アルフレド・ジャーと和田礼治郎の展覧会@SCAI PIRAMIDE(東京・六本木) | Numero TOKYO
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アルフレド・ジャーと和田礼治郎の展覧会@SCAI PIRAMIDE(東京・六本木)

「Alfredo Jaar Reijiro Wada」展示風景、2026、SCAI PIRAMIDE、東京 写真:表恒匡
「Alfredo Jaar Reijiro Wada」展示風景、2026、SCAI PIRAMIDE、東京 写真:表恒匡

政治的な危機が生み出す情報の偏りや不均衡をミニマルな視覚言語へと翻訳し、隠された権力構造を浮かび上がらせるアーティスト、アルフレド・ジャー。オブジェの腐敗や衝突など、かたちが崩れ変容するプロセスを作品に取り込み、環境を静かに攪乱させる彫刻的な場として提示する和田礼治郎。ふたりのアーティストによる展覧会がSCAI PIRAMIDE(東京・六本木)で開催中だ。

東京オペラシティ(初台)にて個展「アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち」を開催しているアルフレド・ジャーと、森美術館で開催中の「六本木クロッシング2025」での展示作品が大きな話題を呼んでいる和田礼治郎。SCAI PIRAMIDEで開催中のふたりの展覧会にも注目をしたい。

(参考)アルフレド・ジャーの半生を振り返る個展@東京オペラシティ

(参考)「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」開催@森美術館

ギャラリーの空間に静かに浮かびあがるのは、アルフレド・ジャーのネオン作品『TONIGHT NO POETRY WILL SERVE』(2023/2025)だ。フェミニスト詩人エイドリアン・リッチから引用したこのフレーズを、ロンドンのピカデリーサーカスやソウルのCOEXスクエアなど、大規模デジタル・ディスプレイに投影し、公共に展開してきた。いかなる美的論理も対処できない現実を前にして、芸術の無力さを問いかける本作は、言語がもはや現実の惨禍に応じる能力の限界に達していることを示唆している。

「Alfredo Jaar Reijiro Wada」展示風景、2026、SCAI PIRAMIDE、東京 写真:表恒匡
「Alfredo Jaar Reijiro Wada」展示風景、2026、SCAI PIRAMIDE、東京 写真:表恒匡

和田礼治郎の新作『PORTAL』(2025)は、風景・光学・エントロピーへの持続的な関心を踏まえながら、その彫刻的構成によって見慣れた世界の輪郭を静かに解体する。ジャー作品に呼応するかのように配置されたフレームは、ブロンズ製の枯れた葡萄の木によって支えられている。2枚の強化ガラスで密閉されたフレームのなかには透明なグラッパが流し込まれ、わずかな負圧によってガラス面を通過する光に微細なたゆみを生み出す。物質の終わりやサイクルを示唆しながら、葡萄の生命力は実体を失った死後のエネルギーとして静かに昇華していくさまを見せる。

光、ガラス、金属が、現在の緊張を映し取る媒体として編成され、四角いフレームへの形式的参照が繰り返し現れる本展。政治的な解釈と素材を通じた含意が交差し、あらゆる視覚的経験は、あらかじめ与えられた制約のもとで構造化され、特定の見方へと導かれていることが示される。

ジャーの政治的ミニマリズムと、和田の形而上的な物質性。そのあいだにひらかれる本展は、世界を考え、想像しようとする私たちの思考のあり方がどのように形作られてきたのかを見つめ直す機会となりそうだ。

※掲載情報は2月4日時点のものです。
開館日時など最新情報は公式サイトをご確認ください。

アルフレド・ジャー 和田礼治郎
会期/2026年1月21日(水)〜4月18日(土)
会場/SCAI PIRAMIDE
住所/東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル 3F
時間/12:00〜18:00
休日/日・月・火・水曜、祝日
URL/www.scaithebathhouse.com/ja/

Text:Akane Naniwa

 

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