トニー・アウスラーの初期作から最新作までを公開@SCAI PIRAMIDE(東京・六本木)
テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているのかを探究するアーティスト、トニー・アウスラー。過去の貴重な作品から新作、また日本未公開の映像作品などで構成される展覧会「Transmission」が、東京・六本木のSCAI PIRAMIDEにて開催中だ。
メディアやテクノロジーが人々の心理に及ぼす影響を探究し、絵画、立体、ビデオ・インスタレーション、パフォーマンスなど多様な活動を通して示してきたトニー・アウスラー。マイク・ケリー、トニー・コンラッド、コンスタンス・ディヤング、キム・ゴードン、デビット・ボウイなどさまざまなアーティストとの協働も数多くあり多方面から注目を集めてきた。
なお近年は、リバーサイド・パーク・サウス(NY) 、カルティエ財団(パリ)、南京眼歩行橋(南京)等でサイトスペシフィックなパブリックアートも数多く展開し、今後も、スイス、ハーシュホーン・スカルプチャー・ガーデン、台湾での展示が控えているなど、国際的な活躍を続けている。
主に、デジタルアイデンティティ(個人に関する、電子化された属性情報の集合のこと)や多くの人々が疑わない既存の信念体系、不安や恐怖を引き起こす「不気味なもの(uncanny)」などをテーマに作品を作り続けるアウスラー。「映像イメージを箱型のテレビから解放した」アーティストの一人でもあり、映像プロジェクションを取り入れたリサーチベースのプロジェクトを展開してきた。
本展は、90年代の貴重な作品から本展のために制作した新作、日本未公開の映像作品を中心に構成。『Blue Mood』(1992)は、1990年代におけるアウスラー初期の実験世界へと誘う作品だ。スーツケースに収められた布製の人形に、その頭部だけが映像プロジェクションで映し出された本作は、人を驚かせ魔法のような体験を与える映像プロジェクションと、物理的な彫刻との稀有な結合と言えるだろう。
2010年に始まったマイクロプロジェクション・シリーズに連なる『Bigger Than Life』(2024)では、イメージや物語の断片を思わせる素材からなる多層的なレイヤーを取り入れ、不安から恍惚までデジタル時代における集合的無意識をあぶり出している。プライバシーを侵害するスマートフォンカメラの視点で、ソーシャルメディアの不気味で覗き見趣味のような体験を捉えており、アウスラー作品に繰り返し現れる主題を反芻した作品だ。
また近作となる「顔認識」シリーズも合わせて公開。アルゴリズムのパターンを利用して、デジタルメディアがアイデンティティ認識に与える影響を探索する作品だ。私たちの新しい人間の肖像が、画像だけでなく「統計や自動抽出したデータによって作られており、それが相互参照して私たちのすべての動きを予測するために使われている」とアウスラーは指摘する。
日本での発表は久しぶりの機会となる本展。ぜひお見逃しなく。
※掲載情報は10月11日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
トニー・アウスラー「Transmission」
日時/2024年10月4日(金)〜12月21日(土)
会場/SCAI PIRAMIDE
住所/東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3F
時間/12:00〜18:00
休廊/日、月、火、水曜、祝日
URL/www.scaithebathhouse.com/ja/exhibitions/2024/10/tony_oursler_transmission/
Text:Akane Naniwa