女優、仲間由紀恵の転機
「興味を広げてくれたのは『TRICK』」
自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出会い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。仲間由紀恵のビフォー&アフター。
大河ドラマの主演を務めた正統派女優であり、ときに最高のコメディエンヌでもある役者、仲間由紀恵。さらにはNHK 紅白歌合戦の司会を4回務めるなど、司会業にも定評がある。今さまざまな顔をみせてくれる彼女が語る、人生の転機とは?
──仲間さんは高校生の頃から女優として活躍されていますが、ターニングポイントになった作品は?
「最初に自分の興味を広げてもらったのは『TRICK』だと思います。堤幸彦監督が独特の世界観の持ち主で、作品を作っているときも、まるで遊んでいるみたいなんです。その場のひらめきで『これやって』は日常茶飯事。撮影セットも、突然『ここにこんな看板を作って』と新たな要素が加わったり。現場の思いつきでどんどん変化するんです。その理由は『なんとなく面白いから』(笑)。一見いい加減にも思えるのですが、実際に映像が仕上がると、その思いつきがいいスパイスになったりするから不思議なものです」
──それは刺激的な現場でしたね。心持ちも変わりましたか。
「それまでは、仕事は真面目にきちんとやらなければいけないと思っていましたが、そんな硬い感覚を緩くほぐしてくれました。『大人のくせに!』と衝撃的でしたが(笑)、こんなに一生懸命、遊んでいる現場は初めてで、カルチャーショックでしたね。仕事って、楽しんでいいものなのだと。演技に関しても、それまでは自分の中で感情を密に充満させてから出す、というスタイルでしたが、もっと楽な感じでいいと教わった気がします」
──反対に、臨機応変さを求められたのでは?
「確かに、何でも対応しなければならない現場でしたね。堤監督ほどメチャクチャな要求をする監督は他にいません。最強です(笑)。『無理無理!』ということがいっぱいありましたが、それでも求められれば役者はやるしかない。例えば、現場でいきなり“この人のギャグをやってみて!”と、私の世代ではあまり知らない方のギャグなどを監督が真似て見せるのですが、なにせ元ネタを知らないので、監督の真似の真似をするしかない(笑)。花菱アチャコさんの『無茶苦茶でごじゃりまする』も、そんな無茶ぶりで生まれました。阿部(寛)さんは、ゆーとぴあさんのゴムパッチンをやらされていましたし(笑)。なぜなのか考えてみても、意味はわからない。そんなことが毎日、繰り返されていました(笑)」
Photos:Takeshi Shinto
Styling:Natsuko Kawabe
Hair&Makeup:Hiroshi Tanaka
Interview&Text:Maki Miura
Edit:Saori Asaka