版画の可能性をひろげ、社会問題に迫る柳澤紀子の新作個展 | Numero TOKYO
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版画の可能性をひろげ、社会問題に迫る柳澤紀子の新作個展

原子力発電の影響によって命を脅かされる動物たちや、ロシアによるウクライナ侵攻など、緊迫する社会問題をテーマに版画をつくる柳澤紀子。東京・代官山のアートフロントギャラリーにて新作を含む個展「Words Spoken by Animals」が開催中。

柳澤紀子 『動物のことば-up right』2023年 ミクストメディア、日本画顔料、羊皮紙、特厚三椏紙 760x890mm Photo by Hiroshi Noguchi courtesy of Art Front Gallery
柳澤紀子 『動物のことば-up right』2023年 ミクストメディア、日本画顔料、羊皮紙、特厚三椏紙 760x890mm Photo by Hiroshi Noguchi courtesy of Art Front Gallery

モチーフとして翼、鳥、半人半獣、アンモナイトなどをイメージに合わせ、版画の可能性を追求してきた柳澤紀子。近年は東日本大震災により取り残されたフクシマの動物たちや、2015年のチェルノブイリ訪問を経て核実験に影響を受ける動物たちに思いを馳せるようになったという。

本展では、ウクライナの侵攻も勃発するなか、これらの問題をよりリアルに表現するため、羊皮紙、雁皮紙などの支持体を使い、また作品に直接着彩したドローイングなど新作を発表。版画ではビキニ環礁を示唆する『動物のことば 海の庭 i, II』、戦車を配置し、ロシア侵攻後のウクライナを抽象的に表現した『動物のことば 北緯 72°90°』シリーズなどを展示。長年のキャリアの中で、切迫する社会問題に対し、国内外の関係者と取材を続けてきた作家の現在地を展観する。

柳澤紀子 『動物のことば 北緯72°』2023年 エッチング、手染めガンピ刷り、アルシュ紙  575 x 870mm Courtesy of Art Front Gallery
柳澤紀子 『動物のことば 北緯72°』2023年 エッチング、手染めガンピ刷り、アルシュ紙  575 x 870mm Courtesy of Art Front Gallery

「現実と幻想、抽象と具象、さまざまな形象がひしめき合うこの世界は、しかし同時に、強固な構成への意志によって秩序づけられている。(中略)激しい表現への情熱としたたかな秩序への感覚、その両者を一貫して支えているのは、作者の強烈なエネルギーである」(高階秀爾、2017作品集より)。

断片化されたモチーフから成る作品の背後にある、作家の意欲を体感してみて。会期は2024年3月24日(日)まで。

※掲載情報は3月15日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

柳澤紀子:Words Spoken by Animals
会期/2024年3月1日(金)〜 3月24日(日)
会場/アートフロントギャラリー
住所/東京都渋谷区猿楽町 29-18 ヒルサイドテラス A 棟
時間/12:00〜19:00、土日及び3月20日(祝)11:00〜17:00
休館日/月・火曜
URL/www.artfrontgallery.com

Text:Akane Naniwa

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