シャネルが衣装を制作。パリを沸かせた振付家ホフェッシュ・シェクターによる『レッド・カーペット』
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シャネルが衣装を制作。パリを沸かせた振付家ホフェッシュ・シェクターによる『レッド・カーペット』

© CHANEL
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6月から7月にかけて、パリ・オペラ座(オペラ・ガルニエ)で行われたバレエ公演『Red Carpet(レッド・カーペット)』。イスラエル出身でロンドンを拠点に活動する振付家ホフェッシュ・シェクター(Hofesh Shecheter)が手がけ、衣装はシャネル(CHANEL)が制作した。新しくてダイナミック、『レッド・カーペット』の世界をパリ在住のファッションコーディネーター、スタイリストの高中まさえがレポート。

『レッド・カーペット』より © CHANEL
『レッド・カーペット』より © CHANEL

パリオペラ座ガルニエ宮のシーズン2024/25年の最後の演目はホフェッシュ・シェクターが手がけた『レッド・カーペット』。今年6月10日に世界初公演を迎えた。このコンテンポラリー作品はシェクターにとって、自身のカンパニー以外に初めてパリオペラ座バレエ団に創作された作品で、衣装がシャネルということでも話題になっていた。日本でも公開されたセドリック・クラピッシュ監督の映画『ダンサー イン paris』(2022年)にシェクターは振付家として出演もしているので、コンテンポラリーダンスファンには知られている存在であるだろう。

『レッド・カーペット』より © CHANEL
『レッド・カーペット』より © CHANEL

まずオペラ座に入ると耳栓が用意されていて「大音量のため、必要な方はご使用ください」と。シェクターは振付もだが音楽も彼自身で演出している。

20時の開演、60分の演出。大きなシャンデリアが一つ。13人のダンサーと小規模の舞台。真っ赤なカーテンが深海のブルーになり、モノクロになってカーテンが上がる。音楽はチェロ、コントラバス、管楽器、ドラム4人編成の生演奏と録音のミックスで耳栓をするほどではないが、クラブに踊りに来たような感覚になる。今年の夏に東京に行くオペラ座の演目『PLAY』で主役で踊るルー・マルコー=ドゥルアールのダンスから目が離せなくなった。そして観客の体が自然に動き出す。舞台と一緒にトランス状態になる。歴史あるオペラ座がクラブハウス化するのだ。天井にはシャガールの『夢の花束』が描かれ、赤い椅子と金の装飾。目の前には躍動感あふれる濃厚な世界観が繰り広げられる。

『レッド・カーペット』より © CHANEL
『レッド・カーペット』より © CHANEL

ホフェッシュ・シェクター © CHANEL
ホフェッシュ・シェクター © CHANEL

この舞台をさらに盛り上げるのは、オペラ座のグランドメセナを務めるシャネルとオペラ座のクチュール・アトリエとサヴォアフェールを集結した衣装で、イブニングウェアからインスピレーションを得ている。前半はスパンコールの真っ赤なドレスやチュールのドレス、タキシードや蝶ネクタイ。カメリアや手袋などの小物にもシャネルのグラムールの魔法がかかっている。後半はスキンカラーのヌードスーツに変わり、ヌードで踊っているかのような錯覚を起こす。しかし、カーテンコールでライトアップされたところで見ると皆違うシルエットになっていて、ドレープの美しさに気づく。

© CHANEL
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パンフレットにあるシェルターのインタビューに「バレエを観に行く時は物語があると期待します。このオペラ・ガルニエはコンサートホールでもあります。コンサートで感じるのはまず『エネルギー』。『レッド・カーペット』にも解読したくなる要素はたくさんあります。でも私が思うにダンスの世界に入る最良の方法は身を委ねることです」

© CHANEL
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10月にはサンフランシスコ、ニューヨークと北米ツアーをし、Paris Opera Play (POP)の配信プラットフォームで録画版が後日公開予定という。

「体は生きたがっている」そんな第六感を感じる舞台を日本でもオンラインでぜひ体験してほしい。

@balletoperadeparis

Text:Masae Takanaka Edit:Sayaka Ito

Profile

高中まさえ Masae Takanaka ファッションコーディネーター、スタイリスト。パリ在住25年。時々移動花瓶屋(@cabin.e.dream)。こよなく花を愛でるジャパニーズパリジェンヌ。Photo:Yoko Takahashi
 

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