
東京・神宮前のワタリウム美術館にて、北京を拠点に活動しているアーティスト、チェン・フェイの個展「父と子」が開催されている。
チェン・フェイ(陳飛)は、中国山西省生まれ。中国の上海余德耀美術館はじめ、ニューヨーク、パリ、香港のペロタンなどで個展を開催。2024年にはポンピドゥー・センター「目 中国:新世代のアーティストたち」に参加。日本では、2016年に富山の下山芸術の森発電所美術館で加藤泉と二人展「この世界に生きている」を開催している。そして本展は日本での初個展となる。

「チェン・フェイ展|父と子」では、2022年から25年にかけて制作された新作絵画、壁画、インスタレーション、ドキュメントなどが展示される。制作はコロナ禍にはじまり、その間にチェン・フェイは父親にもなった。先行きが見えない不安な状況で、子どもの成長に向き合うなかで、命や生活への信頼を取り戻せた感じがしたという。

そして思い出したのが、ドイツの漫画家E.O.プラウエンの『Vater und Sohn(父と子)』だった。セリフのないこの漫画には、ただただ、父と息子の日常が描かれている。ささやかな出来事と、確かな愛、穏やかな世界。この漫画は、ナチス時代に、非政治的な内容にすることという条件の下で描かれた。表現規制や弾圧が厳しい状況下で、言葉がないからこその深いメッセージが込められ、本の中での安寧の世界が人々を惹きつけた。
「プラウエンの時代と私の時代は大きく異なりますが、彼の作品にはどこか自分が重なるような気がします」と、チェン・フェイ。

チェン・フェイは自伝的なアプローチによって、中国人画家としてのアイデンティティ、夫と妻、同僚や友人との関係、取り巻く社会や世界、そして娘についてを描く。
「このシリーズの作品は、ある意味で”自分を救う”ようなものです。大きくて不確かな外の世界から、生命そのものへと引き戻し、より狭く、生活の源に近い場所へ戻る感じです」

10年来の友人でもあるというアーティストの加藤泉は「僕たちは国も世代も作品のタイプも違うけど、絵を通して世界に接続したいと思ってる、同じ種類のペインターだ」とコメントを寄せている。「父となった彼が世界をどう見てるのか? 新作の個展を東京で見れるのはホントに楽しみです!」
7月19日(土)には加藤泉との対談も予定されている。
ワタリウム美術館というサイトスペシィフィックな空間での展示、ぜひ訪れてほしい。

チェン・フェイ展 父と子
期間/2025年7月3日(木)〜10月5日(日)
休館日/月曜日(7/21、8/11、9/15は開館)
開館時間/11:00〜19:00
会場/ワタリウム美術館
住所/東京都渋谷区神宮前3-7-6
入館料/大人 1,500円、学生(25歳以下)1,300円
TEL/03-3402-3001
URL/www.watarium.co.jp
協力/PERROTIN
Text:Hiromi Mikuni
