辛酸なめ子が「マチュピチュ展」で体感したこと | Numero TOKYO
Art / Post

辛酸なめ子が「マチュピチュ展」で体感したこと

カニの姿をしたアイ・アパエック 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO LIMA PERU
カニの姿をしたアイ・アパエック 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO LIMA PERU

神秘的な文明を持つ天空都市マチュピチュ。ペルーのラルコ博物館が誇る、その貴重な至宝が森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー)にて公開中。特に、世界初公開となる黄金の装飾品や精緻な祭祀道具は必見。古代アンデスの叡智と美を感じられる本展を漫画家の辛酸なめ子がレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年3月号掲載)

羽飾りが付いた頭飾り 西暦1100-1470年 ©MUSEO LARCO  LIMA - PERU
羽飾りが付いた頭飾り 西暦1100-1470年 ©MUSEO LARCO LIMA - PERU

天空都市に時空を超えて没入

展示会場は、南米の密林に足を踏み入れたような没入感。内装や音響などが凝っていて、従来の博物館の学術的な展示とは違った角度からマチュピチュの世界を体感できます。神話上の動物を表現した彫刻は、日本の神獣にも似ていて、神話などにも共通点が見出せます。母なる地球に捧げる聖なる儀式なのか、性行為を表す土器もいくつか展示。神秘的な彫刻も取手や注口がついていて、実用性もあるのが素敵です。「シャーマンの変容」の土器は、半分が人間の顔、もう半分がジャガーの顔へと変貌していて、キュビスムの祖先のようでした。

シャーマンの変容 紀元前1250 – 100年 ©MUSEO LARCO  LIMA - PERU
シャーマンの変容 紀元前1250 – 100年 ©MUSEO LARCO LIMA - PERU

最もスペクタクルだったのが、モチェ文化の指導者で神話的英雄のアイ・アパエックの物語。こちらもさまざまな土器で表現されていました。ハゲワシの背に乗って異世界に飛び、カニに変身して海の世界へ。ウニやフグと対決し勝利。土器で表現されたカニ人間などがシュールです。深海では巨大な巻貝、 ストロンバスと対決。勝利するたび装備アイテムが増えていきますが、海の神に処刑されてしまい、祖先の世界へ……。と、ロールプレイングゲームの源流のようなストーリー。処刑といえば、赤いライトで照らされた祭壇のスペースで、生贄の儀式にも没入できます。捕虜となった戦士の頭部の水差しは、恐怖と諦めが入り交じった思考停止の表情がリアル。ナイフで喉が切り裂かれ、その血や心臓で神の怒りが鎮められます。捧げ物と引き換えに地上に秩序がもたらされる、というサイクルを体感。天空に近い52階の美術館で、別の次元にトリップできる展示です。

フグの姿をしたアイ・アパエック 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO  LIMA - PERU
フグの姿をしたアイ・アパエック 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO LIMA - PERU

カニのモチーフの鼻飾り 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO  LIMA - PERU
カニのモチーフの鼻飾り 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO LIMA - PERU

斑点のある犬 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO  LIMA - PERU
斑点のある犬 西暦100 – 800年 ©MUSEO LARCO LIMA - PERU

「CREVIA マチュピチュ展」

会期/2025年11月22日(土)〜2026年3月1日(日)
会場/森アーツセンターギャラリー
住所/港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
開館時間/日〜木10:00~19:00(最終入館18:00)、金・土・祝前日10:00~20:00(最終入館19:00)
休館日/なし
https://machupicchuneon.jp/

Text:Nameko Shinsan Edit:Sayaka Ito

Profile

辛酸なめ子 Nameko Shinsan 漫画家・コラムニスト。人間関係、流行の事象、皇室、海外セレブ、スピリチュアルなど幅広いテーマで執筆。近著に『江戸時代のオタクファイル』『世界はハラスメントでできている』などがある。
 

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