ダンスが問う“共生”とは。クリスチャン・リゾー『D’après une histoire vraie－本当にあった話から』
彩の国さいたま芸術劇場がダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ＆アーペルフェスティバルの一環として、気鋭のフランス人振付家の作品を上演する。
その一つ目の公演が、2015 年より南仏モンペリエの国立振付センター ICI-CCN のディレクターを務めるクリスチャン・リゾーの作品『D’après une histoire vraie（ダプレ ユヌ イストワール ヴレ）─本当にあった話から』だ。
この作品は、クリスチャン・リゾーが、イスタンブールで観た民族舞踊にインスパイアされて生まれた演目だ。
ある時、リゾーの目の前に突如男たちの集団が現れ、ごく短い民族舞踊を踊ってすぐさま立ち去っていった。その一瞬の出来事に心を奪われたリゾーは、本作を通し、この男たちの集団にこれまでとは違う別の関係の在り方を提案している。
舞台上に登場するのは、8人のダンサーと2人のドラマー。総勢10人の男たちが「男らしさ」のくびきから逃れようとしながら、流れるような動きの変容を可能にする、という。
舞台上に据えられたドラムセットが激しいリズムを刻み、その音に押されるように、男たちは時には手を取り、また離れ、また違った方向から差し伸べられた手を取る。
連携と散開を繰り返す激しい動きからは目が離せなくなる。ダンサーとドラマーのエネルギーの流れに、いつしか観客の心も吞まれていく。
民族舞踊のように見えるが、どの国や地域に属するものでもない、という不思議な流動性を秘めたダンスだ。
衣裳の豪華さやセットの美麗さを楽しむダンスとは全く趣を異にする。だが、シンプルであるがゆえに、舞台上に置かれたドラムの響きとダンサーの関係性がダイレクトに客席に伝わり、心を揺さぶる。
ダンスを筆頭に多くの芸術は普遍的な問いを秘めている。この作品が初演された2013年はバラク・オバマ大統領の二期目が始まり、鳥インフルエンザの広がりが懸念され、ボストンマラソン爆弾テロ事件が起きている。日本と中国の間では尖閣諸島をめぐる問題が深刻さを増している時期だ。
そんな中で、“共生”をテーマに作られた作品は、時がたつにつれて、さらにそのテーマを深めているのではないだろうか。
手を取っては離れ、また手を取る。先ほど手を取っていた人間とは離れ、また別の人間の手を取る。そんなダンサーたちの動きをじっと眺める間、あなたの心の中には何が去来するだろうか。
舞台 クリスチャン・リゾー『D’après une histoire vraie（ダプレ ユヌ イストワール ヴレ）－本当にあった話から』
コンセプト・振付・舞台美術・衣裳デザイン／クリスチャン・リゾー
出演／ユネス・アブラクル、ファビアン・アルマキエヴィッチ、ヤウヤ・バヘリ、
マッシモ・フスコ、ペップ・ガヒニグ、ケレム・シュレ、
フィリプ・ロウレンソ、ホベルト・マルティネス
演奏（ドラム）／ ディディエ・アンバクト&キングQ4
音楽／ディディエ・アンバクト&キングQ4
照明／キャティ・オリーヴ
初演／2013年7月7日 アヴィニヨン・フェスティバル（フランス）
＜埼玉公演＞
公演日程／10月19日（土）19:00 、10月20日（日）15:00
(全2公演)
会場／ 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
URL／ https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/100846/
料金／一般 S 席 6,000 円 A 席 4,000 円 メンバーズ S 席 5,500 円 A 席 3,500 円
U-25* S 席 3,000 円 A 席 2,000 円
*公演時 25 歳以下対象。入場時要身分証提示。
＜チケット取り扱い・問い合わせ＞
Web／SAF オンラインチケットhttps://www.saf.or.jp/t/
電話／SAF チケットセンター 0570-064-939（劇場休館日を除く 10:00~18:00）
窓口／彩の国さいたま芸術劇場（休館日を除く 10:00~18:00）
埼玉会館（休館日を除く 10:00~18:00）
イープラス https://eplus.jp 、チケットぴあhttps://t.pia.jp
主催／彩の国さいたま芸術劇場（公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団）
ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
助成／文化庁文化芸術振興費補助金（劇場・音楽堂等機能強化推進事業（劇場・音楽堂等機能強化総合支援事業））|独立行政法人日本芸術文化振興会
後援／在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
＜京都公演＞
公演日程／10月12日（土）19:00、10月13日（日）19:00（全２公演）
会場／京都芸術劇場 春秋座
URL／ https://kyoto-ex.jp/shows/2024_christian-rizzo/
TEL／075-213-5839（平日11:00～19:00）
Text:Reiko Nakamura
