20世紀に始まった住宅をめぐる革新的な取り組みを、モダン・ハウスを特徴づけるさまざまな観点から再考する展覧会「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」が、東京・六本木の国立新美術館にて開催だ。
1920年代以降、ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエといった多くの建築家が機能的で快適な新しい住まいを探求。その実験的なヴィジョンと革新的なアイデアはやがて日常へと波及し、人々の暮らしを大きく変えてきた。
当代の暮らしを根本から問い直し、快適性や機能性、そして芸術性の向上を目指し建築家たちが設計した、戸建ての住宅14邸を紹介する本展。1920年代から70年代にかけて建てられたそれらのモダン・ハウスは、国際的に隆盛したモダニズム建築の造形に呼応しつつも、時代や地域、気候風土、社会とも密接につながり、家族の属性や住まい手の個性をも色濃く反映してきた。理想の生活を追い求めた建築家たちによる暮らしの革新は、それぞれの住宅に固有の文脈と切り離せない関係にあると言えるだろう。
一方、それらの住宅は、近代以降の普遍的な課題を解決するものでもあったという。身体を清潔に保つための衛生設備、光や風を取り込む開放的なガラス窓、家事労働を軽減するキッチン、暮らしを彩る椅子や照明などの調度、そして住まいに取り込まれた豊かなランドスケープは、20世紀に入り、住宅建築のあり方を決定づける重要な要素となった。本展では、それら衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープというモダン・ハウスを特徴づける7つの観点から、現在に至る住宅をめぐる革新的な試みを考えていく。
見どころをいくつか紹介する。本展では、大規模建築も数多く手がけた著名な建築家たちが自ら設計した自邸を多く取り上げる。細部まで工夫を凝らしたこだわりの自邸からは、機能や快適さの追求はもちろん、住まうことの楽しさや喜びへの真摯なまなざしも垣間見ることができる。そのひとつ、土浦亀城による自邸は、現在ポーラ青山ビルディング敷地内に復原、移築されて話題を呼んだのも記憶に新しい。
（参考）「土浦亀城邸」が復原、移築。ライトに学んだ建築家の木造モダニズム住宅が公開
またアメリカやヨーロッパ、ブラジルなど国内外から貴重な作品が集結。ミース・ファン・デル・ローエやアルヴァ・アアルトらが描いたドローイングや、建築家が住まいとともにデザインした家具や生活道具、映像なども紹介される。彼らが手がけた椅子や机、照明器具など、今なお生産され使い続けられる名作のルーツを辿ることができる。
また近代建築の巨匠ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの未完のプロジェクト「ロー・ハウス」の原寸大展示が見逃せない。実在するものがない中、残された図面や資料をもとに模型をつくり、原寸大での実現は世界で初めての挑戦だ。
今から100年ほど前、実験的な試みとして始まった住まいのモダニティ。人々の日常へと浸透し、今なおかたちを変えて息づいている。本展は、今日の私たちの暮らしそのものを見つめ直す機会となりそうだ。
※掲載情報は3月30日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」
会期／2025年3月19日（水）〜6月30日（月）
会場／国立新美術館 企画展示室1E/2E
住所／東京都港区六本木7-22-2
時間／10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで ※毎週金・土曜日は20:00まで
休館／火曜 ※4月29日（火・祝）、5月6日（火・祝）は開館、5月7日（水）は休館
料金／一般1,800円、大学生1,000円、高校生500円 ※中学生以下は入場無料
URL／living-modernity.jp
Text：Akane Naniwa
