新国立劇場のフルオーディション企画『エンドゲーム』 | Numero TOKYO
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新国立劇場のフルオーディション企画『エンドゲーム』

すべての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画。新国立劇場の小川絵梨子芸術監督が、8年前の就任以来取り組んできた企画だ。

この企画は、所属事務所などを持たないフリーの俳優も参加できるオーディションをすることが国立の劇場にできることの一つ、という小川芸術監督の考えが反映されている。

有名無名、経歴を問わず、役にあった俳優を選ぶ、という事は基本的なようで、とても難しい。ある程度ふるいに掛けられた後に選ぶ方が、選ぶ側の時間も労力も少なくてすむ。それでも、あえて1,016人の応募者の中から4人の出演者を選ぶということは、作品のためのキャスティングであると同時に、劇場がまだ出会っていない才能に場を開くという、強い意志の表れでもある。実際、本作で選ばれた近江谷太朗、佐藤直子、田中英樹、中山求一郎の4人は、いずれも新国立劇場主催公演初出演となる。

近江谷太朗、佐藤直子、田中英樹、中山求一郎
近江谷太朗、佐藤直子、田中英樹、中山求一郎

今回上演される『エンドゲーム』は、サミュエル・ベケットの傑作だ。1957年の初演以来、世界中で上演されてきた不条理劇で、タイトルはチェスの終盤戦を意味する。駒が少なくなり、逃げ場も選択肢も失われていく局面。その言葉の通り、本作では、終末的な状況下でどこにも行けなくなった4人の登場人物が、絶望的に繰り返される日常を生きている。

この作品は、不条理演劇の代表的な作品であり、『ゴドーを待ちながら』の後に作られている。1957年の初演でありながら、コロナ自粛で多くの人が自由に往来できなくなり、閉鎖的な部屋の中で暮らす状況を体験した後には妙に身近にも感じられる作品だ。

今回は、不条理劇への造詣が深い俳優だけでなく、ほとんどそうしたものに接したことのない出演者もいる。だからこそ、不条理演劇を苦手に思う観客にも楽しんでもらえる作品になっているという。閉ざされた世界を描く『エンドゲーム』を、開かれたオーディションによって選ばれた俳優たちが立ち上げる。その組み合わせ自体が、今回の上演の大きな見どころになりそうだ。

舞台『エンドゲーム』
作/サミュエル・ベケット
翻訳/岡室美奈子
演出/小川絵梨子
主催/新国立劇場
出演/近江谷太朗 佐藤直子 田中英樹 中山求一郎
公演日程/ 2026年5月20日(水)~31日(日)
プレビュー公演/2026年5月15日(金)・16日(土)
会場/新国立劇場 小劇場
料金(税込)/ A席 ¥7,700 B席 ¥3,300 Z席(当日)¥1,650
プレビュー公演料金/A席 ¥5,500 B席 ¥2,200 Z席(当日)¥1,650
チケット申し込み・お問い合わせ/新国立劇場ボックスオフィス03-5352‐9999 (10:00~18:00)
新国立劇場Webボックスオフィス https://nntt.pia.jp/

Text:Reiko Nakamura

 

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