『シラノ・ド・ベルジュラック』は、文才はあるが容貌にコンプレックスのあるシラノが、密かに思いを寄せる幼馴染に、他の男のラブレターを代筆することで愛を伝える物語だ。演劇のみならず映画化も幾度となくされ、一説には世界中で最も多く上演されている戯曲と言われている。演劇として上演されるだけでなく、スピンオフ作品の多さも際立つ、名作戯曲だ。
日本でも1926年に『白野弁十郎』として翻案・初演された後、新国劇の島田正吾が一人芝居として再演を重ねた。その後、島田の弟子の緒形拳もこの作品を受け継いでいる。他にも、文学座や劇団四季、宝塚、歌舞伎役者による舞台化、ミュージカル化など枚挙に暇がない。
今回上演されるのは、この究極のロマンティックストーリーが生まれた舞台裏を、抱腹絶倒のコメディに仕立て上げた「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」だ。
この作品は、映画監督としても活躍するフランスの若手劇作家・演出家アレクシス・ミシャリクによって、2016年にパリで初演され大ヒット。上演回数700回を超えるロングランとなった。2017年のフランス演劇界最高の栄誉と言われるモリエール賞には7部門でノミネートされ、作品賞、脚本家賞、演出家賞など5冠を達成。2018年にはミシャリク自身の手によって映画化もされている。
日本初演は、2023年の新国立劇場。マキノノゾミ演出、加藤シゲアキ主演で行われた。フランス喜劇の香りを残しつつ、テンポの良さと開演が迫る戯曲家のドタバタ具合を描いて、多くの観客を魅了している。
今回もマキノノゾミ演出、加藤シゲアキ主演は変わらず、舞台をPARCO劇場に移して上演される。
上演に際してマキノノゾミは「新作劇の初日を開けるまでのムチャぶりの連鎖!迷走につぐ迷走!劇作家の受難につぐ受難ぶり!これはもう同業者として同情を禁じ得ないどころの話ではありません!いやもう実にリアル!実に滑稽!(だって現実の自分自身も、今まさにその状態の渦中ですから!)」と、既に笑えるコメントを発表。もう、幕は上がっているのか?と思わされる。
主演の加藤シゲアキも「NEWS」のメンバーとしてデビューしながら、2021年『オルタネート』で吉川英治文学新人賞、高校生直木賞を受賞。同作は直木賞候補にもなり話題を呼んだという、文才の持ち主だ。作家としての苦悩を演じさせるのにはもってこいの人物である。
加藤も「作品が書けず追い詰められていくエドモンには、私としてはやはり共感しかありませんし、だからこそ『シラノ・ド・ベルジュラック』という傑作が生み出されたのだと思えば、この再演をやらない理由もなく、私は再び走り回る準備を始めています」と、言葉を寄せている。
スピンオフの作品が多いのは、本体となる作品に魅力があるから。『シラノ・ド・ベルジュラック』のファンもそうでない人も、作品に思いをはせながら、しばし抱腹絶倒の舞台を楽しんでみてはいかがだろうか。
舞台 パルコ・プロデュース2025「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」
作/アレクシス・ミシャリク
上演台本・演出/マキノノゾミ
出演/加藤シゲアキ
村田雄浩 瀧七海 細田善彦
福田転球 三上市朗 土屋佑壱 枝元萌 佐藤みゆき 阿岐之将一
堀部圭亮 安蘭けい
企画・製作/株式会社パルコ
<東京公演>
公演日程/2025年4月7日(月) ~ 2025年4月30日(水)
会場/PARCO劇場
料金 /12,000円(全席指定・税込)
チケットに関するお問合せ/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日 12:00〜15:00)
公演に関するお問合せ/パルコステージ 03-3477-5858
<大阪公演>
公演日程/2025年5月9日(金)・10日(土)
会場/東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
料金 (全席指定・税込)/S席12,000円 A席9,800円
一般発売日/2025年4月13日(日)
主催/サンライズプロモーション大阪
お問合せ/キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日・祝除く)
<福岡公演>
公演日程/2025年5月17日(土)・18日(日)
会場/福岡市民ホール 大ホール
料金 (全席指定・税込)/S席12,000円 A席/10,500円
主催/読売新聞社/チケットぴあ九州
お問合せ/キョードー西日本 0570-09-2424 11:00〜15:00(日曜日/祝日休)
<愛知公演>
公演日程/2025年5月24日(土)12:00開演、17:00開演
会場/豊田市民文化会館 大ホール
料金 (全席指定・税込)/S席12,000円 A席9,800円
一般発売日/2025年4月13日(日)
主催/キョードー東海/サンライズプロモーション大阪
お問合せ/キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日・祝除く)
Text:Reiko Nakamura