“家族”についての自作を蓬莱竜太自身の演出で上演。新国立劇場『消えていくなら朝』 | Numero TOKYO
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“家族”についての自作を蓬莱竜太自身の演出で上演。新国立劇場『消えていくなら朝』

演劇が最も多く描いてきたテーマのひとつ「家族」。今シーズンの新国立劇場は「光景-ここから先へと-」と題し、社会での最小単位である「家族」が織りなす様々な風景から、今日の社会の姿を照らし出すシリーズだ。

第一弾となったチェコ共和国ブルノ国立劇場の『母』は、夫と5人の息子たちを次々と失っていく母の葛藤を描き、男性と女性の戦争や人生に対する価値観の溝を見せた。トニー賞も受賞した第二弾『ザ・ヒューマンズ』では、家族だからこそ分かちあえない現代社会の不安について描いていく。

どちらも遠く離れた、文化も家族構成も価値観も違う国の作品であるのに、家族である事から生まれる苛立ちや苦しみ、孤独といったものに共感を覚える物語ばかりだ。そして、一見、重苦しく深刻な話題でありながら、どこかユーモアを湛えた表現がされていることも「家族」というものをよく表していると感じる。

第三弾として上演される『消えていくなら朝』は、2018年に当時の芸術監督、宮田慶子演出で上演された蓬莱竜太の作品である。

 

今回は、演出も担当する蓬莱自身の私戯曲的な側面を持った作品で、久しぶりに帰省した劇作家の「僕」とその家族をめぐる一晩の物語だ。表面的な会話から、だんだんと長年抱えてきた不満や本音が飛び出し、ヒリヒリとした会話の応酬が展開されるが、どこか滑稽な面も見える。

当初、蓬莱が自分では演出しないことを前提に書いたというこの作品は、フルオーディションでキャスティングした出演者たちと作り上げていく形式を取っている。

最終的には、家族としてのバランスを見極めながら配役を重視し、大谷亮介、関口アナンら6人のキャストが選ばれた。そこから約1年という時間をかけて、それぞれが役とじっくり向き合い、自分の中で役を育てながら、本番に備えている。

『母』のシアタートークで、ブルノ国立劇場の芸術監督ミラン・ショテクは「演劇の醍醐味は、ステージで起きていることを自分の中に映して考えられることだ」という意図のコメントをしていた。

まさに、自分と家族の在り方を心の片隅に置きながら味わう作品になりそうだ。

舞台 シリーズ「光景─ここから先へ─」Vol.3『消えていくなら朝』
作・演出/蓬莱竜太
芸術監督/小川絵梨子
主催/新国立劇場

キャスト/大谷亮介 大沼百合子 関口アナン 田実陽子 坂東 希 松本哲也
会場/新国立劇場 小劇場
公演日程/2025年7月10日(木)~27日(日)
チケット料金(税込)/A席7,700円 B席3,300円 Z席(当日)1,650円
URL/https://www.nntt.jac.go.jp/play/morningdisappearance/

チケット申し込み・お問い合わせ
新国立劇場ボックスオフィス TEL/03ー5352-9999 (10:00~18:00)
新国立劇場Webボックスオフィス URL/https://nntt.pia.jp/

Text:Reiko Nakamura

 

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