現代の寓話になる小川絵梨子演出『ピローマン』 | Numero TOKYO
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現代の寓話になる小川絵梨子演出『ピローマン』

新国立劇場演劇部門芸術監督の小川絵梨子演出『ピローマン』が、10月8日~新国立劇場の小劇場で上演される。

この作品は、『スリー・ビルボード』や『イニシェリン島の精霊』でアカデミー賞ノミネート、ゴールデングローブ賞を受賞したマーティン・マクドナーの戯曲を、小川絵梨子自身が翻訳したものだ。これまで日本国内でも、様々な演出家が上演を手掛けているが、いずれも翻訳は小川訳が使用されている。

舞台は、冷戦時代の東欧を思わせる全体主義的な架空の国。拷問も問題にならないような政治体制の中、警察署で行われるある兄弟に対する尋問が描かれていく。

作家である弟・カトゥリアンの書いた作品と同じような犯行が行われたことから、警察はカトゥリアンとその兄・ミハエルの犯行を疑う。しかし、その捜査過程では、兄弟に起きた凄惨な過去が明らかになっていく。

作家である弟が紡ぎだす童話は、ファンタジーでありながら悪夢のような内容。人によってはグロテスクにも感じる話に向き合ううち、観客はなぜその物語が生まれたのか、という問いにたどり着く。見て爽快!というタイプの芝居ではない。だが、観客はある居心地の悪さを感じながらも、帰りの電車の中や帰宅後も何度となくこの物語を脳の中で反芻してしまうだろう。

翻訳・演出を手掛ける小川絵梨子は、2013年にこの作品を演出しているが、今回はコロナ禍での気づきを得て、今回の上演ではコンセプトを一新するという。

出演者は舞台を中心に確実なキャリアを築いてきた成河がカトゥリアンを、新国立劇場の演劇作品にも数多く出演している木村了が兄のミハエルを演じる。木村は当初予定されていた亀田佳明の体調不良による降板に伴っての出演だが、複雑なミハエル役をどのように演じるのか楽しみだ。他の出演者たちも舞台経験豊かな顔ぶれになっている。

童話や寓話が、時代を超えて伝えられるのには理由がある。どの国や世代にも共通の感情や教訓、恐怖、人間の弱さや気づきを共有するという役割だ。そうした意味でこの作品も、この先長い時間、様々な伝え方で人々に共有される物語になるだろう。

舞台『 ピローマン』

作/マーティン・マクドナー
翻訳・演出/小川絵梨子
主催/新国立劇場
出演/成河 木村了 斉藤直樹 松田慎也 大滝寛 那須佐代子
会場/ 新国立劇場 小劇場
公演日程/ 2024年10月8日(火)~27日(日)
プレビュー公演/2024年10月3日(木)・4日(金)
料金(税込)/A席 7,700円 B席 3,300円 Z席(当日)1,650円
プレビュー公演:A席 5,500円 B席 2,200円 Z席(当日)1,650円
公演URL/https://www.nntt.jac.go.jp/play/the-pillowman/
チケット申し込み・お問い合わせ/
新国立劇場ボックスオフィス
電話:03‐5352-9999 (10:00~18:00)
URL:新国立劇場Webボックスオフィス https://nntt.pia.jp/
 *Z席1,650円 Z席(各日12席)は、公演当日朝10:00から、新国立劇場Webボックスオフィスおよびセブン-イレブンの端末操作により全席先着販売いたします。 先着販売後、残席がある場合は、公演当日朝11:00からボックスオフィス窓口でも販売いたします。※電話予約不可。
<トリガーアラート> 本作には、フラッシュバックに繋がる/ショックを受ける懸念のある場面・表現が含まれます。児童虐待、性的虐待、暴力、殺人、流血、銃声、差別的な表現

Text:Reiko Nakamura

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