不穏な世界で鮮烈なインパクトを残す生徒たち。映画『クラブゼロ』のこだわりの衣装に注目！
ミヒャエル・ハネケに師事した気鋭監督ジェシカ・ハウスナーによる映画『クラブゼロ』が12月6日より日本公開となる。物議を醸すテーマ設定と鮮烈なビジュアルで強いインパクトを放つ作品を次々と発表し話題を集めるジェシカ・ハウスナー監督。本作は『リトル・ジョー』（19）に続き、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されているが、過去に手掛けた4作の長編映画もカンヌ映画祭に選出されるなど、各国の映画祭から熱視線を集めている。
そして本作の主演は『アリス・イン・ワンダーランド』（10）をはじめ、『クリムゾン・ピーク』（15）『イノセント・ガーデン』（13）など、ハリウッド大作から個性派監督の作品まで幅広く出演し、多彩な才能を発揮する演技派、ミア・ワシコウスカ。
ミアが演じるのは名門校に赴任してきた栄養学の教師、ノヴァク。彼女は“意識的な食事/conscious eating”と称した独自の健康法を生徒たちに教える。それは「少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができる」というもの。無垢な生徒たちは彼女の教えにのめり込んでいき、事態は次第にエスカレートする。両親たちが異変に気づきはじめた頃にはすでに生徒たちはノヴァクとともに「クラブゼロ」と呼ばれる謎のクラブに参加することになる。
栄養学の教師ノヴァクが導くのは、幸福か、破滅か――。物語の行方にも期待が高まるところだが、本作でもう一つ注目を集めているのが、カラフルでポップなファッション。海外メディアでも「鮮烈で饒舌な色彩と衣装」（SCREEN）などと評され、多くの観客を魅了している。
スタイリングを担当したのは、監督の姉でもある衣装デザイナー、ターニャ・ハウスナー。これまで『ルルドの泉で』（09）や『リトル・ジョー』（19）でも衣装を担当し、両作でオーストリア映画賞最優秀デザイン賞にノミネートを果たすなど、ジェシカ監督作品に欠かせない存在だ。これまで数多くの作品でタッグを組み、作品のビジュアルは映画のアイデア段階から話し合っているという。
「私たちはカラーパレットのように大胆なアイデアにこだわります。リアリズムよりも、常にある種の皮肉とともに、意外性をもたらす演出を心がけています。演劇の世界では、最初は素晴らしいコンセプトがあっても、時間の経過によりどんどん縮小し、最後に残るのは試みに過ぎない、ということがよくあります。私たちは一緒に大胆なコンセプトをデザインして、最後までそれを貫きます」（ターニャ）
色鮮やかな衣装やセットが広がるその光景は、終始漂う不穏な空気とのギャップを際立たせている。中でも一際目を奪うのは、一度見たら忘れられない、ビタミンカラーの制服を身にまとう生徒たちの姿。
「ジェシカの映画では、制服がどれも大きなテーマ。『リトル・ジョー』では白衣、『ルルドの泉で』はマルタ騎士団、そして『クラブゼロ』では学生服。制服はとても個性的で、インパクトを増幅させ、常に強いイメージを作り出します」と過去作を挙げながら、制服へのこだわりを明かす。さらに「本作では、ブレザーやネクタイ、紋章、スカートやズボンで構成されるようなイギリスの学校の制服に見えないよう意識しました。ポロシャツと冬用のスウェットシャツだけのカジュアルなものにしたかったのです。全体的に陽気な配色で、暗く脅威的な印象の学校とは対照的にしました」と狙いを語る。
ターニャは、「黄色い制服を着た子供たちが、暗い壁の前で光輝くミツバチのようにブンブンと飛び回るのが素敵だと思ったのです」と振り返っている。また、当初は男女で異なるデザインする案についても考えていたそうだが、最終的にはユニセックスの制服にたどり着いたといい、「本当は男子用に短いズボンをデザインしようとしましたが、パンツスカートのようなものが出来上がり、若者たちの中性的な体型によく会いました。男女で区別がないところが良いです」と満足げな様子でコメントも残している。
健康的な心身、環境保護、自制心を鍛える、持続可能な生活、奨学金を得るため……さまざまな目的を持ち栄養学の授業を選択した純粋無垢な生徒たちの心を、妙に説得力のある言葉や包容力で徐々に支配していく教師ノヴァク。ノヴァクの目的とは、一体何なのか。
“ハマるとヤバい”物語の魅力をより引き立たせる、こだわり尽くされた衣装の数々にもぜひご注目を。
『クラブゼロ』
出演／ミア・ワシコウスカ
脚本・監督／ジェシカ・ハウスナー
撮影／マルティン・ゲシュラハト
Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023
https://klockworx-v.com/clubzero/
12月6日（金）より、新宿武蔵野館ほか全国公開
