太郎千恵藏の1990年代の代表作と新作絵画を中心とした展覧会「Passion」が、東京・日本橋馬喰町のPARCELで開催中だ。同ギャラリーでの展覧会は2年ぶりとなる。
1991年にニューヨーク・ソーホーのギャラリーで、デニス・オッペンハイムらと「⾒えない⾝体」展で芸術家としてデビューした太郎千恵藏。奈良美智、村上隆らと並び、90年代のネオポップを代表する作家だ。
2025年2月には、東京国⽴近代美術館にて『戦争(ピンクは⾎の⾊)』を含む代表作3点が新収蔵。本作は同館無期限貸与の藤⽥嗣治『アッツ島⽟砕』や『⾎戦ガダルカナル』などの戦争画の⽂脈上にあり、ポストモダンを複製技術の時代として捉えた戦争画であるといえる。
現在、個展「Passion」が開催中。会場であるPARCEL(東京・日本橋馬喰町)は、本誌も注目する気鋭のアートギャラリーだ。
(参考)アーティストコーディネーター、倉田佳子がナビゲート! “現代アート+α” の複合スペース
本展で公開される『経済の法則』は、『戦争(ピンクは⾎の⾊)』と同シリーズの⼤作のひとつ。ウィリアム・ターナーの作品『国会議事堂の⽕災』を引⽤し、特撮のヒーローが燃えている下半⾝を⾃ら消⽕している姿は当時の⽇本社会が直⾯していたバブル崩壊への対応を表しているかのようである。
また⽇本の近代美術史における戦前の前衛芸術と漫画の関係をテーマにした新作絵画も公開。90年代からたびたび描かれてきた「一つ眼」モチーフは、視線の複数性や眼差しの問題ではなく、鑑賞者を「物」(イマージュの総体としての)にしてしまうような強さがある。そのほかにも戦前の前衛芸術運動「MaVo」の雑誌の表紙を描いた地に猫と⽝をモンタージュした⾼⾒沢路直へのオマージュの絵画や、戦前の前衛画家・岡本唐喜をオマージュした絵画も公開。これを機に太郎千恵藏の作品世界観に触れてみては。
※掲載情報は3月1日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
太郎 千恵藏「Passion」
日時/2025年2⽉22⽇(⼟)〜3⽉30⽇(⽇)
会場/PARCEL
住所/東京都中央区⽇本橋⾺喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F
休廊/⽉・⽕・祝日
URL/parceltokyo.jp/
Text:Akane Naniwa