
山田由梨が主宰する劇団『贅沢貧乏』の『わかろうとはおもっているけど』が池袋の東京芸術劇場で上演される。
物語は、これまで幾度も取り上げてこられた「妊娠を機に生まれるごく普通の男女間の相違」をテーマにしている。だが、その解像度が異常なまでに高い。
舞台はナチュラルテイストの可愛いリビング。主人公の女性の居間のようだ。その中にいるカップルも、本当に今すれ違った気がするような普通の男女。会話も本当に、仲の良さがあふれ、こそばゆくさえある。一言でいうとどこにでもいる「ぬるい」カップルなのだ。しかし、そのぬるさ故、二人の間が軋みだすと痛さも幾層倍である。

妊娠を経験したかどうかにかかわらず、長く付き合うカップルにはよくある経験で、裏を返せば、その位、男と女(に限らないかもしれない)がわかりあうことは難しい。
客観的に見ると、ここで主人公がなぜ謝ってしまうのか、なぜこの言葉でパートナーがこんなに激高してしまうのか…男女それぞれに疑問を感じるポイントがそこここにある。でも、こうした会話は現実世界で非常に見慣れたやり取りなのだ。観客は、自分たちの日常に落ちていて、見ないようにしている違和感を正視せざるを得ない。

しかし、そこを声高に「ドヤ!女性の権利が!」と主張するのではなく、絶妙なユーモアにくるんで「ほら、なんか変じゃない?」と観客の心に語り掛けてくるあたりに、作家・演出家である山田の手腕を感じる。序盤のちょっとした違和感のある仕掛けが舞台の終盤にかけて収束してくる心地良さ。音楽も作品のテンションをコントロールする良い仕事をしている。

この作品は2019年に横浜・東京で初演され、2022年にフェスティバル・ドートンヌ・ア・パリ正式プログラムとして、フランスでも上演されている。女性の権利については日本よりも二歩三歩と言わず、十歩以上前を歩いているフランスでも、この作品は「男性中心社会の日本で生きるカップルの現実を描く」と、高い評価を得た。
ぜひ、この違和感とユーモアを、できるだけ多くの男性と女性で共有したい。
蛇足ではあるが、ぜひ、劇団の公式ホームページにも立ち寄ってみてほしい。ペア割引の設定や、観劇に不安のある客への注意書きなど、きめ細かな運営にも好感が持てる。
舞台 贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』2025年国内ツアー
作・演出/山田由梨
音楽/金光佑実
出演/大場みなみ 山本雅幸 佐久間麻由 大竹このみ 青山祥子
<東京公演>
公演日程/11月7日(金)〜11月16日(日)
会場/東京芸術劇場シアターイースト
チケット料金(税込)/整理番号付自由席(税込)一般4,000円 ペア7,500円 29歳以下3,000円 18歳以下500円
公式ホームページ/https://zeitakubinbou.com/archives/next_posts/imtryingtounderstandyoubut2025
以下日程ポストトークあり。
11月7日(金)19:00 宇垣美里(フリーアナウンサー・俳優)司会:トミヤマユキコ(ライター・マンガ研究者)
11月8日(土)14:00 大島育宙(XXCLUB/映画・ドラマ評論)
11月10日(月)19:00 山崎ナオコーラ(作家)
11月14日(金)19:00 佐伯ポインティ(マルチタレント)
<久留米公演>
公演日程/12月6日(土)〜12月7日(日)
会場/久留米シティプラザ Cボックス
チケット料金(税込)/全席自由 一般3,500円 U25(25歳以下)2,000円 高校生以下1,000円
<札幌公演>
公演日程/12月13日(土)〜12月14日(日)
会場/クリエイティブスタジオ(札幌市民交流プラザ3階)
チケット(全席指定・税込)/前売券 一般3,500円 U-25 2,000円
当日券 一般4,000円 U-25 2,500円
主催/贅沢貧乏/株式会社ation[東京公演]、久留米シティプラザ(久留米市)[久留米公演]、公益財団法人北海道文化財団、札幌文化芸術劇場 hitaru(札幌市芸術文化財団)[札幌公演]
提携/東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)[東京公演]
助成/芸術文化振興基金[東京公演]、文化庁文化芸術振興費補助金(地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業)|独立行政法人日本芸術振興会[久留米公演]
企画制作/贅沢貧乏
