ヨーゼフ・ボイスと日本人作家6名による対話を見せる展覧会 | Numero TOKYO
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ヨーゼフ・ボイスと日本人作家6名による対話を見せる展覧会

ヨーゼフ・ボイス『ヴィトリーヌ#1,2』
ヨーゼフ・ボイス『ヴィトリーヌ#1,2』

戦後ドイツ美術の第一人者、ヨーゼフ・ボイスの作品や活動を、現代日本の視点で検証する展覧会「ヨーゼフ・ボイスダイアローグ展」が、東京・神宮前のGYRE GALLERYにて開催される。

マルセル・デュシャン、アンディ・ウォーホールと並び、20世紀を代表するアーティストであるヨーゼフ・ボイス。亡くなる2年前の1984年に来日し、8日間の滞在中に、インスタレーションやアクション(パフォーマンス)、レクチャーや学生との討論会などの幅広い表現方法を通じて「拡張された芸術概念」を提唱したことでも知られている。ここでボイスの指す「芸術」とは、教育活動、政治活動、環境保護活動、宗教なども含めた拡張された意味での芸術活動と芸術作品であり、この「拡張された芸術概念」とともに展開したのが、「社会彫刻」という概念だ。提唱されたこれらの概念は、「すべての人間は芸術家である」というボイスの言葉に代表され、没後38年を過ぎた現在も、国際的な美術界において今なお影響力を与えている。

畠山直哉「ヨーゼフ・ボイス イン トウキョウ1984」#1 
畠山直哉「ヨーゼフ・ボイス イン トウキョウ1984」#1 

本展では、カスヤの森現代美術館の貴重な所蔵品の中から美術館が、ヴィトリーヌ(科学標本と聖遺物の展示ケースや民俗学的・自然史的遺物を収納するガラスケース)を任意に配置したヨーゼフ・ボイスの作品が公開。作家自身によるアクションなどで用いられた遺物を展示する装置として作品化したものである。なお、これらヴィトリーヌ・シリーズの作品は、アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館におけるガラスケースによって展示された遺品と反響するものでもあるという。
ドイツが背負うホロコーストの闇をどう贖い、傷をいかに癒すかに苦闘し続け、それを社会的問題として芸術活動によって投げかけてきたボイス。戦争が絶えない現代においても、強く問いかけてくることだろう。

ヨーゼフ・ボイス『ヴィトリーヌ#4-b』
ヨーゼフ・ボイス『ヴィトリーヌ#4-b』

ヨーゼフ・ボイス『ヴィトリーヌ#1』
ヨーゼフ・ボイス『ヴィトリーヌ#1』

また、ボイスの対話相手として、6名の日本人作家が出展。ボイスと深い交流のあったコンセプチュアルアーティストあり、「カスヤの森現代美術館」の設立者の若江漢字、また、自然・都市・写真の関わり合いに主眼をおいた一連の写真作品の制作と来日した当時のボイスのポートレートを撮影した畠山直哉、認識論に基づいて統合的な時間感覚を再考する磯谷博史、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現われるような絵画作品を制作している加茂昂、人間とは異なる視点やふるまいを持つ動物たちとの共作を通して、人と生き物の関係性を再考するAki Inomata、そして都市における「風景」の在り方や、それを取り巻く人々の意識の移ろいを表象する武田萌花が参加する。ボイスの現代性を問い掛け、現代におけるアポリアを浮かび上がらせる。
本展は9月24日(火)まで。ぜひお見逃しなく。

※掲載情報は7月16日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

「ヨーゼフ・ボイスダイアローグ展」
会期/2024年7月17日(水)〜9月24日(火)
会場/GYRE GALLERY
住所/東京都渋谷区神宮前5-10-1GYRE3F
時間/11:00〜20:00
企画/飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
展覧会出展作家/ヨーゼフ・ボイス、若江漢字、畠山直哉、磯谷博史、加茂昂、AKI INOMATA、武田萌花
URL/gyre-omotesando.com/artandgallery/josephbeuys-dialogue/

Text:Akane Naniwa

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