めてバラエティ番組で一緒にな
りました。寡黙なイメージでしたが、
よくしゃべる方ですね。テンションが
高いから、気が合いそうです」

——ほかにも88年生まれは東出昌大
さん、窪田正孝さん、三浦翔平さん
をはじめ、注目の俳優さんが多いで
すね。ライバル心はありますか。

「昔はありましたよ。10代でみんな同
じ時期に出てきて、動向が気になりましたね。でも今はもうないですね。みんなのことを尊敬しているし、一緒にやりたいなという気持ち」

——映画やドラマを作品として観れますか?

「うーん、確かに邦画はちょっと違う見方をしているかもしれないです。洋画の『アベンジャーズ』みたいに、これぞエンタメとして楽しむのとは違うかも」

——今回のドラマは等身大の役ですが、舞台では『マーキュリー・ファー』のダレンのようにエキセントリックな役も演じられていますね。どちらが演じやすいですか。

「日常のほうですね。例えば『マーキュリー・ファー』は世界観がカオス。ドラッグが蔓延していて、そのドラッグすら架空のもの…と、自分の中で想像力を働らかせて、その上で演出家や共演者たちと、これはどういう場所か、自分たちはどう育ってきたのかなどを共有しなければいけないから大変でした。自分では役を引きずらないタイプだと思っていたけど、あのときはみるみる痩せていった。役に影響を受けるって、あるんですね。演出の白井晃さんにはとてもしごかれました。『もう帰れ!』『帰りません! やります!』と完璧に体育会系。白井さんの手に見えない竹刀が握られていた気がします(笑)。愛のある叱咤激励でした。『芝居だけど芝居をするな』と言われたことが、今もずっと頭に残っています」

——お兄さん役は高橋一生さんでしたが、助けてくださいましたか?

「一生さんは『大丈夫、大丈夫!』ってずっと背中をさすってくれました。優しかったです。ほんと、皆さんに助けてもらいました。あの時みたいに一人で乗り越えるのは無理! というときは、周りの方々に助けてもらったほうがいいですね。とにかく聞いてみるだけでもいい。一人で悩んでいても時間の無駄だから」

——最近、プライベートでの変化はありますか。

「食生活。体に良くないものは、できるだけ食べないようにしています。もう30歳ですからね」

——健康のために毎日食べているものは何ですか?

「バナナです。健康のためというより、ただ好きだからかも」

——この先、目指しているものは?

「お芝居を軸に、絵を描くことなど、自分なりの多種多様な表現の幅を広げていきたいです。いま上野の国立科学博物館で開催されている『大哺乳類展2 みんなの生き残り作戦』では音声ガイドナビゲーターを務めています。そこで、僕が描いた哺乳類の絵を展示していただいてます。自作を飾ってもらったのは初めてなので、うれしいです」

——哺乳類で一番のお気に入りは?

「メガネザルとイッカク。メガネザルはすごい特徴を持つ動物です。首が180度近く回るのはフクロウみたいだし、手は吸盤みたいになっていてカエルっぽい。しっぽはネズミみたい。猿といっても、いろんな動物の特徴を持っていて、とても興味深いです。その上、あんなに可愛いし!」

——一人で動物園に行くことは?

「いや、動物園は何年も行っていないですね。第一、一人で行っていたら寂しくないですか?

——観察するという目的があれば大丈夫では?

「うーん、僕はまだその境地に至っていないです(笑)」

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Photos: Akihito Igarashi Styling: Chikage Okajima Hair & Makeup: Yuriko Momochi Interview&Text: Maki Miura Edit: Saki Shibata

Profile

瀬戸康史Koji Seto 1988年5月18日生まれ。2005年デビュー。ドラマや映画、舞台などで幅広く活躍。最近では、平成30年(第73回)文化庁芸術祭「テレビ・ドラマ部門」で大賞を受賞した、 NHK『透明なゆりかご』や、朝の連続テレビ小説『まんぷく』などに出演。今後はKTV『パーフェクトワールド』で主人公の恋敵となる是枝洋貴役を、NHK『デジタルタトゥー』では 人気ユーチューバーのタイガ役を演じる。

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