アラン・デュカスの新たな挑戦！ パリのビスケット専門店がついに日本初上陸
獲得する星の数は世界一のフランス料理シェフ、アラン・デュカスの次なる挑戦は、ビスケット。世界初進出となるビスケット専門店が10月24日、日本橋にオープン。パリ本店の味を日本の食材で再現したハイクオリティなビスケットは、ひと口で幸福いっぱい！
シェフ・アラン・デュカスの一貫した哲学は「あらゆる工程において伝統を大切にする、丁寧で緻密な仕事へのこだわり」。そしてこのビスケットは「一口一口がそれぞれの歴史を、私たち作り手の情熱を物語ります」。デュカスさんの思いのこもった言葉に、どうやらこれは私が口にしていたビスケットとはまったく別モノのようだと、背筋も伸びます。一体、どんなビスケットなのでしょう？
10月24日、日本橋にオープンしたビスケット専門店「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」は、すでに食通に人気の彼のショコラ専門店に併設。通りからも大きなガラス窓から、パリの街角にありそうな店内の様子やパティシエたちの様子がうかがえます。ここは世界各国30店舗以上のレストランを展開するアラン・デュカスさんが独自の専門工房で製造販売を行うブランドとして生み出した、新しい挑戦のひとつ。
ちなみに照明とドアハンドルはデュカスさん本人のアンティーク・コレクションだとか。ショーケースにはビスケットがジュエルのようにひとつ、ひとつ、あるいは箱詰めになって並んでいます。あたりはほんのりバターのいい香り、ここにいるだけで幸せな気分。
この特別なビスケットについて、オープンにあわせて来日したアラン・デュカスさんにお話を伺いました。
──デュカスさんのビスケットは、他とはどこが違うのでしょう？
「妥協のない素材選びと完璧な調合、完璧な焼き時間といったノウハウ。ディテールまでこだわり、試行錯誤に一年間を費やしました。
サスティナブルの観点からも“地産地消”をコンセプトとしているので、私が満足するクオリティの材料を国産でできるだけ探しました。ただ、バターと塩だけはフランスから輸入をしています」
──では、ノウハウの面ではいかがでしょう？
「実は何よりも大事なのはノウハウ。今回、私と12年間一緒に仕事していて、“マダム・ビスキュイ”と呼ぶ、パティシエールのフローラが来日。“ムッシュー・ビスキュイ”のパトリックにすべてを伝授しました。これからはパトリックの指導のもと、日本チームが同じノウハウを共有してパリ本店の味を再現していきます。
ビスキュイには大体このぐらい焼くというのが決まっているんですけれど、そこをもうひと押し、という焼き方をしたりもしています。もちろん違いはそれだけではありませんが。ビスキュイはシンプルであるからこそ、洗練さが求められるものです」
──フランスでは子供の頃からビスケットに親しみ、いわば国民食。日本ではこれまでビスケットに関する文化が特にはありません。どのように親しんでもらいたいですか？
「今回の専門店で、日本でもビスケットの文化が根付くようになるといいですね。それに価値観として、このビスキュイが与える喜びというのは、価格に勝っていると思いますよ。それを上回る喜びがあります。
洋服でたとえるなら、これは既製品ではない、オートクチュール。すべてにこだわって、特別感のあるあつらえ。でも価格はプレタポルテに抑えている、オートクチュール」
デュカスさんに今回、日本で展開する商品ラインナップでどれがお気に入りかを聞いてみたところ、「すべて美味しいと思いますよ。でも、基本は大切ですね」というご回答。もちろん、どれも美しく、美味。中でも気になる４つのラインナップをご紹介しましょう。
ピュール・ブール
デュカスさんの子供時代の記憶に残る、“おばあちゃんが作ってくれたバター風味のビスケット”を再現したもの。サクッとした歯ざわりのあと、ほどけるような口あたり。バターの香りが広がり、しっかりした塩味とのバランスが絶妙です。デュカスさんいわく「この厚さ、これが正解」。食感を楽しんで。
ちなみに、デュカスさんが生まれ育った南仏ランド地方の生家では牛を飼っていて、隣の工房で牛の乳をバターにしてもらっていたのだとか。出来立てのバターを使ったおばあさんのレシピ、さぞや美味だったことでしょうね。
バー・セレアル
カボチャやヒマワリの種、ヘンプシードなど8種の穀物類を使用した日本限定商品。ザクザクとした歯ごたえと、メープルシロップのコーティングがマッチ！ カナダ出身のマダム・ビスキュイのフローラさんのアイデアからメープルシロップが採用されたとか。バー・セレアルはフランスのお菓子ながら、どこか“おこし”を彷彿させる和なイメージも。
エグザ
ブランドのエンブレム的六角形をしたビスケット。トウモロコシ粉、そばの実、米粉など穀物の特徴を生かしたフレーバーが７種。なかでも気になるのが「サンポール」というフレーバー。実はデュカスさんの奥様の出身地ブルターニュ地方のサンポール・ド・レオンという地名からネーミング。ブルターニュの名産のそば粉ととうもろこし粉を使った、香ばしい一枚。
パレ
薄く焼きあげた2枚のビスケットで「ル・ショコラ・アラン・デュカス」自家製のガナッシュやプラリネ、マーマレードを挟み、風味豊かなショコラでコーティングした手の込んだもの。ショコラ専門店とビスケット専門店の、いわばコラボアイテム!? 一口でいろんな味わいが楽しめて、何重奏もの音楽のような、満足度の高さ。
ビスキュイ・ミニュット
これぞ、オートクチュールと呼びたい、ゲストの目の前で仕上げる料理仕立てのビスケット。プルーンのピューレとライムの果汁のソース、その上にキナコのペーストをのせ、その上にドライプルーンや炒り大豆。仕上げにライムのゼストを振りかけたもの。できたてのフレッシュさ、ビスケットの概念が変わります！ ごほうびに食べたい、特別なビスケット。
最後にデュカスさんに質問。次に何かの専門店をやるとしたら？
「パリですでにオープンしているオートクチュールのアイスクリームも上陸させたいですね。そしてこれは時間をかけて試行錯誤をしている段階ですけれど……、ハーブティー。抽出するタイプで、材料にキノコや海藻、もちろん植物やハーブなどを考えているところ。「海」の“ラ・メール”と「苦み」の“ランメ”を掛け合わせつつ、海のうま味成分も取り入れつつ……と。まだ、“メイビー”ですけどね」
とのこと。もう想像を超えたハーブティー、実現が楽しみですね！ 次回は、「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」パリ本店への試食の旅をご紹介します。
ル・ビスキュイ・アラン・デュカス 東京
住所／東京都中央区日本橋本町1-1-1
@lebiscuitalainducassejapan
https://lechocolat-alainducasse.jp/
