写真家・蓮井元彦の写真展「アフターオール」が12月8日まで開催中
写真家の蓮井元彦による写真展「アフターオール」が12月3日(火)〜8日(日)の6日間にわたって東京・四谷のTOTEM POLE PHOTO GALLERYで開催される。
モノクロの世界で皺や血管、骨ばった脚の陰影は強く現れ、光を反射する若々しい緑は美しく輝いて、人間と自然の生をありありと映し出す。写真展「アフターオール」では、死を思い、生と向き合った蓮井の作品の数々が展示される。
蓮井元彦 ステートメント
母の癌が見つかってから一年と十ヶ月。
余命三ヶ月、長くて六ヶ月と医者に告げられてから母は懸命に生きた。
病気を受け入れ生きる事をやめてしまわないで、愛する骨董屋という仕事を続け、逝ってしまう二週間前まで愛車のオンボロ軽トラを乗り回し仕事を続けた。そして動けなくなって初めて「病気には勝てないね」と病室で呟いたのを覚えている。その言葉は諦めというよりはむしろ「やるだけのことはやった」という風に僕には聞こえた。
何を成し遂げたかという事ではない ― 成し遂げようと生きることが大切だということを母の身をもって教えられた気がした。
もちろん、母が本当に何を感じ何を思っていたのかは僕には分からない。ものすごく怖かっただろう。ただ単に唯一の楽しみであった仕事を続けていきたかっただけだったのかもしれない。しかし、残された僕の身としては少なからずそこに意味を見出そうとしてしまった。そう思うこと以外に母を失った喪失感は和らがない気がしたのだ。そういう意味では母の写った写真や、そこに母が写っていなくとも母を想い撮られた写真を振り返ることも同じ事なのかもしれない。現時点で僕はその喪失感が一体僕に何を投げかけ、僕にどうしろというのか分からない。いつかその意味が分かる時が来るのか。そもそも、そこに意味はあるのか。
母が息絶えゆく時、それは今まで僕が見たことのある光景で例えて言うならば、青々とした草花が徐々に枯れていく様子に似ていると思った。そして、母もまた生命だったのだと知った。
母は最期に僕にこう言った。「頑張れよ、楽しみにしてるよ」と。
それはとても力強い一言だった。
蓮井元彦写真展「アフターオール」
会場/TOTEM POLE PHOTO GALLERY
住所/東京都新宿区四谷4丁目22 第二富士川ビル1F
会期/2024年12月3日(火)〜12月8日(日)
開場時間/12:00〜19:00
URL/https://tppg.jp
Text: Miyu Kadota