
ヴァレンティノ(Valentino)は日本時間2025年3月9日(日)、フランス・パリのアラブ世界研究所でクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ ミケーレが手がける2025-2026年秋冬コレクション「ル メタ テアトロ デ アンティミテ(LE MÉTA-THÉÂTRE DES INTIMITÉS)」を発表。
ショー会場には、アンバサダーを務めるフリーン・サローチャやジェフ・サターをはじめ、日本からはなにわ男子の道枝駿佑も来場。ブランドの独創的なビジョンが反映された最新コレクションを堪能した。
ミケーレの2回目のプレタポルテショーでは、「親密さは真実にたどり着く手段なのか?」という問いをテーマに、親密さを「自己と向き合う場」ではなく「演じる場(メタ劇)」と捉え、真の自己は幻想かもしれないという視点をウィトゲンシュタインやヴァレリーの哲学を通して提示した。ミケーレは「公衆トイレ」という内と外、隠すことと見せることが交錯する空間に着目し、このコンセプトを視覚化。会場はヴァレンティノレッドに染まり、デヴィッド・リンチの映画を思わせるディストピア的な雰囲気が漂った。
レトロなムードが漂う最新コレクションは、バリエーション豊かなルックがランウェイを彩り、独自の華やかな世界観を創り上げた。ヴィンテージ感のあるフリルやレース、リュクスなファー、クラシックなジャケットスタイルがモダンに再解釈され、ミケーレ自身も「1960〜80年代のヴァレンティノ黄金時代を彷彿とさせる」と語る。ニットのヘッドバンドやバラクラバで統一されたヘアスタイルが、コレクションのノスタルジックな魅力を引き立てていた。
ファーストルックを皮切りに、ランジェリーを思わせる繊細なレースと、ボディラインを引き立てるフィット感のあるシルエットが印象的だった。透け感のあるレーストップスは、インティメイトな要素を取り入れつつ、シルクやサテンのディテールがエレガンスを引き立てる。総レースのボディスーツやストッキング、ヌーディーカラーのブラなど、センシュアルなムードを演出するアイテムが次々と登場。フェミニンでありながらも洗練された、大胆なスタイルを提案した。
ミケーレが得意とする色使いや装飾は、コレクションの核となる要素。ビビッドなレッドや光沢感のあるエメラルドグリーン、ゴールドが巧みに組み合わされ、ドラマティックなコントラストを演出。さらに、繊細なビーズ刺繍やリボンモチーフが華やぎを添え、装飾的でありながら洗練された印象に仕上げられた。これにより、コレクション全体に豊かな表情と奥行きが生まれ、圧倒的な存在感を放っていた。
ランウェイでひと際視線を集めたのは、ヴァンズ(Vans)との初コラボレーションによるスニーカー。クラシックなチェッカーボード柄のスリッポンや、ヴァレンティノのロゴを大胆にあしらったレースアップ「Authentic」などが展開された。ミケーレならではの遊び心とエレガンスが融合し、カジュアルながらもブランドのアイデンティティを際立たせる仕上がりとなった。
ミケーレの手によって生まれ変わったヴァレンティノは、華やかさの中に哲学的な問いを織り交ぜ、新たなファッションの可能性を示した。このショーは単なるコレクション発表ではなく、観る者の価値観に揺さぶりをかける、強烈なメッセージそのものであった。
ヴァレンティノ インフォメーションデスク
TEL/03-6384-3512
URL/www.valentino.com
Text:Naomi Sakai