田辺誠一の才能「僕は『画伯のおじさん』(笑)」 | Numero TOKYO
Interview / Post

田辺誠一の才能
「僕は『画伯のおじさん』(笑)」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出会い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。田辺誠一のビフォー&アフター。

#102 きっかけ seiichi tanabe
#102 きっかけ seiichi tanabe

──大人の土ドラ『とげ 小市民 倉永晴之の逆襲』では、市役所の市民相談室主査(係長)倉永として、市民からひっきりなしに寄せられる苦情や役所内でのいざこざに奮闘し、不条理に立ち向かっていますね。倉永とはどんな性格の男ですか。

「真面目で一途、善良な普通の市民です。志を持って役所に入り、自分のできることをやろうとしただけなのに、市民と役所の板挟みになり、戦わざるを得ない立場になってしまいます。なるべくなら戦いたくない、穏便に生きていきたいのに、巻き込まれてしまうわけです」

──田辺さんご自身は普段、巻き込まれるタイプ?

「全くないです。巻き込まれたくないから、人と距離をとって生きています(笑)。そのあたりは意外に敏感で、いざというときは、話しかけるな、独りにしてオーラをパッと出して回避する。倉永とは真逆です。反対に似ている点は、ちょっとおどおどした小市民であるところ(笑)」

──自分のせいじゃないのにあんなに責められ、負担になりませんか。

「もちろんストレスですよ。でもこのドラマでは、あえてストレスになることをできる限り受け止めて、蓄積するようにしています。どこかで大きく爆発できるように。撮影が始まってすぐ、激怒するシーンでは声が震えてしまいました。でも一回怒鳴ると慣れるみたいで、少しずつ強く主張できるようになっています」

──キレる演技で工夫していることはありますか。

「ずっと怒鳴っていたら、見る方が受け取りづらいと思うので、緩急をつけるようにしています。また、ぶつけるなりの気持ち、本心が出せるように意識しています。このドラマの根底に流れるテーマとしては、相手が間違ったことをしても、その人の全人格を否定しない。自分の正義を押しつけない。あくまで相手を尊重したうえで、ある部分に対して意見を言わせてもらう、自分の気持ちをぶつけるということだと思います」

──田辺さんがこの仕事に入ったきっかけを教えてください。

「18歳で『メンズノンノ』のモデルになったこと。高校生の頃はボート部に所属し、夜は0時に帰宅、休みもない生活でした。高3の1学期にインターハイの予選で負けて引退し、初めて高校生活が花開いた。しかし先立つお金がなくて。バイトを探していたとき、隣の席の友達が『メンズノンノ』を持っていて、第2回モデル募集を知り、応募したわけです。条件は身長180センチ以上、都内近郊在住の二つだけ。それで幸運にも受かったのです」

──体育会系からファッションへ。戸惑いはありませんでしたか。

「あまり考えていませんでしたね。一年くらいは仕事がなくて。やっと呼ばれたら、靴の撮影。顔は出ず、足元だけです。ところが、この靴を履いている人はどういう人で、どんな気分で、今どういう状況なのかを写真で表すというのがすごく面白かったんです。その後も巻末のプレゼントページでリュックを持った写真が小さく載る程度でした。でも翌年くらいから徐々にファッションページにも呼ばれるようになり、表紙もやらせていただいて。洋服が好きになり、ファッション写真に興味が出ました。『メンズノンノ』は外で何かをしているシーンを撮るシチュエーション写真が多くて、芝居に通じるものがありました」

俳優としての分岐点は蜷川幸雄演出の舞台

Photos:Gen Saito
Styling:Kan Nakagawara
Hair & Makeup:Akira Matsuoka
Interview & Text:Maki Miura
Edit:Saori Asaka

Profile

田辺誠一(Seiichi Tanabe)1969年生まれ、東京都出身。87年、『MEN'S NON-NO』の専属モデルに。92年に役者デビュー以降、ドラマ、映画、舞台に多数出演。またデジタルアーティストとして97、98年通産省マルチメディアグランプリで各賞を受賞、映画監督として99年ベルリン映画祭正式招待、現在もイラストレーターとして手がけたキャラクターが大人気になるなど、多彩な活躍をみせる。主演ドラマ『とげ 小市民 倉永晴之の逆襲』(CX系 毎週土曜23:40〜)が放送中。

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