長澤まさみ、カリナ、キム・テリらが来場。意外な演出で女性の多面性を描いた「プラダ」2026秋冬ウィメンズコレクション
Fashion / News

長澤まさみ、カリナ、キム・テリらが来場。意外な演出で女性の多面性を描いた「プラダ」2026秋冬ウィメンズコレクション

プラダ(PRADA)は、2026年秋冬ウィメンズコレクションを現地時間の2月26日に、ミラノにあるプラダ財団 Depositoで発表。ランウェイ形式で開催されたショーのフロントロウには、長澤まさみ、カリナ(aespa)、キム・テリ、ウヨン(ATEEZ)、キャリー・マリガンら豪華セレブリティが顔を揃えた。

01 | 16

本コレクションのテーマは「INSIDE PRADA」。ミウッチャ・プラダは、コレクション終了後の囲み取材において「過去の模倣としてではなく、自分たちが何処から来たのか、そして、現在の立ち位置を理解するうえでも歴史が重要である」と語ったという。創業者の孫であり、プラダをトップ・オブ・トップへと押し上げた立役者である彼女にとっての自己探究は、そのままブランドの歴史を辿ることであり、内省を試みるものである。また、“INSIDE(内部、内面)”とはプラダのことだけではなく、市政の人間の内なる本質的な多面性を受け入れ、女性が直面する多面的な現実と人生の複雑さをクロージングに投影した。

複雑かつセンシティブなテーマを具現化するうえで、ミウッチャとラフ・シモンズが採り入れたのが「レイヤリング」という手法だ。通常50〜60人程度のモデルが登場するプラダのランウェイショーだが、今回起用したのはわずか15人。彼女たちはそれぞれ4回ずつランウェイに登場するのだが、その都度、新しいルックに着替えるのではなく、アウターを脱ぎ、ときにはレイヤリングを組み替えたり、小物やアクセサリーを足し引きすることで、女性一人一人の多面性を視覚的に補完し、各々のキャラクターを掘り下げていく。

モデルのひとり、ベラ・ハディッドを例にとると、最初のルックは、1月に行われたメンズコレクションでも披露された、表側のファブリックが朽ちて芯地の千鳥格子柄が露出したかのようなジップブルゾンと、シアーな素材で覆われた膝丈スカート。2巡目でアウターを脱ぐと、シアーなスカートは上半身まで繋がったスプリングコートだったことが分かり、3巡目ではその下に着用していた腰にギャザーを入れたワンピース1枚の姿に。最後の登場時には、ワンピースも脱いで、ウール地のタンクトップとショートパンツというリラックスウェアへと変わる。くるぶしから甲にかけて花柄をあしらったバーガンディのレッグウェアと編み上げのポインテッドトゥのパンプスは、4つのルックに全て共通するのもミソだ。

ベラ・ハディッド
ベラ・ハディッド



他のモデルも同様で、レイヤリングというプロセスは、単なる着回しのアイデアではなく、個々人に根差す様々な記憶や経験の重なりを表現する象徴として用いられており、主体性という概念を表現するものだという。着替えの効率化や段取りの問題など、レギュレーション上の理由かもしれないので憶測に過ぎないが、レイヤリングが完成した状態から、徐々に削ぎ落とされてシンプルになっていくという順序も重要なのだろう。コレクションノートによると。レイヤリングによって多面性を探る行為は、逆説的に単純化された外見が内に潜む複雑さを伝える手段になるとも説いている。ひとりの女性が変容するプロセスを俯瞰させて見せることで、出自や外見でわかりやすくキャラクターに押し込む危うさを雄弁に伝える。

“〇〇らしさ”というお仕着せの呪いへの鮮やかな抵抗や旧態依然とした性規範への懐疑的な視点は、近年におけるプラダの特徴のひとつであり、継続したテーマ性がよりメッセージの解像度を高める。

「INSIDE PRADA」というテーマは、アーカイブというプラダの“歴史”を、新たな視点で再構築することにも現れた。美しいアズーリ(青)のシャツとニットの合わせは、プラダの代名詞的なルックだが、はみ出したカフスの歪なバランスや意図的に付けられたシワやクセに時間の連なりや記憶の積み重ねを表現。先述したメンズコレクションでも見られた袖口などに施されたパティーナ加工も同様の意図であろう。ユニフォームに象徴される規律を再解釈したテーラードスタイル、2000年代頭のプラダを思わせるスポーツウエア、テクニカルファブリックに施したクラフト的な刺繍といった相反する要素の大胆な組み合わせに、ヒエラルキーへの抗いが伺える。

 

他にも、メンズコレクションでも登場したアウトドア風のショートクロークをクラシックな外套とドッキングしたデザインは、今回ダブルブレストのロングコートに応用。セカンドルックに登場した生地が剥がれ落ちたようなディテールは、様々なアウターのバリエーションで魅せるなど、メンズと共通するデザインが、ジェンダーの境界線を曖昧にする。

小物類では、コントラストカラーの平紐を付けていたおでこ靴(バルブトゥ)のようなレザーシューズが目を引いた。クロップド丈のスラックスとの隙間からタイツの柄を覗かせたり、シンプルにワンピースと合わせたていたが、つま先にスチールが入っているのか、つま先の傷や汚れがチャーミングなフォルムにアクセントを添えている。大人のトムボーイ的なスタイルを表現するキーアイテムとして、実際に製品化されるとすれば人気を集めそうだ。

最後に演出面にも触れておきたい。デトロイトテクノの伝説的ユニットUR(アンダーグラウンド・レジスタンス)のオリジナルメンバー、ロバート・フッドの楽曲や、DAF/DOSのエレクトロニック・ボディ・ミュージックが効果的に使われていた音楽も秀逸だったが、注目したいのが会場の舞台セットだ。16世紀、17世紀のタペストリーや絵画、18世紀のベネチアンミラーやコンソール、そして1900年代の椅子、ランプ、絵画などの貴重なアートピースを壁面に配置。幾層にも重ねられたレイヤーが削ぎ落とされることで内側に秘めたものが露わになるように、生命の痕跡を示唆するような経年の趣や歴史の堆積といった、本コレクションに通づる思想を反映したものだという。社会問題にも寄与する骨太なテーマやメッセージ、それを形にしたコレクションピースの素晴らしさはもちろんのこと、音楽や美術セットにまで通底するプラダ独自の美学が強く印象に残るコレクションであった。

PRADA
プラダ クライアントサービス
TEL/0120-45-1913
URL/www.prada.com

Text: Tetsuya Sato

 

Magazine

APRIL 2026 N°195

2026.2.28 発売

Wear It Free

自由を纏う

オンライン書店で購入する