「土浦亀城邸」が復原、移築。ライトに学んだ建築家の木造モダニズム住宅が公開
東京・青山にオープンした「ポーラ青山ビルディング」の敷地内に、日本の初期モダニズム建築を代表する「土浦亀城邸」が復原、移築された。フランク・ライド・ロイドの元で学んだ建築家・土浦亀城(つちうら・かめき)による、約90年前に建てられた希少な木造モダニズム住宅。9月より予約制のガイドツアー形式で公開される。
「土浦亀城邸」は、建築家の土浦亀城・信子夫妻の自邸として、1935年(昭和10年)、東京・上大崎に建てられた。白い箱型の外観、ガラスを組み合わせた大きな面、そして工業材料のパネルを柱に貼り付ける「木造乾式工法」による、希少な木造モダニズム建築だ。
大きな窓、吹き抜けのあるリビング、機能的なシステムキッチンや水洗トイレも備えられている。そして仕切りのない中2階のフロア。
素敵な空間に思わず見入ってしまうが、これは昭和10年に建てられた住宅……畳敷き、台所にはかまどがあるような日本家屋がスタンダードだった時代に登場したもの。さらには「土浦亀城邸」の天井にはパネルヒーターも設置され、当時としては斬新な、快適に暮らすためのさまざまな試みがつまっている。
「土浦亀城邸」は移築だけではなく「復原」も行われた。建物の改装の痕跡や資料などを辿り、竣工時の姿に戻された。
たとえば「色彩」について、当時の記録写真がモノクロのため色彩は読み取れず、塗り替えされた内外装や建具の表面を薄くこすり出すことで、過去の塗装歴を読み取り、文献などと照らし合わせながら再現したという。
そして、家具やカーテン、カーペット、建具なども復原。キッチンに収納された食器など、さまざまな生活用品も、元の場所に置かれている。
直線的でシンプルで、あたたかみのある空間。階段の踏み板の端は丸みを帯び、家具や手すりにはパイプフレームが用いられている。そして玄関のベンチと組み合わされた造りつけのソファー。小さな家の各所に工夫があり、機能性と心地よさが感じられる。
戦渦や地震、災害、そして時間を超えて継承された、日本のモダニズム建築を代表する貴重な「土浦亀城邸」。それは土浦夫妻が長年暮らし、大切に残した「住宅」でもある。ぜひ訪れて、細部に残された暮らしの気配も感じ取ってほしい。
土浦亀城邸
場所/東京都港区南青山2-5-17 ポーラ青山ビルディング
一般公開/月に2日・水曜、土曜を予定。予約制で1日2回~3回のガイドツアーを実施。
※2024年10月~12月の一般公開予約は、当月1日の10:00に予約開始
定員/各回15名 観覧料/1,500円
URL/www.po-realestate.co.jp/business/aoyama-tsuchiurakameki.html
Text:Hiromi Mikuni