最後の展覧会、自邸公開……ミラノが讃えたアルマーニが教えてくれたこと | Numero TOKYO
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最後の展覧会、自邸公開……ミラノが讃えたアルマーニが教えてくれたこと

Photo:Pagliaricci Coni
Photo:Pagliaricci Coni

オリンピックで沸くミラノ。イタリアならではの芸術への高い意識が感じられた開会式で、その功績を改めて讃えられたのが、昨年9月に91歳で逝去したジョルジオ・アルマーニ。偉大なファッションデザイナーが残してくれた遺産を、好評延長されている圧巻のブレア美術館での展覧会レポートと、2026春夏キャンペーンの舞台となった貴重な自邸でのヴィジュアルから探ってみたい。

オリンピック開会式の美しきトリビュート

©︎SGP
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ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの開会式でのトリビュートは、ジョルジオ・アルマーニへの深い敬意が伝わるものだった。この開会式は生前、アルマーニ自身が構想段階から関わり、厳粛な旗の入場演出のほか、セレモニー全体のコンセプトにも携わっていたのだという。アルマーニのパンツスーツを纏ったモデルたちによって体現された、赤・白・緑に彩られたイタリア国旗。

イタリア代表チームの公式ウェアは、2014年からEA7 エンポリオ アルマーニが手掛けている。Photo:Pagliaricci Coni
イタリア代表チームの公式ウェアは、2014年からEA7 エンポリオ アルマーニが手掛けている。Photo:Pagliaricci Coni

グレーのメランジにイタリアントリコロールを効かせた、選手たちの公式ユニフォームもアルマーニらしい。引き絵で映えるデザインに、50年もの長きにわたり、ランウェイで人々を魅了してきた大局的な視点が垣間見えた。

自邸でのジョルジオ・アルマーニ。Courtesy of Giorgio Armani
自邸でのジョルジオ・アルマーニ。Courtesy of Giorgio Armani

ファッションが一般に浸透したのは、プレタポルテが勢いを増した60~70年代。わずか半世紀余の間に時代は大きく変化した。アルマーニが起業したのは1975年。その歴史はファッションの隆盛期にそのまま重なる。服を纏う人ありきの、ある種の精神性を持たせたファッションを貫いたことで絶対的な存在に。昨秋、訃報が伝えられたとき、SNSは世界中からその功績を讃え、惜しむ声で溢れた。特にこだわり、哲学を貫いた生き方への賛美が多く見受けられ、唯一無二の存在だったことが浮き彫りになった。

イタリア美術と響き合う、ブレラ美術館の展覧会

凛としたネイビーもアルマーニの代名詞。人体のしなやかな動きが感じられる透明なマネキンも印象的。
凛としたネイビーもアルマーニの代名詞。人体のしなやかな動きが感じられる透明なマネキンも印象的。

アルマーニが暮らしと仕事の拠点としたのが、ミラノ屈指の文化薫るブレラ地区。1809年開館のブレア美術館で行われている展覧会が「Giorgio Armani: Milano,per Amore」。当初1月で終了予定だったが、好評を得て5月3日までの延長されている。これはアルマーニの創造の50年を記念したもので、ブレア美術館で初めて行われるファッションの展覧会。

カラヴァッジオ、ティツィアーノ、マンテーニャなどの名画ほか、開会式でもフォーカスされたカノーヴァの彫刻など、イタリア芸術の殿堂ともいえる美術館。複数に色分けされた展示室のセンターに、テーマ性を持って集積されたアルマーニ作品が、まるで芸術の森に静かにたたずむように展示されている。

アントニオ・カノーヴァの巨大彫刻を囲むように配された、アルマーニらしいグレーの作品群。
アントニオ・カノーヴァの巨大彫刻を囲むように配された、アルマーニらしいグレーの作品群。

アルマーニの世界観を保存・発信する「ARMANI/Archivio」から厳選された120点余りのアーカイブ作品が、周囲を彩る圧倒的なイタリア芸術の傑作と共鳴する贅沢な空間。そこに身を置いたなら、控えめでありながらも揺るがない、アルマーニの本質に心震えるはずだ。本展の開催をつくり手としての喜び以上に、後進たちに与える教育的価値に関心を持ち、楽しみにしていたというアルマーニ。ファッションが芸術へと昇華した歴史的瞬間に、ぜひ立ち会ってみて欲しい。このために渡伊する価値のある展覧会だ。

アルマーニが暮らした邸宅で撮影された26春夏

ヴィットリア・チェレッティが纏った26春夏コレクション。アンディ・ウォーホル作品と。ANDY WARHOL, GIORGIO ARMANI, 1981  合成樹脂絵具、シルクスクリーン/キャンバス、40×40cm
ヴィットリア・チェレッティが纏った26春夏コレクション。アンディ・ウォーホル作品と。ANDY WARHOL, GIORGIO ARMANI, 1981  合成樹脂絵具、シルクスクリーン/キャンバス、40×40cm

そしてアルマーニ自身が手掛けた最後のコレクション、2026春夏のキャンペーンヴィジュアルも公開された。舞台はブレア地区ポルゴヌオーヴォ通りにある自邸。ムービーはアルマーニによるナレーション。

写真左の壁面は左からゲイリー作品、フランチェスコ・クレメンテによるジョルジオ・アルマーニを描いた作品、アントニオ・ロペス作品 。写真右の壁面はシルヴィオ・パゾッティによる作品 。Photos:Pagliaricci Coni

ともに歩み、メンズ部門の責任者であるレオ・デル・オルコが現在も暮らすレジデンスで、アンディ・ウォーホル、フランチェスコ・クレメンテによる肖像画ほか、貴重なアートがさまざま飾られている。

東洋文化の影響も感じるアルマーニの自邸。Photo:Luca De Santis

アルマーニの美学やスタイル、その記憶が息づく空間での撮影は、誇るべきデザイナーへのオマージュであるとともに、過去から現在へと美しい精神が紡がれる証。ウィメンズの主役は、オリンピックの開会式で旗手も務めたヴィットリア・チェレッティ。その生き生きとエフォートレスな女性像が、アルマーニの美学の新しい時代への継承を感じさせる。

Text: Hiroko Koizumi

 

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