「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が開催@東京国立博物館(東京・上野)
「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに作品をつくる美術家・内藤礼。個展「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が、東京国立博物館(東京・上野)にて開催される。歴史ある同館の建築や収蔵作品をもとにした作品が公開となる。
自然の諸要素と日常のささやかな事物を受け止めることで、日々見過ごしがちな世界の片隅に宿る情景、知覚しがたい密やかな現象を見つめ、「根源的な生の光景」を出現させてきた美術家・内藤礼。精緻に構想される作品の世界は、その場を訪れる人をそれぞれの沈潜に誘う。
150年の歴史を持つ東京国立博物館には、およそ12万件の収蔵品が収蔵。本展では、その中から内藤が縄文時代の土製品を選び、さらに同館の建築や歴史を独自の視点で読み解くことで、あらたな空間作品を制作した。
縄文時代の土製品から、自らの創造と重なる人間のこころを見出したという内藤。自然・命への畏れと祈りから生まれたものであるそれらから「生の内と外を貫く慈悲」を感じたという。
会場のひとつとなる本館特別5室では、「地上の生の光景」を希求する作家により、長年閉ざされていた大開口の鎧戸が開放され、カーペットと仮設壁が取り払われた展示室となる。建築当初の裸の空間として立ち現れ、その空間を自然光が満たす様は圧巻だ。訪れる日の天気や時間帯により刻々と変化する光の中で、内藤が見つめた空間と作品の間に、静かに、変容を繰り返しながら起こる人と自然、生と死、内と外の交感を楽しむことができる。
なお本展は、エルメス財団と共同で企画されたものである。2024年9月7日(土)〜2025年1月13日(月・祝)には、銀座メゾンエルメス フォーラム(東京・銀座)の空間へと続き、再び同館へと戻る予定だ。2会場にまたがる空間構成は、内藤が初めて見出した構想だという。重なり合いながらも隔たりをもつ二つの場をつなぐのは、連作の絵画と立体作品。それらが鑑賞者一人ひとりの予感や記憶となり、流れる時間にあらがうことのできない人生や、いつかは消えゆく展覧会という存在の儚さを想起させることだろう。
原始この地上で生きた人々と、現代を生きる私たちに通ずる精神世界、創造の力を感じる機会となりそうだ。本展は9月23日(月・休)まで。
※掲載情報は6月25日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」
会期/2024年6月25日(火)〜9月23日(月・休)
会場/東京国立博物館 平成館企画展示室、本館特別5室、本館1階ラウンジ
住所/東京都台東区上野公園13-9
時間/9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館/月曜日(ただし、7月15日、8月12日、9月16日・23日は開館)、7月16日(火)、8月13 日(火)、9月17日(火)
料金/一般1,500 円、大学生 1,000 円、高校生以下無料
URL/https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2637
Text:Akane Naniwa