
埼玉・川口の新たな文化拠点として川口市立美術館が、2026年9月にグランドオープンする。こけら落としに、アーティストの蜷川実花が川口市立美術館 開館記念特別展「蜷川実花展 はじまりの光」を開催。会期は、2026年9月12日(土)〜2026年11月29日(日)まで。
父である演出家・蜷川幸雄の出身地であり、蜷川実花自身も幼少期を過ごすなど、創作の原風景ともいえる埼玉・川口で、幼少期に形成された感性の原点をたどりながら自身の表現をあらためて切り拓く新たな挑戦。
近年取り組んできた大規模なインスタレーション表現ではなく、創作活動の出発点である「写真」を軸に、映像作品や家族の記憶を織り交ぜながら自らの創作の核心へと迫る。
見世物小屋の異形や鯉の血しぶき、飴玉の光、ピンク映画の看板、電灯の揺れ──
おかめ市(酉の市)の雑踏の中で蜷川実花が体験したのは、現実と虚構の境界が曖昧で不安定に揺れ動く世界。この揺らぎこそが、彼女の、見る者を「引きずりこむ」クリエイションに大きな影響を与えた起源だ。
本展は、蜷川実花自身を作り上げてきた要素に焦点を当て、二つの章で展開。

入口のある2階に展示する第一章は、初公開の新作を含む「写真」で構成。自身のデビュー作であり、約30年に渡り断続的に記録してきたモノクロのセルフポートレートは、自らの存在を確かめるように実験的に撮り重ねてきたまさしく原点だ。

さらに、2014年に父・蜷川幸雄が倒れ、死へと向かう1年半を記録し続けた『うつくしい日々』。蜷川実花が「逝く人の目で撮った写真」と表現する本作は、死と向き合うことで再確認されるこの世の美しさ、その瞬きの中にしか存在し得ない風景や感情を留めている。
ありとあらゆる瞬間が決定的であり、その時間にしか存在しない儚い世界を切り取る「写真」。誰もがスマートフォンを持ち歩き、簡単に表現ができる現代だからこそ、世界をどう捉えて何を切り取るか、そして「自分の中に何があるのか」という問いと改めて向き合った。

階段を下がってM2階に展示される第二章では、蜷川実花自身の表現世界に最も大きな影響を与えた家族との記憶に迫った。川口の地だからこそ明かす、かつてないほど個人的で内面的な世界を通し、自身の根源と深く対峙する特別な空間が広がっている。

当時の気配をそのままに宿す蜷川幸雄の書斎の移設展示、元女優でキルト作家の母・蜷川宏子のキルト作品、さらに若き日の両親が映るアルバムを複写した新しいシリーズ『First Light』などが一つの流れの中に共存。これまで触れてこなかった家族との記憶をたどり、自身の人生を紐解く。

デビュー以降約30年、多彩に表現領域を広げ続ける中でも、自らの心が動いた一瞬にだけシャッターを切り、目の前の存在や自身の内面とまっすぐに向き合い続ける姿勢を貫いてきた。幼少期の記憶が眠る感性の原点ともいえる川口で、蜷川実花のクリエイションの真骨頂を体感して。
川口市立美術館 開館記念特別展「蜷川実花展 はじまりの光」
会期/2026年9月12日(土)〜2026年11月29日(日)
会場/川口市立美術館
住所/埼玉県川口市川口3丁目1-2
開館時間/10:00~18:00
休館日/月
料金/当日:一般2,000円、大学生1,500円、高校生:1,000円、中学生以下無料
URL/https://kawaguchi-moa.jp/
Text:Miyu Kadota
