
国内最大規模の国際芸術祭のひとつ「あいち2025」が、2025年9月13日(土)より開幕した。国内外から62組のアーティストが参加し、愛知県内各所で現代美術展、パフォーミングアーツ公演、ラーニング・プログラムを展開する。
2010年から3年ごとに開催され、今年で6回目を迎えた国際芸術祭「あいち2025」。現代美術を基軸とし、舞台芸術などもふくめた複合型の芸術祭であり、ジャンルを横断し、アートの多様性を愛知から発信することを試みる。
今年度は、名古屋市の愛知芸術文化センター、瀬戸市の愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなかエリアで展開。芸術祭のテーマを「灰と薔薇のあいまに」とした。これは現代アラブ世界を代表する詩人・アドニスの詩の一節より。戦争の惨禍を目の当たりにし、そのことにより環境破壊を嘆きつつも、破壊の先に希望を見出した中で生まれた言葉だという。複雑に絡み合う人間と環境の関係性を地質学的な時間軸から考察し、また「灰(終末論)」か「薔薇(楽観論)」という極端な二項対立の議論を中心に据えることなく、その「あいま」にあるニュアンスに富んだ思考で世界を解きほぐそうという試みだ。


参加アーティストは62組。アジア、中東、アフリカ、中南米など非欧米圏のアーティストを多数紹介する。また、先住民族にルーツを持つもの、さまざまな理由で出身地域とは異なる場所で活動するもののように、自らの社会的・文化的アイデンティティを見つめ直しながら表現を模索するアーティストも数多く含まれる。アーティストたちの多様な実践が、欧米中心に紡がれてきた歴史を解きほぐし、複雑化していく世の中を新たな角度から見る・考える多くのきっかけとなるはずだ。
また今年度は、新たな会場地域に瀬戸市が選ばれた。千年もの歴史を持つ「やきもの」のまちとして知られており、陶土をはじめとする豊かな地域資源と人々の生活は密接につながってきた。かつて陶磁製品の生産に伴い生み出された灰のように、黒く染まった空や白く濁った川など環境汚染や破壊がある一方、まちの繁栄の象徴でもある。産業のこうしたあり方が人間と環境の関係についてさまざまな思考への道をひらくだろう。
そのほかパフォーミングアーツやラーニング・プログラム、関連イベントなども盛りだくさん。会期は11月30日(日)まで。

※掲載情報は9月26日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
国際芸術祭「あいち2025」
会期/2025年9月13日(土)〜11月30日(日)
会場/愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか
URL/aichitriennale.jp/
Text:Akane Naniwa
