プラダ(PRADA)は、2026年秋冬メンズコレクションを現地時間の1月18日にミラノにあるプラダ財団 Depositoで発表。ランウェイ形式で開催されたショーのフロントロウには、ブランドアンバサダーを務める俳優の坂口健太郎をはじめ、ビョン・ウソク、カリナ(aespa)、ガウォン(MEOVV)トロイ・シヴァンら豪華セレブリティが顔を揃えた。
本コレクションのテーマは「BEFORE AND NEXT」。コレクションノートの言葉を借りれば、ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは今回、過去を消し去ることなく進化すること、そして過去から受け継いだものを活かす新しい考え方を提案したのだという。会場の四方を囲む壁面をアールデコ調のドアや窓で装飾したシンプルな空間に、アイルランドのポストパンクバンド、ヴァージン・プルーンズの楽曲『Theme for Thopught』の歪んだギターサウンドが響き渡るとショーはスタート。ファーストルックはブラックのチェスターコートとスラックス、足元にはレザーのプレーントゥを合わせた端正なスタイル。ややナローなラペルと狭いVゾーンに合わせるようにシルエットはかなり細身で、袖口からインナーウエアのカフスが無造作に飛び出している。その後も起毛感のあるウールやヘリンボーン柄だったり、シングルブレスト仕立てになったりと多少の変化はあるものの同じようなコートがメインのルックが続く。コレクションノートによると、「縦長のかっちりとした新しいシルエットは、着る人への姿勢や心構えを考慮したものであり、不安定で予測不能な時代において、こうした明快さが安心をもたらすのだ」と説いている。

また、よく目を凝らすと、シャツ地のインナーは単純にカフスを幅広に折り曲げているのではなく、ルックによっては片側をカラフルなカフリンクスで留め、もう片側はあえて大胆に折り返すなど微妙な表情を付けている。また、袖口には汚れたシミのような加工まで施されている。さかのぼれば「ミュウミュウ」2025年春夏コレクションでも、シャツの襟を片側だけわざと乱すことで幼少期のおしゃまでどこか歪な装いを表現していたが、不完全なものや未熟なものに「美」を見出すことは、ミウッチャにとって創作における重要なエレメントなのだろう。
今期のテーマ「BEFORE AND NEXT」を日本的に解釈すれば、“温故知新”というニュアンスが近い。例えば、コレクションの前半にバリエーションで魅せていたトレンチコートとショートクロークの組み合わせもその好例だ。ギャバジン製の正統派トレンチコートの上部に、カットしたアウトドアライクなアウターを被せたドッキングデザイン。ネイビー地にはパステルグリーン、ベージュにはパープルというようにコントラストカラーを組み合わせ、上品なギャバジンと60/40クロスのようなヘビーデューティなマテリアルの対比が面白い。コレクションノートにも「伝統を踏まえながら、親しみのある要素を再構築し、既成概念への問いかけを通して一つのピースを組み立てた」とあるが、その言葉を象徴する一枚であった。
また、ジェンダーにおける旧弊な価値観にとらわれない提案も近年のプラダの特徴だ。“女性らしさ”を問い直した2025-26秋冬ウィメンズコレクションやマイクロミニ丈のブルマを取り入れた2026春夏メンズコレクションなど、画一的な性規範に対する懐疑的な視点は今回も健在だ。中盤以降に登場した素肌に着たニットのタンクトップもそのひとつ。スクエアにカットした深めの胸元や幅広のリブストラップ、ゆったりとしたシルエットなど、“マチズモ”的な肉体美を誇示するかのようなタンクトップ姿とは趣の異なるセンシュアルなムードは、コレクションのなかでも一際新鮮に映っていた。
再度、コレクションノートを引用すると、時間が持つ重要性も伝統を尊ぶキーワードとしてテーマを補強していた。ショート丈とロング丈で登場した中綿入りのレザージャケットはところどころ褪色し、雑に保管されていたような無数の畳みシワが付けられている。また、先述したスクエアネックのタンクトップには布帛のタイプもあったが、日に焼けたような黄ばみや食品汚れを思わせるシミが施されている。いわゆる経年変化やエイジングによる美しさではなく、個々人の記憶に紐づいたような人生の痕跡が意図的に表現されており、「文化や意味、知性、配慮といった文明が育んできた普遍的な人間の価値を維持することの大切さ」を暮らしの名残りに宿す。
ラフ自身もコレクション終了後「考古学っぽい考えでアプローチした」と語っているように、歴史の堆積や時間の経過を表現したディテールは多方に散見された。終盤に登場したベージュのバルマカーンコートとスイングトップもその一例だ。襟元や前立て、後ろ身頃など、表地が剥がれ落ちて芯地の千鳥格子柄が露出したような手の込んだ加工が施されている。まるで土に埋もれた数千年前の遺物を、丁寧に刷毛でかき出して見つけたような多層的な意匠はまさしく「考古学」的であり、着る人のパーソナリティをじっくりと紐解くようでもある。
他にも小物類では、船乗りが甲板で被るサウウェスターハットが目を引いた。ランダムにプリーツを入れてシワのようなクセが付けられており、そのまま被る以外にもぎゅっと圧縮してアウターの背面に貼りつけてコサージュのようなアクセサリーとしても機能していた。また、今回カラーパレットがネイビーやグレー、ブラックなどダークトーン中心だったこともあり、レザーシューズのシューレースに取り入れられていた鮮やかなパステルカラーがモダニティを添えていたのも印象的であった。
「私たちは、過去に学んだことを生かして、何を築くことができるのでしょうか」。ミウッチャとラフは観る者にそう問いかける。むろん、それは社会に横たわるさまざまな問題についてのことでもあり、今回の示唆に富んだコレクションから何を感じ取り、どんな気づきを得るのかは鑑賞者の想像力に委ねられている。
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Text: Tetsuya Sato


































