世界一のオペラ座“パレ・ガルニエ”にオマージュを捧げた「Chanel」2024-25年秋冬 オートクチュールコレクション
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世界一のオペラ座“パレ・ガルニエ”にオマージュを捧げた「Chanel」2024-25年秋冬 オートクチュールコレクション

シャネル(CHANEL)は、2024-25年秋冬 オートクチュールコレクションを、パリ国立オペラ座のガルニエ宮で開催。キーラ・ナイトレイ、ナオミ・キャンベル、ヴァネッサ・パラディら豪華セレブリティに加え、日本からは俳優の出口夏希が参加し、ランウェイショーを見守った。

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カール・ラガーフェルド亡き後、2019年から5年間に渡りアーティスティック・ディレクターとして指揮を執ったヴィルジニー・ヴィアール。彼女が退任を発表してから初めての開催となった本コレクションは、これまで老舗メゾンを下支えしてきたファッション クリエイション スタジオが手掛けることになった。

ショーの舞台となるパリ オペラ座は、2018にパリ オペラ座バレエ団の新シーズンのオープニングを、2023年からは、パリ国立オペラ座をサポートするなど、シャネルとは蜜月関係にある。また、メゾンの歴史を辿れば、バレエのムーブメントとシャネルのクリエイションは100年以上にわたって密接に結びついてきた。そのため、本コレクションでは、創設者であるガブリエル シャネルが衣装を手掛けた、ジャン・コクトー台本のバレエ『青列車』(1924年上演)や、『ミューズを率いるアポロ』(1928年上演)への敬意が端々に伺えるだけでなく、歌姫や王女のためのドレスや疑似観劇体験が享受できる舞台演出など、至るところに洗練されたシアトリカルなムードが通底している。

フランス人演出家のクリストフ・オノレによってデザインされたセットは、観客席を取り囲む回廊をモデルが歩いていくもの。回廊の一部には、赤いベルベットのボックス席を設えるなど、随所に気分を高揚させる工夫が凝らされていた。


開演を知らせるベルが鳴り、イギリスのプログレバンド、レア・バードによる『Sympathy』の物憂げなメロディーが会場を包む。物語の始まりを告げるドラステックなスポットライトが木製の扉を照らすと、ショーはスタートした。ファーストルックは、オフホワイトのボディスーツの上から、ブラックのタフタ素材のケープコートを羽織ったもの。首元にはかつて観劇時の正装だったオペラケープがあしらわれており、軽やかなテクスチャーが生み出す構築的なシルエットがクラシカルなムードを助長する。

ここから、シャネルのシグネチャーピースでもあるツイードジャケットを使ったルックが続く。首元や手元にファーをあしらったり、メランジのようなラフなニュアンスを添えたり、色とりどりのビジューを散りばめたりと、メゾンを象徴するマスターピースを様々なバリエーションで魅せた。スカートに施されたタッセルのようなアクセサリーや精緻なエンブロイダリーには、オートクチュールアトリエによる精度の高いサヴォアフェールが息衝いている。なかには、デコルテを大胆に見せたネックラインのジャケットもあったが、シルエットはあくまでクラシカル。普遍的でありながら色褪せることのないオーラを纏っている。かつて、ガブリエル シャネルがファッションを通して女性たちの自律を促し、それぞれの個性を拡張したように、タイムレスな銘品は自信に満ちた強い女性像を浮かび上がらせる。

撫で付けたようようにコンパクトにまとめたヘアと、コレクションを通じて多用されていた髪留めの大きなリボンもアイキャッチーなアクセントとして機能していた。リボンに関しては、ガブリエル・シャネル自身も愛用していたこともあり、前任のヴィルジニー・ヴィアール時代も含めてシャネルでは大切なモチーフの一つ。現在、Z世代を中心に「バレエコア」がトレンドを賑わしていることを考えれば、リボンもこれから大きな潮流を生み出すかもしれない。

今回のコレクションを彩るのは、オペラの世界観とオートクチュールの邂逅だ。たとえば、透け感のあるチュール生地で軽やかさを表現したチュチュやベルベットのリボン使い、鳥の羽で埋め尽くされたようなトップスにピエロの首元を飾るギャザーを寄せた立ち襟など、多方にオペラやバレエダンサーのエレメントが盛り込まれている。また、端正な黒のタキシードに刺繍が施されたプラストロン付きの白いブラウスを合わせたマスキュリンなルックは、“男装の麗人”を彷彿。ブラックやゴールド、シルバーを基調としたカラーパレット、夜空に降り注ぐ星のようなスパンコールで覆い尽くされたドレスからは、華麗なソワレ(バレエの夜公演)を思い起こさせる。

ショーの最後に登場したのは、シルクタフタを使った純白のドレスだ。ドーリーなパフスリーブと花を敷き詰めたような身頃、ボリュームを強調したペチコートスカートで構成されたウェディングドレスのような出立ちは、紛れもなく物語の主人公である。コツコツと階段を上がる靴音をスタッフが傍で収音マイクを使って場内に聞かせる演出は、創作劇のエンディングをメタ視点で再現したかのようなどこかユーモラスな趣と、神々しまでの美しさが共存した印象的なものであった。

このような視覚的な演出だけでなく、ステレオラブのボーカリスト、レティシエ・サディエールやゴールドフラップの楽曲、さらに冨田勲(!)のインストルメンタルを巧みに織り交ぜ、暗転や明転を使った場面の切り替わりを音楽で表現したサウンドトラックも素晴らしかったことにも触れておきたい。オペラの世界の表層的なムードを取り入れるのではなく、鑑賞者をそのまま物語の世界へと誘うようなまさに夢見心地のコレクションであった。

Chanel
シャネル カスタマーケア
TEL/0120-525-519
URL/www.chanel.com/

Text:Tetsuya Sato

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