今週末まで! 今こそ体感したい「アルフレド・ジャー展」レビュー | Numero TOKYO
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今週末まで! 今こそ体感したい「アルフレド・ジャー展」レビュー

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

チリのサンティアゴに生まれ、現在はニューヨークを拠点として国際的に活躍する作家アルフレド・ジャー。社会の不均衡や世界各地で起きる地政学的な出来事に対する繊細な視点と真摯な調査にもとづいて生まれる作品は写真、映像、建築的なスケールの立体作品と多様なメディアにわたり、身体的体験をともなうインスタレーションで知られる。東京オペラシティ アートギャラリー(東京・初台)にて開催中の個展「アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての⼈たち」を「KAMADO BOOK」代表の柿内奈緒美がレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年1・2月合併号掲載)

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

自分たちの側から見た世界を超える

アルフレド・ジャーは、写真、映像、建築的なスケールの立体作品、そして身体的体験を伴う多様なメディアのインスタレーションが特徴だ。彼はラテン系アメリカ人として「アメリカ人」でありながら、その時代のアメリカ社会では「アメリカ人」として認められないという境遇を生きてきた。はじめのフロアでは、その境遇、そこから生まれる反発を作品に転換させた彼の強い表現を見ることができる。

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

差別や区別は常に「自分たちの側から見た世界」という視点から生まれている。この視点の違いを原因とする弾圧や争いが、昔も今も世界で起こっていることを、彼の作品を通して痛烈に感じた。世界経済を巻き込む不均衡さや戦禍など、すぐに個人でどうにかできることではないとしても、そこから目を逸らさず、しっかりと認知し認識することの重要性が、展覧会タイトルにも込められたメッセージだ。

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

アートはその時代の鏡で、結晶のような存在だ。私は現代アートが持つ時代の塊のような強いメッセージを受け取ることが好きで、自分が良いと思った展示を人にもよく勧める。だが、ジャーの作品は鑑賞するのにエネルギーを要するので少し注意が必要だと思う。それは、「自分たちの側ではない世界を想像すること」を迫られるから。世界中の理不尽なこと、辛く苦しいことは、生きていれば必ず起きる。だけど、目を逸らさないことで私たちは「誰かを想うこと」ができる。

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

展示風景 撮影:木奥惠三
展示風景 撮影:木奥惠三

「アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての⼈たち」

会期/2026年1⽉21⽇(⽔)−3⽉29⽇(⽇)
会場/東京オペラシティ アートギャラリー
住所/東京都新宿区西新宿3丁目20-2
時間/11:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日/月
URL/www.operacity.jp/ag/exh294/

Text:Naomi Kakiuchi Edit:Sayaka Ito

Profile

柿内奈緒美 Naomi Kakiuchi 岡山県生まれ。アートとライフスタイル(価値観)を横断し、神経美学を幹とした科学を手がかりに感性を探る企画・運営・執筆を行う。「KAMADO BOOK」を運営中。vol.1は「アート≒アイデンティティ」。kamado-japan.com
 

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