ひとり民主主義へようこそ。開発好明の大規模個展@東京都現代美術館
日常生活、社会現象など身近な出来事への関心から、コミュニケーションを生み出し、広げ、さまざまな表現活動を続けているアーティスト・開発好明(かいはつ・よしあき)。都内美術館では初となる大規模個展「開発好明 ART IS LIVE―ひとり民主主義へようこそ」が、東京都現代美術館にて開催。2024年8月3日(土)から11月10日(日)まで。
絵画、写真、パフォーマンス、インスタレーションをはじめ、日々のライフワーク、学校や地域でのワークショップ、さらには毎年3月9日をアートの記念日とする「39(サンキュー)アートの日」を発案、提唱するなど、幅広い表現活動を続ける開発好明。
自分や友達に書いた手紙が1年後に届く『未来郵便局』、「誰もが先生・誰もが生徒」を合言葉に100人の先生による授業が行われる『100人先生』。府中市の学校で始まったワークショップ「ドラゴンチェアー」では、こどもたちが製作した椅子を連ねてドラゴンを出現させた。
2011年には、作家仲間や友人たちとともに、トラックに作品をのせ、阪神淡路大震災で被災した西日本から、東日本大震災と福島第一原発事故の被災地まで、義援金を集めながら移動する展覧会「デイリリーアートサーカス」を開催。その後、『政治家の家』や、失われてゆく地域言葉を収集する『ことば図書館』など、福島でのプロジェクトを行っている。
個々の小さな声に向き合い、自分にできることを継続する開発好明。その多彩な活動は、美術館での収蔵や展示が前提とされていないものも多い。
本展では、ドイツの「ドクメンタ9」でのゲリラパフォーマンスなど、キャリア最初期の1900年代の貴重な資料をはじめ、作品やプロジェクトから約50点を紹介していく。
会場には『開発タウン』が登場し、1年後に手紙が届く『未来郵便局』をはじめ、お金を取引しない銀行、普通じゃない授業を受けられる教室、フェイクファーの公園も。また期間中の展示室では、開発好明が”何か”をしているという。(もちろん不在の時もあり) そのほかトークイベントやライブパフォーマンス、ワークショップなども多数開催される。
展覧会タイトルにある「ひとり民主主義」とは、かつて池田修さん(元BankART代表)から寄せられた言葉。みんなで一致団結する運動体としてではなく、たった一人の活動から、互いの反応を生み出し、連鎖反応を引き起こしていく「ひとり民主主義」だという。
本展は開発好明の30年以上の活動を俯瞰できる貴重な機会であり、3ヶ月にわたって開かれる活動の場に「ようこそ」と招かれている。ぜひ何度も訪れてみてほしい。
また、本展と同期間で「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」も開催されている。こちらは精神科医の高橋龍太郎による最大級の日本の現代美術のコレクション展。
1990年代半ばから現在に至るまで収集された作品群は、1995年開館の東京都現代美術館の活動期と重なり、さらにはバブル崩壊後の「失われた30年」とも重なっているという。東日本大震災以降に生まれた作品のコレクションにも注目したい。
3500点以上もの膨大なコレクションからの展示、日本の現代美術作品を通して、高橋龍太郎という一人の人間の「私観」も辿ってほしい。
開発好明 ART IS LIVE―ひとり民主主義へようこそ
会期/2024年8月3日(土)〜11月10日(日)
開館時間/10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
*8月9日、16日、23日、30日の金曜日は21:00まで開館
休館日/月曜日(8/12、9/16、9/23、10/14、11/4は開館)、8/13、9/17、9/24、10/15、11/5
会場/東京都現代美術館 企画展示室 3F
URL/www.mot-art-museum.jp/exhibitions/art-is-live
日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション
会期/2024年8月3日(土)〜11月10日(日)
開館時間/10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
8月9日、16日、23日、30日の金曜日は21:00まで開館
休館日/月曜日(8/12、9/16、9/23、10/14、11/4は開館)、8/13、9/17、9/24、10/15、11/5
会場/東京都現代美術館 企画展示室 1F B2F
URL/www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TRC
Text:HIromi Mikuni