安藤サクラ、出口夏希らが来場。中国・杭州を舞台に創作の源泉を辿る「Chanel」2024-25年メディエダール コレクション
シャネル(Chanel)は、2024-25年メディエダール コレクションを、中国・杭州で開催。メゾンのアンバサダーを務めるティルダ・スウィントンやワン・イーボー(王一博)に加え、日本からは映画監督の是枝裕和や俳優の安藤サクラ、出口夏希ら豪華セレブリティが参加し、ランウェイショーを見守った。
本コレクションのインスピレーション・ソースとなったのは、かつて、ガブリエル・シャネルがこよなく愛し、ハイジュエリーのモチーフにもなった中国漆の芸術品、コロマンデル屏風。なかでも、パリのカンボン通り31番地にあるアパルトマンの書斎の壁に飾られたお気に入りの一隻には、今回の舞台となった杭州 西湖の風景が描かれており、コレクションを通じてメゾンの創作の源泉を辿っていく。前任のヴィルジニー・ヴィアールが退任後、アーティスティック・ディレクター不在のため、今回もクリエイション スタジオがコレクションを完成させた。
西湖のほとりに建てられた半円状の会場を起点に、一本道のランウェイが湖面に架かる。湖越しに美しくライトアップされた紅葉を望む幻想的な空間で、和太鼓の音を合図にショーがスタート。ファーストルックは肩の落ちたロングコートで、メランジ調のツイードにラメのような煌めきを織り交ぜ、ラペルには立体的な花の刺繍が施されている。足元に合わせたのはビジューを散りばめたロングブーツで、水面に反射する光と美しい調和を生む。続いて登場したロングコートは、構築的なショルダーラインとフロントや袖口にあしらったシルバーの小花刺繍が目を惹く。
序盤はカラーパレットもほぼ黒一色。それでも、漆のようなテクスチャーが表出したパテントレザーのジャケットには、葉脈をイメージした模様がエングレービングで表現され、バッグやジャケットの身頃には、旅先でしたためる手紙を想起させる封筒型ポケットを配すなど、メゾンのサヴォアフェールを支える工房、ル ナインティーンエム(Le19M)の職人技が細部に宿っている。
色柄も含めてシックかつ抑制を効かせた序盤に対し、BGMがSpeakers Corner Quartetの『This In How We Walk on the Moon』に変わると、雰囲気も一変。シャネルらしいコンパクトなノーカラージャケットは、短丈にアレンジしてインナーに印象画のような淡いタッチで屏風の柄を表現したボディスーツを合わせたり、ツイード素材のワンピースの下に共地のボトムスを合わせるなど、レイヤードに変化を付けたルックも散見された。また、シグネチャーともいえるツイードのジャケットとスカートには、トゥ部分を切り替えたスエードのサイハイブーツを合わせるなど、クラシカルな佇まいに躍動感をプラス。伝統をフレッシュに更新していく重要性を印象付けた。
ディテールや小物に目を向けると、フリルが段になったティアードスカートやストレートカットのジャケットにアクセントを添えた帯のようなウエストマーク、さらに、チャイナジャケットなどに見られるフロッグボタンや宮廷衣装のようなシルク地のドレスなど、中国文化への憧憬も随所に伺えた。一方で、波打ったブリムのハットを被り、大きなボストンバッグを携えたルックや、ナイトウェアのようなシルクサテンのセットアップ、もこもこしたパステルカラーのウエアに合わせたピローケース型のクラッチバックなどは、コレクションのテーマでもある「旅」や「夢」を連想させる。
ショーの最終盤、クラウトロックを代表するバンド、タンジェリン・ドリームの『Love On a Real Train』が流れると、ドリーミーで幻想的なムードは加速。Le19Mのメゾンダールであるプリーツメーカー「ロニオン」や、羽根細工を手掛ける「ルマリエ」が生み出す一糸乱れぬ美しいプリーツが観る者をロマンティックな世界に導き、ドレスの襟元にあしらったピエロカラーや精緻なインレイレースは、ひととき夢の中へ誘っていく。
ガブリエル シャネルのクリエイティブな世界観と唯一無二のスタイル、そしてインスピレーション・ソースを再考する試みは、伝統に裏打ちされた技術力の高さの証左でもある。パリから杭州へと続く夢の旅路は、同時にファンタジーあふれる世界を裏側で支える名も知らぬ職人たちの存在を雄弁に称えるものでもあった。
Chanel
シャネル カスタマーケア
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Photos: Courtesy of CHANEL Text: Tetsuya Sato