マーク・マンダース、横山奈美らが出品「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」@金沢21世紀美術館 | Numero TOKYO
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マーク・マンダース、横山奈美らが出品「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」@金沢21世紀美術館

[参考画像]エンリケ・オリヴェイラ『Corupira』2023 ©Henrique Oliveira
[参考画像]エンリケ・オリヴェイラ『Corupira』2023 ©Henrique Oliveira

世界的に注目を集める人類学者、ティム・インゴルドの著作より着想されたグループ展「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」が、2024年6月22日(土)より、石川県にある金沢21世紀美術館にて開催中だ。

人間と動物、進化という概念、人間にとっての環境など、従来の文化人類学の枠組みを大きく越える思索を続け、哲学、社会学、生態心理学など多様な領域を横断しながら人類学研究を展開する、今日最も注目すべき思想家のひとりとして知られる英国の人類学者ティム・インゴルド。

本展は、はじめての邦訳となる『ラインズ 線の文化史』(左右社、2014年)からインスピレーションを得て構想され、世の中に存在する全てのものを「線」という視点から考察し、線が私たちの生活や人間関係をどのように形作っているか、作品を通じて考える場とするという。

出品作家の中から、本誌が注目する作家を一部紹介する。

「建物としての自画像」という構想に沿って、インスタレーション、彫刻、紙作品やドローイングなどの作品制作を行なってきたマーク・マンダース。作品は、架空の建物のメタファーであると見なし、正確な形や大きさが定まっていない別々の「部屋」に分けられ、時間的には始まりも終わりもないというコンセプトに基づき、粘土やブロンズ、木といった身近な素材を用いて、実際に使用した素材よりも脆弱に見える彫像を制作。未完成、あるいは壊れてしまったブロンズ製の人物像に、漠然と人々が持つ不安や見通しの暗さに重ねることもできる。

マーク・マンダース『4つの黄色い縦のコンポジション』2017-2019 金沢21世紀美術館蔵 ©Mark MANDERS photo: KIOKU Keizo
マーク・マンダース『4つの黄色い縦のコンポジション』2017-2019 金沢21世紀美術館蔵 ©Mark MANDERS photo: KIOKU Keizo

(参考)会期延長!「マーク・マンダース ーマーク・マンダースの不在」@東京都現代美術館 レビュー

実物のネオン管で言葉や消費されていくイメージを制作して、それを忠実に絵画に描く横山奈美は、はじめて自分以外の人々が書いた「I am」という文字をコラージュした『Shape of Your Words[In India 2023/ 8.1-8.19]』を公開。書き文字のドローイングをネオン管で立体化した後に平面に戻すというプロセスについて横山は「『私は』の言葉が表す『他の人の身体を忠実に描くこと』」と言う。手書きの「Lines(線)」は、言葉の意味以上に心と身体と外界を直接結びつけることができる。

横山奈美『Shape of Your Words [in India 2023/8.1-8.19]』2024 個人蔵 画像提供:ケンジタキギャラリー © Nami Yokoyama photo : ITO Tetuso
横山奈美『Shape of Your Words [in India 2023/8.1-8.19]』2024 個人蔵 画像提供:ケンジタキギャラリー © Nami Yokoyama photo : ITO Tetuso

(参考)南條史生による企画展シリーズ第4弾、横山奈美の個展開催@N&A Art SITE

またそのほか、エル・アナツイ、ティファニー・チュン、サム・フォールズ、ミルディンキナティ・ジュワンダ・サリー・ガボリ、マルグリット・ユモー、ガブリエラ・マンガーノ&シルヴァーナ・マンガーノ、大巻伸嗣、エンリケ・オリヴェイラ、オクサナ・パサイコ、ユージニア・ラスコプロス、SUPERFLEX、サラ・ジー、ジュディ・ワトソン、八木夕菜が参加する。

サム・フォールズ 『ペトリコール』2023 個人蔵 ©Sam Falls
サム・フォールズ 『ペトリコール』2023 個人蔵 ©Sam Falls

エル・アナツイ『パースペクティブス』2015 © El ANATSUI photo: KIOKU Keizo 金沢21世紀美術館蔵
エル・アナツイ『パースペクティブス』2015 © El ANATSUI photo: KIOKU Keizo 金沢21世紀美術館蔵

(参考)人間の存在を問う、ダイナミックなインスタレーション。大巻伸嗣 個展 @国立新美術館

なお本展は、金沢21世紀美術館が開館して20周年を迎えることを記念し、コレクション作品の中から様々な線を見出すことのできる作品をピックアップして展示。そのほか、日本、ベトナム、オーストラリア、ガーナ、フランス、オランダ、デンマーク、チェコ共和国、アメリカ、ブラジルの10ヵ国から多種多様な文化的背景を持つ16作家(グループを含む)による35作品も紹介される。ぜひお見逃しなく。

サラ・ジー『喪失の美学』 2004 金沢21世紀美術館蔵 © Sarah SZE
サラ・ジー『喪失の美学』 2004 金沢21世紀美術館蔵 © Sarah SZE

※掲載情報は6月22日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」
日時/2024年6月22日(土)~10月14日(月・祝)
会場/金沢21世紀美術館 展示室7~12、14、交流ゾーン
住所/金沢市広坂1-2-1
休館/月曜日(ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は開場)、7月16日、8月13日、9月17日、9月24日
時間/10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
料金/一般1,200円、大学生800円、小中高生400円、65歳以上の方1,000円
URL/www.kanazawa21.jp

Text:Akane Naniwa

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DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

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