吉田羊インタビュー「結婚相手を求めるより、出会ったときに相手に愛される自分でありたい」 | Numero TOKYO
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吉田羊インタビュー「結婚相手を求めるより、出会ったときに相手に愛される自分でありたい」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。吉田羊のビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年11月号掲載)

──最近の身近な変化を教えてください。

「1年ほど前にピラティスを始めました。私は石田ゆり子さんが大好きで、ゆり子さんになりたい人生(笑)。とにかくやっていることを真似てみるんです。好きな本やブランドを聞いたり、猫を飼おうかなと思ってみたり。いろいろと実践して一番大きかったのがピラティスです。体幹を鍛えるストレッチをしながら、体の歪みや脾臓、骨と筋肉を正しい位置に戻す。週1回のピラティスを始めて、普段の生活での体の歪みと心と体のつながりを感じるようになりました。またピラティスをやった後はスマホ首やブレがちだった歩き方が整い、心が穏やかになってつまらないことが気にならなくなる。体の形も人間らしくなりました。自分の体をコントロールすることが自信につながり、自分の人生を生きている実感があります」

──俳優の仕事は他人の人生を演じること。そのため自分の人生が迷子になるとおっしゃる俳優さんもいますね。

「感情において、役と自分の境界線が曖昧になることは確かにあります。ただ私自身、己の実態が掴めていなくて、俳優を20年以上やってきたということだけは確かだけど、それ以外はぼんやりしていて。むしろ、他人を演じることで自分を再発見したり、生きている実感を持てたりして、この仕事に救われている部分は大きいです。そして俳優とは、何者にも見えず、何者にも見えるべき。その為に私個人は無色でありたいと願っています。更に体力と気力。日々の生活を整え、内外両面のケアを心がけています。例えば、仕事で大勢の人に会うので、オフではひとりで家にこもる。私、基本的にひとりが好きなんです。最近家にいるときはよくNetflixで映画やドラマを見ています。先日は『全裸監督』を7話まで一気見して、最終話だけもったいなくてしばらく見なかった(笑)。また自然のパワーを感じながら暮らすのが好きで、洗濯物を干しながら風に吹かれたり、夜は電気を消して月明かりで生活してみたり」

──羊さんの暮らしを中継するリアリティショーが見てみたい。

「何にも起きないですよ(笑)。月明かりでできる観葉植物の影を眺めながら幸せだなあって、些細なことを幸せと思える感覚を忘れないようにしています。一歩外に出れば、ある意味、吉田羊を演じなければいけないので、家の中にいるときだけは何者でもない私のまま」

──吉田羊らしさって、どんなところだと思いますか。

「らしさって他人から見た自分だと思っているのでむしろ教えて欲しい(笑)ただ、いつでも根底に愛を持っていたいと思っています。役でも、素の自分でも。愛は強し、です」

──自分を一言で表すとしたら?

「『無』です。年齢を重ね、やっと自分が客観的に見えるようになってきて、自分にはまだ何も足りていないことに気づいたんです。これは自分自身と向き合い、実を埋めていく作業が急務だと。結婚相手を求めるより、出会ったときに相手に愛される自分でありたい。それもあって、なかなか恋愛ができないわけですが」

──考え方が真面目ですね。家でもダラダラしていなさそう。

「よく言われます。違うんですよ。ともすると不真面目になる自分がいるので、ちゃんとしなきゃって言い聞かせてる。家では超ダメ人間(笑)。お休みの日、朝7時に起きて、石田ゆり子さんと気づいたら2時間メールをやり取り。それからご飯を食べて映画を見て、そのままソファで4時間うとうと。夜起きて、台本を覚えようと思いつつご飯を食べて、また眠くなり、ちょっと横になろうとベッドに入り、気づいたら朝でした。人間はこんなに何もしないでいられるんだと、もうビックリです」

──10月に始まるドラマ『まだ結婚できない男』にご出演。13年前に大人気だった『結婚できない男』の続編とか。阿部寛さん演じる頑固で偏屈な独身男・桑野信介が印象的でした。

「私もまずオファーをいただいた時に、一視聴者として『桑野さん、まだ結婚していないの?』って思いました(笑)。これは恋なのかな?というところで終わったので、その先、二人は結ばれると信じていました。だからちょっと裏切られた気持ち(笑)。続編を作るにあたって、賛否両論だろうとも思いました。それでもあれだけ魅力的な桑野さんが再び恋に落ちるとしたらどんな相手なのか。13年後の彼の周りにはどんな人々がいてどう彼に影響を与えるのかを見たいと思ったし、その世界の一人を演じられるのなら全力で頑張りたいと腹をくくりました」

──羊さん演じる弁護士・吉山まどかはバリバリのキャリアウーマン。どんな女性ですか。

「桑野さんは13年たち、輪をかけて偏屈になっているという触れ込みですが、私は台本を読み、13年前の映像を見直したら、桑野さんは変わっていないなぁと思ったんです。いい意味でブレない。もしそんな彼に気になる女性が出てくるとしたら、似た者同士かもしれないな、とも。まどかの結婚に執着していないところ、一言多いところは桑野さんに似ています。なので、二人のやり取りでこれほど激しくぶつかり合うのは同族嫌悪。背中合わせに共感している部分も多そうです」

──13年たった今、人々の生き方が随分変化している気がしますが。

「そうなんです。当時は、桑野さんって変わり者! という感想が圧倒的に多かったでしょう。平成を経て令和になり、結婚しない人生を選択する人が増えてきました。結婚しない理由の多くは、自由がなくなるから。それって、桑野さんの考え方そのもので、やっと時代が彼に追いついてきたのでは? 彼はいい意味で自分の世界観が完結し、パートナーがいない不都合さを全く感じていない。自分の力で仕事や趣味をきちんと回している人生なんですよ。憧れますし羨ましい。私個人としては、桑野さんには独身を貫きつつ、幸せであることを証明してほしいです。独り身の強さが見たい。でもまどかとして少しずつ、桑野さんとの距離が近づいているのがちょっと複雑(笑)」

──結婚の形もさまざまですし、今やこだわる時代ではないでしょう。

「本当に。私も一度くらい結婚したいと思っていましたが、最近は結婚への執着が日に日に薄れて。お仕事をコンスタントにいただける幸せな環境もありますし、パートナーがいなくても不都合を感じない。年齢を重ねると、生活のペースや世界観が確立されて、好き嫌い、必要不要も自分で取捨選択できる。日に日に結婚が遠のくなぁと自覚しています。阿部さんが四六時中、桑野さんなので、見ていて楽しいですよ。普段のちょっとしたしぐさがまさに桑野さん。この笑い方、見たことがある!って、贅沢な体験をしています」

ドレス¥240,000/Beautiful People(ビューティフルピープル銀座三越 03-6271-0833)ネックレス¥250,000/Tanner’s Indian Arts(ロンハーマン 03-3402-6839) ピアス ブーツ/ともにスタイリスト私物

Photo:Ryu Tamagawa Stylist:Keiko Miyazawa Hair&Makeup:Paku ☆ Chan Interview&Text:Maki Miura Edit:Saki Shibata

Profile

吉田羊Yoh Yoshida 福岡県出身。小劇場での演劇活動を経て、2007年から映像作品を中心に活動。ドラマ『HERO』『コウノドリ』『中学聖日記』『凪のお暇』、映画『ビリギャル』『コーヒーが冷めないうちに』『ハナレイ・ベイ』『七つの会議』など多くの作品に出演。現在、三谷幸喜監督の映画『記憶にございません!』が公開中。10月8日よりスタートするドラマ『まだ結婚できない男』(フジテレビ系にて毎週火曜21時〜)に出演。

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