永野芽郁、KARINA、ENHYPENら来場。「Prada」2025春夏ウィメンズコレクション
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永野芽郁、KARINA、ENHYPENら来場。画一的な世界に予測不能な独創性で抗う「Prada」2025春夏ウィメンズコレクション

プラダ(PRADA)は、2025年春夏ウィメンズコレクションを、現地時間の9月19日にミラノで発表。ランウェイ形式で行われたファッションショーのフロントロウには、ブランドアンバサダーを務める俳優の永野芽郁をはじめ、韓国のガールズグループ aespa(エスパ)のKARINAENHYPEN(エンハイプン)、ジェヒョン(NCT)、キャリー・マリガン、サラ・ポールソンなど数多のセレブリティが顔を揃えた。

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「INFINITE PRESENT」──直訳するならば、“限りない今”、“無限の存在”と題された本コレクション。コレクションノートによると、それはインターネットがもたらすアルゴリズムによって導かれる限定された世界への懐疑的な視点。そして、個々人の人間性やパーソナリティを形成するものが、予想不可能な意外性であることを表現したのだという。

とはいえ、そこにあからさまなメッセージ性やコンセプトを補完するような演出は一切見当たらない。モデルたちが歩くランウェイの側に観客席を置いただけの簡素なセットの中で、英国の現代音楽家・COSEY FANNI TUTTIによる不穏な電子音が流れると、拍子抜けするほど淡々とショーはスタート。ファーストルックは、小花柄のワンピースにスタッズ付きのワンストラップシューズを合わせたもの。ツイストして壊れたような肩紐のディテールや捲り上げたようにワイヤーで固定されたヘムラインが印象的だが、ごくシンプルな装いだ。

その後に続くルックもとくに一貫性はなく、脈略のない出順だったのは、同時進行する複数の現実というプラダからのメッセージを表すものであり、すべてのルックにそれぞれの現在が反映されているという。それを加味すれば、ファーストルック自体も本コレクションを象徴する特別な意味付けではなさそうだ。それでも、序盤に登場した身頃にループ状のシルバーパーツをあしらったドレスや、穴をくり抜いたメタリックなスカート、ゴーグルを埋め込んだハット、顔半分が隠れるようなオプティカルなアイウェアなど、レトロスペーシーなアイテムはコレクションを通して散見された。

予測不可能な意外性を象徴するように、ちょっとした違和感のあるディテールやルックも目立った。端正なシャツとワイドシルエットのトラウザーを合わせたルックでは、ポインテッドカラーの襟先が跳ね上がっていたり、フェイク“襟”やボトムスにプリントしたフェイクベルトなど、トロンプルイユ(騙し絵)のディテールも多方に見られた。クラシックなチェスターコートやレザージャケットのインナーにスイムウェアを合わせたルックに象徴されるシーズンレスな装いは、トレンドや趣味嗜好までも型に押し込めるアルゴリズムでは図れないはずだ。

BGMがニューヨークのプロトパンクバンド、SUICIDEの『Rocket USA』に変わると、さらに雑多な印象は加速する。大胆なブラトップとマニッシュなトラウザーを合わせたルックがあるかと思えば、おじさんが着るようなスイングトップをショート丈にモダナイズさせたトップス、フォーキーなスエードコート、コンサバティブなニットワンピースなど、多様なスタイルがバラバラと続く。春夏コレクションでありながら、ツイード素材やファー付きのウールコートなど、重衣料を使ったルックが多かったのも混沌さに拍車をかけていた。コレクションノートの中では、無限の選択肢が無限のチャンスを生むとし、そのチャンスこそが自由意志の表現の発露だと説いている。多様な選択肢の中から自分自身で選び取ることが、スタイルや人間性の形成において大切であると伝えたかったに違いない。

細部に目をやると、プリーツスカートやスラックスに採用されていた、ベルトとボトムスをガーターベルトの要領で繋いだハードウェアが印象的だった。フェティッシュで力強い意匠は、シンプルなルックを個性的に一変させる効果があった。小物類では、シューズの充実ぶりが際立つ。フルブローグのアッパーとチャンキーなウェッジソールを掛け合わせたようなドレスシューズや、トゥとヒールにホットロッドカーのファイヤーパターンをモチーフとして応用したパンプスなど、その多くがかつてのアーカイブデザインを踏襲したもの。

これらについては、プラダが培ったそれぞれの時代を代表する要素を共存させることで、時間軸に左右されない矛盾に満ちた多様な視点を表現するものだという。矛盾という強い言葉を使っているように、アルゴリズムによる画一的で漂白された世界を否定すると同時に、新旧の情報をフラットに俯瞰できるインターネットの優位性を示唆していたのかもしれない。

また、派手な仕掛けや凝った演出は皆無だったが、BGMは抜群であった。COSEY FANNI TUTTIのインダストリアルトラックからまさかのSUICIDE、さらに、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの『Sospesi nel cielo』といった意外性に富んだ選曲が、コレクションの多様さや狙い通りの散漫さを後押していたのは間違いない。

最後に改めてコレクションノートを引用したい。「スーパーヒーローという考えは、個々そして彼らの行動、変身手段としての創造性が持つ力の重要性の描写である」と記されている。作り上げられたヒーローやヒロインを偶像視するのでなく、自身の想像力を育むことが個性に繋がり、自分こそが己の英雄であるという考え方は、自己表現としてのファッションを端的に捉えたもの。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズが本コレクションを通じて伝えたかったことが、このシンプルで本質的なメッセージに集約されているはずだ。

プラダ クライアントサービス
TEL/0120-45-913
URL/www.prada.com

Text:Tetsuya Sato

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