石井麻希と石田恵嗣の二人展「Shake Hands」開催中 | Numero TOKYO
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石井麻希と石田恵嗣の二人展「Shake Hands」開催中

東京・日本橋馬喰町にあるparcelにて石井麻希と石田恵嗣による二人展「Shake Hands」を開催中だ。

Photo credit:Kohei Omachi (W)
Photo credit:Kohei Omachi (W)

2019年6月東京・日本橋馬喰町にあるDDD HOTELの一角にオープンして以来、話題の展覧会を企画してきたPARCEL。今回の二人展は、すぐ近くのビル内に2022年2月にオープンした姉妹スペースのparcelで開催中だ。本誌でも今注目すべき東京の「“現代アート+α”の複合スペース」として紹介した。

(参考)PARCEL|日本橋馬喰町 ホテルの一角に広がる先鋭アートギャラリー

ベルリンを拠点とする石井麻希は、アイデンティティの不確実性やメディアの役割に関する批評的な視点を持ち、映像やインスタレーションを通じて人間を取り巻く「他者」との関係を模索するアーティスト。動物や自然環境といった「非人間」の視点を取り入れるための実験的なアプローチが反映されており、そのプロセスで彼女が協働する動物コミュニケーターとの対話も、作品の重要な一部を形成している。
なお現在ギャラリーCapsule(東京・池尻)でも個展「WHAT YOU DON’T NEED IS MY TREASURE “あなたに必要のないものはわたしの宝”」を開催しており、こちらも話題を呼んでいるところだ。

Photo credit:Kohei Omachi (W)
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Photo credit:Kohei Omachi (W)
Photo credit:Kohei Omachi (W)

本展では、雑誌『3.3333333….x3』の第3、4号を展示。ベルリンの動物園や樹木をテーマにした作品が紹介され、人間中心主義を超える視野をもたらすと同時に、日常における観察行為の再構築を促すという。人間が社会的・文化的に構築したアイデンティティやコミュニケーション、消費社会の枠組みを観察し直し、我々が目にしているものの背後にある異質な存在の気配に目を向けさせる作品だ。

一方石田恵嗣は、広島を拠点に、童話や絵本といった出版物など、広く共有されている物語形式を出発点に、個人の体験や時代に関わらず普遍的な物語性を追求している。綿密なリサーチに基づき、童話のようなファンタジー性を含みながらも、アノニマスな挿絵や時代を超えたシンボルを取り込み、時間の流れが絵画という静止した世界で交錯しているかのように構築するのが特徴的だ。単なるファンタジーを超え、現実と非現実の境界を曖昧にし、観るものに新たな時間性と空間性の認識を促すものである。

Photo credit:Kohei Omachi (W)
Photo credit:Kohei Omachi (W)

異なる表現形式を通じて「異界の視点」を探る二人の作品が、互いに呼応しあうことで、予期せぬ対話が生まれる本展。既成の認識を超えた「物語」と「他者」を扱うという点で共鳴するとともに、鑑賞者に対して、単に視覚的な美しさを提供するだけでなく、自己を取り巻く世界の枠組みそのものを問い直す機会となるはずだ。またこの共鳴は、絵画や雑誌などのドキュメンテーションといった静止したメディウムを通じて新たな知覚の可能性を探る姿勢も示している。ぜひお見逃しなく。

※掲載情報は12月24日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

「Shake Hands」
日時/2024年12月14日(土)〜2025年1月19日(日)
会場/parcel
住所/東京都中央区日本橋馬喰町 2-2-14 まるかビル 2F
時間/14:00〜19:00
休廊/月・火・祝日、12月23日〜1月7日冬季休暇
URL/parceltokyo.jp/

Text:Akane Naniwa

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