戸田恵梨香にインタビュー「年を取ったなあって実感しました(笑)」
自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。戸田恵梨香のビフォー&アフター。
今年で29歳。元気で愛らしい少女のイメージから、すっかり大人の女性になり、振り幅の広さで見る者を魅了する、戸田恵梨香。彼女の出演ドラマは続編が作られやすいという噂があり、これまで『デスノート』『SPEC』『LIAR GAME』などに続編が生まれてきた。現在放送中の『コード・ブルー 〜ドクターヘリ緊急救命〜』もサードシーズンというから、やはり何かを持っているに違いない。
──7年ぶりの再結集ですね。
「昔の『コード・ブルー』のダイジェスト映像を見たら、自分の声の高さに驚きました(笑)。この7年の間、山下智久さん、新垣結衣さん、比嘉愛未さん、浅利陽介さんと“コード・ブルー会”を開いて交流していたので、時間が空いた自覚がなくて、安心して現場に入れました」
──久しぶりの現場の感想は?
「7年たったと実感したのは、ヘリのドアが開いてパッと降り、ぐるっとヘリの周りを回って走っていくシーン。『緊張感を持って』と言われて必死に走ったけれど、自分にGがかかって膝関節にくる(笑)。年を取ったなあって実感しました(笑)」
──これまでの撮影で、思い出深いシーンは?
「ファーストシーズン最終話のトンネルでのトリアージ(治療や搬送の優先順位を決める識別救急)のシーンは大変でした。建設中のトンネルを封鎖しての撮影で、怒濤のような3日間を過ごしました。オペを終えて、皆でトンネルから出てくるシーンでは、本当に朝になっていて。『ああ、明けたねえ』って、感慨深かったです」
──仕事での転機はいつでしたか。
「『コード・ブルー』セカンドシーズンを経て、自分の中で役作りが見えるようになり、そんなとき『SPEC』に出合い、大きな転機となりました。それまで偏っていたものが解かれて、自由になれた気がします」
──なぜ自由になれたのですか。
「戸田恵梨香のイメージを覆して、やりたかったことができたから。それまでは“何かに向かって一生懸命だけどうまくいかない女の子”というイメージの役が多かったんです。それが『SPEC』をきっかけにコメディだったり、変わり者の役が多く来るようになったんです。22歳で、一気に女優業が楽しくなりました。その後、30代に向けてどうするのかを試行錯誤し続けて、今またさらに肩の力が抜けた感じです」
──仕事を選ぶのは自分で?
「脚本を読んで、最終的には自分で選びます。変わり者ばかり続くと、次はもっとナチュラルな役がやりたくなって探してみたり。でも今は役云々ではなく、単純に面白い作品に携わりたいと考えるようになりました」
──4月クールのドラマ『リバース』も一般の地味な女の子役でしたね。役作りを考えるのは好きですか。
「はい。役の人物像は、最初に台本を読んだときにある程度見つけるようにしています。作品を選ぶ上で、自分の顔、声、年齢からあまりにかけ離れていると、説得力がなくなるというか。なので、基本、自分がやって違和感がないものを選びます」
──プライベートでの転機は?
「以前は2、3本、作品を掛け持ちすることも多くて、ゆっくりお休みを取れなかったんです。でも役にも自分自身にも向き合えないなあと思い、20歳から1年に1カ月はまとまった休みを取るようにしました。1カ月休んでみたら、役のことはよく考えていたけど、自分のことは置いてきぼりだったなあって実感して。空っぽさに気づいて、すごく焦り、自分がやりたいことや何か夢中になれるもの、自分の肥やしを見つけていこうと。映画や本、そして21歳から始めたダイビングは今や欠かせない存在です」
──映画はどのくらいの頻度で見ますか。
「休みの日は1日1本見ますが、現場に入るとなかなか…。映画を見ると、空っぽになったものが満たされて、ストックが生まれます」
──どんな映画が好き? 出演してみたい映画は?
「自分が演じるという目では見ないかな。邦画より洋画が多く、アメリカのA級大作より、いわゆるB級、C級映画のほうが好きです。大作とかを見ていると、たまに流行る要素を全部詰め込んだな…と、作り手の意図が見えてしまって」
──作り手がやりたいことを純粋に表現している映画が好み?
「そうですね。流行る要素を詰め込んだ映画って、本当にエンターテインメントになっているのかな?と。最近は制限が多すぎるからか、登場人物も比較的いい子が多くて、みんなヒーローみたい。なんだか個性のなさを感じるんです。個性といいながらも、結局同じだったり。それよりも、だらしないダメな人間のほうが魅力的に感じます。日常でも作品でもそういう人に惹かれるから、もし歪んでいる役柄の話が来たら、ぜひ演じたいです」
──確かに、枠からはみ出ない個性が多いかもしれない。個性って、何だと思いますか。
「自分らしさ? 何を持って自分らしさなのか、定義がすごく難しいですが。ちゃんと自分が見えている人なのかな」
──ダイビングはどのように?
「石垣島で初めて潜ったのですが、命に関わることなので、最初の数年は同じ海にしか行けなかったんです。年に1回、5、6年くらいは石垣島に行っていました。最近はグアムに行きました。次はパラオやフィリピンに行きたいなと思っています」
──海の中の魅力って?
「豊かになれる! 何でも良くなるというか、天国みたいなんです。魚たちが自由に泳いでいて、そこには生活があって。人間とは別の生き物の世界を垣間見られるのが、すごく豊かだなと。間近で見ることで、優しくなれます。力が抜けますね。心身ともにデトックスする感じです」
──素敵! 体力はバッチリ? 鍛えていらっしゃるんですよね。
「はい、昨年からようやく(笑)。『SPEC』のときに『ガリガリの女が餃子を食べている』とト書きにあって、筋トレするのをやめたんです。ふくらはぎに筋肉があったら違うなと思って。それまでは運動が大好きだったんですけど、運動しないことの楽さを知ってしまったら、そこから5年ぐらいサボってしまい…。ようやく昨年再開したのは健康のためです(笑)。美容ではなくて、健康のために運動をしなきゃと思い始めて。心身ともにタフじゃないと女優業はできないですしね。これからもバリバリ運動して、仕事して、潜りに行きます!」
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Photo:Masato Moriyama
Styling:Akira Maruyama
Hair & Makeup:Haruka Tazaki
Interview & Text:Maki Miura
Edit:Saori Asaka