世の中に渦巻くありとあらゆる“不都合”な出来事や日常の些細な気づき、気になることなどをテーマに、人気クリエイターのパントビスコがゲストを迎えてゆる〜くトークを繰り広げる連載「パントビスコの不都合研究所」。第20回は、8月から舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演する、俳優の平岡祐太が登場!

パントビスコ「今日はお忙しいところ、ありがとうございます! ずっと対談したかったので、夢が叶いました」
平岡祐太「こちらこそ、お会いできてうれしいです」
パントビスコ「平岡さんは、以前僕の個展にも来ていただいて」
平岡祐太「コロナ禍だったと思うのですが、やさ村やさしさんの作品が心に響いて、それからフォローさせていただいたのがきっかけですね」
パントビスコ「この連載がお互いの似顔絵を描き合うことになってまして、絵は普段描かれますか?」
平岡祐太「遊び程度に描くくらいですかね。どこから描こうかな?」
パントビスコ「僕は今回のテーマに沿うかなと思って、こう描かせていただきました」
似顔絵、完成!

(左)平岡祐太が描いたパントビスコ (右)パントビスコが描いた平岡祐太
(平岡祐太)「ちょっと可愛らしさがなくなってしまいました(笑)」
(パントビスコ)「いえ、めっちゃ可愛いです。ありがとうございます。嬉しいな」
「僕は、スクエアのメガネが特徴的ですね」
「はい。それと輪郭で表現してみました」
誰も悪くないのに、なぜか損をした気分に…

「この連載では、身の回りの不都合や不便なことをテーマに、ざっくばらんにお話しできればと思っています。早速ですが、不都合に感じていることってありますか?」
「今思い浮かんだのですが、家がカウンターキッチンなんですね。僕の座席が、入り口から一番遠い席なんですよ。なので、物を運んだりするのに不都合なんです」
「動線が一番長いんですね」
「例えばスプーンを忘れたりすると、すごい長い距離をとって取りに行かないといけなくて」
「家具を設置するときって、そのときはそれでいいと思っても、後から気づくことってありますよね」
「そうなんですよね。空間を作りたかったところが、動線を作ることによって狭まるというか。僕の席が不都合なんです。こんな内容でよかったですか(笑)?」
「はい、完璧です。思った以上に生活感のあることをおっしゃってくださいました」
「でも不都合たくさんあるんじゃないですか。たくさん描かれていますよね」
「僕は思いついたときに書いてるので、割とストレスを発散できてるっていうとこはありますね。でも、人に愚痴ったり、不都合を唱える時は、なるべく代案を出そうとは思っています。じゃないと、嫌なやつで終わっちゃうので」
「どうやったら解決するのかっていう。今回の件に関しては、どうしたら解決するんでしょうか」
「それはもう、完全にカウンターキッチンのどこかに穴を開ける。キッチンをぶち抜いて。そしたらもうお鍋とか使えなくなるけど(笑)」
「スプーンとかを近場に置いとくっていうのはどうなんですかね」
「確かに、家族の使いやすさとかもあるでしょうからね。永遠のテーマですよね。僕も一つ、いいですか。この前ヘアサロンに行ったんですね。前のお客さんが詰まると、順番が前後したり待つこともあるじゃないですか。その日はたまたま車を使っていて、近くの駐車場がめちゃめちゃ高かったんです。10分600円」
「高い!」
「それで、早めに行動したいと思って、10分前に行ったんです。大人しく待合室で待っていたら、スタイリストの方がいらして『ちょっと押しててすみません』とおっしゃって。『全然いいですよ』と言ったんですが、結局前の方が10分押しで終わったんですね。だからトータルで20分待ったんですよ。勝手に待ってるだけなんですけどね」
「早めに行ったのに」
「10分ぐらい待たせることもありますよっていう注意事項もちゃんと書いてあったので、そこには特に文句はないですけど、無駄に早く行って、追加で10分で、合計1200円失った!と思って。だから、すごく時短で行って、10分遅れで車停めてたら1,200円で何買えたかなと」
「あ〜。ランチ1食分になりましたね」
「そうなんですよ。でも誰も責められない。誰も悪くない。お客さんも悪くないし、スタイリストさんも悪くない。誰が悪いか。僕が悪いです。でも誰にも言えないから、不都合です」
「良かれと思ったのに、難しいですよね」
ハリー・ポッターの世界に飛び込んで
「今回、平岡さんが舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演されますが、僕も小さい頃から大好きで、映画も全部見てるんですけども、普段平岡さんが出られてるドラマや映画とはまた違うじゃないですか。SFやファンタジー作品を演じられる上で、何か違いはあるのでしょうか」
「世界観というものがすごく大事で、ハリー・ポッターの世界がもう舞台上で存在しているので、それをいかに精密に表現するかっていうとこですかね。例えば、そこの世界にあってはいけないものがあってはだめとか。ハリー・ポッターが『わしは』というのもおかしいですし、世界観が存在しているので、そこを作り込んでいくことが大事だと思っています」
「原作のJ.K.ローリングさんが脚本を書かれて、それをいろんなスタッフさんがまとめていくんですか?」
「もうすごいんですよ。チームがイギリスからいらっしゃって、ハリーが着ているスーツも、1着2時間ぐらいサイズを計ってくださるんですよ。あと0.5ミリ縮めよう、とか。イギリスならではのテーラーリングで」
「仕立て屋さんってことですもんね」
「全ての衣装が一から作られていたりとか。世界観に圧倒されますよね。そこも演じる上でのヒントになったりします」
「ものすごく細部までこだわられているんでしょうね」
「舞台上に置いてある道具も、すごく傷がついてるものが多くて。イギリスって、古いものこそ価値があるという考えもあると思うので、そういうこだわりがすごいですね。あと、資料がたくさんあります。ハリー・ポッターに関しては、原作、映画、そしてJ.K.ローリングさんのインタビュー記事などにもヒントがたくさんあるので」
「助けられる部分もあるでしょうけど、大変な部分もありますよね。インプットの量とか。」
「そうですね。だから稽古でも、ハリー・ポッターの授業から始まりますね。1900何年にハリー、ポッターはホグワーツに入学したでしょう、とか。歴史の授業みたいなことをしていますね」
「ハリー・ポッターは元々お好きだったんですか」
「好きですけど、この稽古場とかに来ると好きって言えなくなりますね。ガチ勢の方が多いので(笑)。普段だと、オリジナルがないものを演じるときはもう完全に自分で考えるしかないので、そこが結構大きく違いますかね」
『僕はこれがやりたい!』オーディションで掴んだハリー役

「ディレクションする側からすると、求めている役に入ってほしいという想いもあると思いますが、演じる本人からすると、自分を起用された理由というか、自分らしさを出す必要もあると思うんですよね。そのあたりは感じられたりしましたか」
「今回、僕はオーディションだったんですけど、劇場に見に行ったときに、『これだ』と思ったんですよね。『僕はこれがやりたい!』って」
「そうだったんですね! それなら想いも余計強いですよね」
「40歳になったので、新たなチャレンジができる機会は、こういうものじゃないとないなと思って。パントビスコさんはキャラクターたくさんいるじゃないですか。そのバックボーンってめちゃくちゃ考えるんじゃないですか」
「そっちもありますね。すごい考えて、こういうキャラを旅立たせたいなっていうのもあれば、偶発的にたまたま人気があったから書き続けようっていうのもあるし。でも基本的には僕の作るキャラクターっていうのは、自分を代弁してくれるキャラというか。例えば、テーマに分けて、愛情、家族、日常とか、それこそ不都合とか教育とか、いろんなジャンルのネタを考えたときに、今日はこのキャラに言ってもらおうっていうふうにしてますね」
「すごいですよね。物語があるような、ないようなものじゃないですか。いつか、ご自身が書いたものが舞台になるかもしれないですね」
「それはぜひやってみたいですね」
「それこそ、やさ村やさしさんの舞台とかありえそうですよね」
「客席に全員ひざ掛けありとか。コーンポタージュが付いてくるとか。ひたすらやさしい舞台、やってみたいですね。それにしても、今回の舞台楽しみですね」
「上映時間が3時間40分あって、観ているとそんなに長くは感じないんですけど、ロンドンだと6時間やっているんです。2部制でチケットが分かれているんですよ」
「一部だけ何度も観たとかそういう人もいるのかな」
「いますいます。特殊な感じなんです。物語もすごいんですよ。結構SF要素も多くて、大スペクタクルな舞台になっているので」
もしも魔法が使えるとしたら…?

「僕も実演情報をなるべく入れないようにしてるんです。今日ここでお聞きできる楽しみもありますし。もちろん言えないこともあると思いますが」
「ハリー・ポッターがヴォルデモートを倒してから19年後の物語で、まずハリー・ポッターがお父さんになっているところから始まるんですよ。息子が結構やんちゃで手こずらされて、話が思わぬ方向に行って…」
「楽しみだな。色々ちょっと推測しちゃいますね。子供も魔法使えるのかな、とか。あ、最後にお聞きしたいことがありました。魔法を使えるとしたら、何に使いたいですか?」
「えー、なんでしょうね。みんなに催眠をかけて、ハリー・ポッターの劇場に来てもらいたいです(笑)」
「それをやらなくても、皆さん来ますから!」
「はい(笑)。でも、劇場に来ると多分皆さん魔法にかかっちゃうと思います!」

衣装(平岡祐太): ジャケット¥66,000 シャツ¥28,600 パンツ¥60,500/すべてGround Y(ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500) メガネ¥69,300/Mr.Gentleman(STUDIO FABWORK 03-6438-9575)
Photos: Ayako Masunaga Hair & Makeup: Ayaka Kanno Styling: Shuichi Ishibashi Edit & Text: Yukiko Shinto
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