多様な仕事を追う大規模個展「梅津庸一 クリスタルパレス」 | Numero TOKYO
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多様な仕事を追う大規模個展「梅津庸一 クリスタルパレス」

梅津庸一『集団意識』2021年 紙に水彩、インク、アクリル、油彩、エナメル みそにこみおでん蔵 画像提供:艸居
梅津庸一『集団意識』2021年 紙に水彩、インク、アクリル、油彩、エナメル みそにこみおでん蔵 画像提供:艸居

美術家・梅津庸一の仕事を総覧する大規模個展「梅津庸一 クリスタルパレス」が、大阪・中之島の国立国際美術館にて開催中。

明治期における洋画の歴史を参照して描く自画像や、奔放かつ繊細な抽象ドローイングを数多く手がける画家として、また近年では陶芸や版画の制作のほか、作品制作という枠組みを越え、私塾の開設や展覧会の企画、非営利ギャラリーの運営、批評テクストの執筆などさまざまに活動を展開してきた梅津庸一。

現在東京・神宮前のワタリウム美術館でも、(ほぼ)未公開の収蔵作品と、現在活躍中のゲスト作家たちの作品から構成し、展覧会をつくる「梅津庸一|エキシビション メーカー」展が開催中だ。

(参考)展覧会をつくる「梅津庸一|エキシビション メーカー」@ワタリウム美術館

かねてより梅津は、自分の多種多様な仕事ぶりを「花粉」になぞらえ、作品や言葉等が場所から場所へ、人から人へと移りゆくような思いがけない伝播のプロセスそのものを重視してきた。本展「クリスタルパレス」では、1851年にロンドン開催された万国博覧会の際、ジョセフ・パクストンが設計した水晶宮を念頭に、会場を花粉の培養地に仕立て上げたという。

梅津庸一『智・感・情・A』2012-14年 布、パネルに油彩 東京都現代美術館蔵 撮影:大谷一郎
梅津庸一『智・感・情・A』2012-14年 布、パネルに油彩 東京都現代美術館蔵 撮影:大谷一郎

展覧会は5章で構成。1章では日本の洋画の歴史を参照しながら手がけた裸の自画像によって「この国で美術家として生きること」の可能性を根本から問いなおそうとした試みを、2章では作品制作だけで身を立てることが難しい現実と向き合いながら、美術という領域において「私有地」を確保していこうとした取り組みを紹介。2013 年、神奈川県相模原市の自宅で立ち上げた私塾にして美術家集団、さらに画廊としての側面も持つ「パープルーム」を取り上げる。

梅津庸一『幻視』2021年 陶 艸居蔵 撮影:今村裕司 画像提供:艸居
梅津庸一『幻視』2021年 陶 艸居蔵 撮影:今村裕司 画像提供:艸居

梅津庸一『sleep in the sky』2022年 陶 作家蔵 撮影:今村裕司
梅津庸一『sleep in the sky』2022年 陶 作家蔵 撮影:今村裕司

3章ではコロナ禍に移住した滋賀県信楽での陶芸作品を中心に公開。かつて絵画において取り上げていた主題を陶芸へと転移させ、また陶芸を手がけるように絵画をつくる相乗効果に触れることができる。4章では、作陶を通して気付いた自らの制作を下支えしてくれる「インフラ」への意識を強めながら、版画という新たなジャンルに取り組む梅津の姿を紹介。最終章では過去と現在、産業と芸術、プロとアマ、「美学と政治」といった線引きを曖昧にし、あらゆるものをその身に引き受け、総合しようと企てる姿勢を見せる。

梅津庸一『勢力図』2023年 紙にエッチング、手彩色 個人蔵
梅津庸一『勢力図』2023年 紙にエッチング、手彩色 個人蔵

「この国で美術家として生きることはいかにして可能なのか?」という問いを起点に、「人がものをつくる」という行為の可能性を再考する大胆な試みとなる。会期は2024年10月6日(日)まで。

※掲載情報は6月5日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」
会期/2024年6月4日(火)〜10月6日(日)
会場/国立国際美術館
住所/大阪市北区中之島 4-2-55
開館時間/10:00〜17:00、金曜・土曜は20:00まで※入場は閉館の30 分前まで
休館日/月曜日(ただし、7月15日(月・祝)、8月12日(月・休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)は開館し、7月16日(火)、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)は休館)
料金/一般1,200 円、大学生700 円、高校生以下・18歳未満無料(要証明)・心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
URL/www.nmao.go.jp/

 

Text:Akane Naniwa

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